死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第12章・秘密は舞台

◆ 16・一滴分 ◆

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「冗談、でしょ?」


 食べられた、嘘でしょ……? いや、ほんと……なに、これ……、冗談じゃないわ……っ、魔王が喰われるなんてっ、どうするのよ、これからっ!!!!
 それって自分でやり直し選ばないとなんじゃないの?! そういう状況なんじゃないの、コレって……。


「お、悪くねぇ」

 信じられない事を口にするルーファを振り返る。
 外見がカエルじゃなかえれば殴り倒している。

「おい……シャーロット・グレイス、どういう事だ……」

 後ろから先輩の圧を感じる。
 説明なんてできるわけない。人間が肉塊になり、一瞬で成長したのだ。


 弟は魔王なので、こんな事もありますって? 納得するわけないよね?


「イカはよぉ、海に消えたろ?」

 ルーファが話し出す。

「本来あーやーって喰った方がいいよなぁ。まぁどっちがどっちを喰おうが人間じゃねぇし、力としてはたかが知れてる。ジリ貧だが、ないよりはマシってトコだろうな」
「何の話?」
「結界、はってろ」

 先輩がモニークを肩から落とし、呪文を唱える。
 慌てて私もその後ろへと逃げ込もうと踏み出し、その場にガクリと膝をつく。


 何? 力が……。


「お……っと、急に動くんじゃねぇよ。お前は生命力を引き抜かれてんだ」
「生命力?」

 ルーファがパチリと指を鳴らす。
 私を中心に彼ごとシャボン玉のような膜が包み込む。

「魔王にくれてやったろ? 一滴分の生命力だよ。見たまんまの血を啜ってるわけじゃねぇ、おとぎ話の吸血鬼じゃないんだぜ? アレは」
 
 言い終わると同時に、カメの絶叫。

「ハッハッ! 本当に笑えるぜ、今回の魔王は」

 ルーファが何に可笑しさを覚えているのかに言及する余裕はない。
 なぜなら、カメが倒れ伏したのだ。砂塵を巻き起こし、轟音を立て、のたうち、転がり、家々を踏みつぶし、大小の砂礫が散る。
 人間の喧噪など蟻のざわめき程度のものだ。カメの鳴き声はこの世の終わりのように世界に轟いて感じる。

「何が起きてるのよっ」
「分かるだろ? 腹減り魔王がお食事してんだよ、中からな」

 想像すれば吐き気を催す奇怪なイメージ。
 ただのイメージでない事は、カメの口から吐き出された大量の泡と、それに混じった血、薄ピンクの肉片が語っている。

「チャーリー、よく躾けておけよ?」

 ハッとしてルーファを見る。

「その身体には『まだ』アーラがいるんだ」


 分かってる……、私はコレをコントロールしていかなきゃいけないのよね? 教団がフローレンスにしているように……。


 カエルの顔から眼を逸らし、崩れ落ちるカメをしっかりと目に焼き付ける。
 やがて、その腹を食い破ってエイベルが出てくるまで――。

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