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第14章・灰は撒かれた
◆ 3・通訳が欲しい魔王(前) ◆
しおりを挟む「~~~~、~~~~……!」
誰かが、叫んでる。
なんか、よく聞こえない……。
眠い目をこすろうとして、手がうまく動かないことに気づいた。
やけに、鳥の鳴き声が耳につく。
粗末なベッド枠と、風にガタつく窓。その向こうには朝陽が見える。
何、ここ?!
バタバタと床を乱暴に駆け――3、2、1で、部屋に飛び込んできた誰かが、私を覗き込む。
女性だ。
三十代くらいだろうか、ずいぶん厳つい鎧を身に纏っているが、栗毛と青い瞳が美しい人だ。彼女は大きな声で何かを喚いている。口は動いているし、音も聞こえているけれど、いかんせん言葉が分からない。
「……ベル! ~~~~、~~~~、ベル、~~~~、~~~~」
なんなの??
どうなってるのよ! 私、何してたっけ?! えー……っと、そうそう、変な猟奇堕天使に頭に手を突っ込まれて……っ!?
身体を抱き上げられる。
そこで気付いた。
サイズ感の差だ。
自分の身体が異常に小さい、いやむしろ子供で、更に言うなら赤子サイズだ。だらんと下がった手足は相変わらず、思うようには動かない。
どうなってんのー!!!!
「ぅあ…ぅ……ぅぅ!!」
口から漏れた叫びも言葉にはならない。
やばいー!!!! 私、赤ちゃんじゃない?! 赤ちゃんよね?!
しかも貧乏家で!!!!
最悪だ……、私からヨーク家とったら、何も残らない……。
「ベルベル、~~~~、~~~~」
女性は何事かずっと話しかけている。優しい声に引き摺られるように、彼女を見つめた。
女性が嬉しそうに微笑む。
「~~~~、~~エイベル~~~~」
えいべる??
私、エイベルなの!? って事は、この人は……エイベルのお母さん? いや待って、魔王も聖女も親がいないんだっけ。って事はこの子を引き取った人って事で……。
〈そう、そういうコト〉
え!?
いつかのアーラのように、彼の声が聞こえる。
〈むしろ、あんたが『来訪者』で、オレが現地人って感じ。起きたし、チェンジで〉
いつもより滑らかに話すエイベル。
同時に、身体を押しのけられるように感覚が走る。
〈エイベル、この体……あんたの、なのね?〉
そう、オレの身体。これでちょっとはマシな会話ができるかな? 少しの時間だけど。
〈どういう事? ってか、あの堕天使、何してくれてんの!? 時間戻ってないよね!? 死んでリスタート系じゃないよねぇ?!〉
うん、違う。オレの記憶の時間にあんたが来訪者として間借りしてる感じ。
彼はちゃんと話せている。
だがいかんせん、彼の説明は言葉足らずすぎる。意味が分からない。
戸惑う私に彼が嘆息づく気配。
分かんないかな、オレは今現在、この世で使われてるあんた達の言葉が分かんないの。
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