死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第13章・悪役闘争

◆ 19・ヘクターとフローレンス(前) ◆

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 虚無だ。

 世界に救いなんてない。
 二度と目を開けたくないし、鳥の鳴き声も鐘の音も聞きたくない。
 世界をシャットダウンして、ひたすら目を閉じる。
 どうせ後少しすれば、ミランダが入ってくるのだ。


 もう嫌だ……、本当に嫌。
 一度越えられたからって何度も越えられるなんて幻想だ。
 痛いものは痛いし、辛いものは辛い。
 仮に越えられたって、地獄を越える事に変わりない。
 皆は平気でも私はムリ……。


「……ぁぁ、ホント嫌……」

 目覚めと同時に、またゼロに戻ったのだと気付いてしまった。
 今までで一番進んで、上手くやれた世界だったと思う。
 それが一瞬の気の緩みで失ったのだ。
 起こしたヘクターよりも、己の無能さに絶望する。


 気を抜いちゃダメだったのに……。
 ヘクターと約定があるから、なんて事で安心して、彼の脅威を忘れていた私が馬鹿なのよ。


 今更後悔しても遅いのに、後悔と自虐は終わらない。

「おはよう、お姉さん!」

 一瞬の思考停止――からの怒声。

「はぁぁぁ?!?!」

 飛び起きる。


 何でヘクターの声?!
 そこはミランダの声じゃないの?! いや、アイツ悪魔だわ! つまりループ外にいるわけで……いや、待って?!


 周囲を見回せば、狭い石室にヘクターとフローレンスがいる。
 私は石の台座に寝かされていたらしい。
 窓のない薄暗い部屋が、暗くないのはあちこちに灯された直置きロウソクのお陰だ。

「どういう……事?」

 てっきりヘクターに殺されたんだと思った。
 明らかにリスタートには程遠い場所だ。少しの安堵と不安が襲い来る。


 ゼロに戻らなかったのは良かったけど……これって、どういう状況?


 拉致された事は間違いないが、縛られてもいない。

「フッフッフ、混乱していますね!?」
「……えぇ、まぁ……」

 意地を張っても仕方ないので応じる。
 ヘクターは満足そうに何度も頷いた。

「実を言うと、我々も困っています!」
「はあ? ……何に?」
「お姉さんを生かすか殺すか、ですよ! いやぁ、まだ結論が出てないのに、起きるから。お姉さん……起きるの早い!」
「いや、ちょうど良かったわ!! 寝てる間に殺されるとこだったの?!」
「ハッハッハッ!」

 笑うヘクターに寒気がする。
 チラリとフローレンスを見れば彼女は黙したまま、目を閉じている。

「フロー……、私が本物の姉って分かったわよね??」

 今縋れるのはこの妹だけだ。

「そう、ですね……多分、お姉様、本人な気がします」


 いやいや、何でそんな不安そうに! 自信持てよ!! 本物の姉だわ!!!!


「でも、……やっぱり一度、殺します」


 え?


「待って? 意見が割れてって、まさか……っ」


 ヘクターが生存側なの?!
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