死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第12章・秘密は舞台

◆ 19・生贄会議(前) ◆

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 ヨルク本邸は町から少しだけ離れた位置にあった。
 オアシスの町から西へと進んだ砂漠の中にあり、岩を組み上げて作られた屋敷は縦に大きい。ほぼ城だ。砂塵舞う敷地には緑が溢れ、水の音も聞こえる。
 いや水だけでなく、鳥や獣の鳴き声も中からしている。

「これが分家……。なんだろう、この拝金主義がチラ見えする館は……」

 趣味が良いと悪いのギリギリを攻められている気分になる。
 夕映えのおかげで微かに染まった頬を見られずに済む。


 親族のこういうのって、微妙な気恥ずかしさがあるわね。


「シャーロット・グレイス・ヨーク様ですね、ようこそおいでくださいました」

 門の前で立ち尽くす私たちを初老の紳士が出迎える。
 恐らくは執事だ。予定到着時刻から少しズレたものの、町の様相はこちらにも届いているらしく「大層お疲れでしょう」と気遣われた。
 にこやかですらある。
 邸内に招き入れられ、応接室へと誘導されれば、館は外から感じたままの様相――無駄な絢爛さを象徴する陶磁器に絵画が廊下を彩る。


 さて、……ルーファには帰って貰ったし、予定通りのメンツでの来訪。あれだけの騒ぎの中、こっちに移動してきたわけだし、荘園の領主としての立場からしたら、町の様子を聞いてくるはず。どこまで隠して話すか……。


 カエル体のルーファとは町で別れている。
 なにせ彼は現在カエル王子役をしているのだから、帰っていてもらわねば方々に障りが出る。モニークたちの目を掠めてのお見送りは骨が折れた。


 応接室の戸が開くと同時に、ハッと息を飲む。
 ソファーに男が座っていた。黒い巻き毛、黒い瞳、浅黒い肌の優男は、二十代前半。どこか私の父に似た面差しをしている。服はこちらでは一般的な刺繍の派手な長衣。ジャラジャラと耳にも首にも金属のアクセサリーを付けている。

「ようこそ、シャーロット!」

 駆け寄り、私の手を取る。
 手にガサリと堅くクシャリとしたものを握り込まされる。


 何だ? ……紙?


「と、お付の方々! 私は、カシム・クシュム・カミール・シャプール・スィナン・ティメル・アララ・カドリ・ヨルク、ヨルク家の長子です」


 長い……っ!!!!


「とても大変な経験をなさったとか。早馬が届いて以来、心配しておりました。私はシャーロットの親戚ですから、あなたがたの仲間にも等しいと思っております! ここから先はわたくしが必ずお守りいたしましょう!」

 態度こそ礼儀にのっとったものながら、勢いと圧はすごい。

「シャーロット……親戚同士、仲良くしましょうね」

 言う男の手は微かに震えている。


 なに? なんで?


「ああ! どうぞどうぞ、お疲れでしょう? 座ってください。すぐに軽食を運ばせます。よろしければ町の状況なども併せて伺いたいです」
「優しい、お言葉……ありがとうございます。身に沁みます」

 微笑む。
 もちろん相手の言う事など毛ほども信用していない。仮面を被ってやり過ごす気は満々だ。



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