死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第11章・恩赦

◆ 20・父の言葉(前) ◆

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 お父様が間に入ったパターン……。
 あれは何時の記憶だろう?


◆◇◆


 鶏の鳴き声と共に目を覚ます。
 もみがらに塗れた身体は、最初こそ痒くてたまらなかったが慣れている。

 この家畜小屋に隠れ住んで、1ヶ月になる。

 父はここで『時を待ちなさい』と言った。必ず良いようにしてやるから『じっとしてなさい』と。

 豚と同じ飼料を食い、同じ水を飲む。

 彼らは案外綺麗好きだった。餌と間違われて足を食いちぎられそうになった時は焦ったが、今はうまくやれている。

「……どうしてこんな事に」

 何度目ともしれない呟き。ここには英雄も王子助けに来ない。父の報せを待つだけの道しか残されていない。

「……誰か……っ」


 これは今までの私、人生への罰なの?


 数回の朝の後、父がやってきた。

「帰っておいで」


 かえる?


「でも……神官が、……を」

 言葉にならない私に、父は軽やかに笑った。

「言ったろう? お前は私の血を分けた子だ。何度でも救ってあげるって」

 それは嘘だ。
 私のこのループする運命からは助けられないし、今回だってたまたま間に合っただけだ。

「偽、聖女……だよ、私……。もぅ……このままココに、隠れて……隠れ続けて……生きてたぃ……」


 家畜と一緒で……、朦朧とした頭ででも、死にたくないって思う。この気持ち、可笑しいよね……でも死ぬのはもっと疲れるし、痛いから……だから……。


 父の顔を見る勇気もない。
 さぞかし呆れたろう。今度こそ見限ったかもしれない。

「逃げてみるかい?」

 驚き、顔を上げる。父はいつも通りの柔和な表情のままだ。

「逃げるのも相当な努力がいるけれど、やってみる価値はあるね。偽聖女がいるように、偽ヨーク嬢を用意する事も、私には容易い」
「いいの……? お父様にとっては、マイナスじゃないの?」

 父は驚いたように目を見開き、続いて大笑いした。


 何? そんな可笑しな事、言った?


「偽聖女の時点で充分マイナス。今更だねぇ」

 謝るべきかもと口を開く。

「お父様……」
「いや、いいよいいよ。父様、啓教会とはいい関係を築いてきたし、これからも手を取り合える範囲はとっていく予定だからね」
「私を逃がしたら、その予定も崩れるんじゃ……」


 それでも、逃げたいわけだけど……。


「愛する娘よ、良くお聞き? 挿げ替えられない人間なんていないんだよ」
「どういう……?」
「大丈夫。お前が好きなだけお逃げ。その間くらいは持たせてあげよう、痛みの恐怖よりも解放を望んだら、……また、やり直したらいいよ」

 やり直す――私のリスタートを分かっての発言ではないだろうが、それでも胸に沁みた。


◆◇◆


 あの時の、あのセリフは……もしかして、リスタートの事を言ってた?


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