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第14章・灰は撒かれた
◆ 2・壊れた記憶 ◆
しおりを挟む「ただいま」
ぐっすり眠っていた所を、揺さぶられて目を覚ます。
ぼんやりした暗い視界に、相手の姿が浮かび上がってくる。
「んん……? えいべる?」
ほぼ弟だ。
暗いので確定はできないが、だいたい多分きっと弟で魔王なエイベルだ――と、あたりをつけて飛び起きる。
「エイベル!!!!」
「ただいま」
再度、彼が言う。
「エイベル……っ、今までどこで何を言いつけられてたの! こっちは大変だったんだからっ。ってか、そこはもういいわ、いや良くないけど、だってあんたって私の護衛なのに、ちょっと任務放棄しすぎっていうか……」
ごちゃごちゃと文句が連なりそうで、慌てて口を閉ざす。
弟の帰還は純粋に嬉しい。彼の武力ほど心強い味方はいない。反面、フローレンスや堕天使との関わりから新たに色々と知ってしまっているのだ。
気まずさはある。
そう、よ……こいつ魔王だから、フローと同じで心が分かる……っていうか、色が見えるっていうか……。まずい、この今の気持ちも筒抜けなわけで、いや、更に言うならリスタート人生を覚えてるっていう……。
どうする?
面と向かって聞いていいのか?
もしも質問が失敗ネタだった場合、リスタートしても記憶がゼロにならないならずっと面倒を抱える事になる。
言葉に詰まったまま、砂埃に塗れた彼に手を伸ばし、砂を払い落とす。
どうするどうする??
「チャーリー、マオーとのさいかいね! おめでとう!」
堕天使フローラが拍手する。
すると、彼が視線を向ける。明らかに、フローラの方を見ている。私にしか見えないはずの宙に浮かんだ彼女にだ。
「えい、べ……」
「このムシ、なに? 消す?」
エイベルが問う。
魔王、やべぇ……っ!!!!
途端、フローラが笑う。
「ざんねんでした! いまのわたしは、おなかいっぱいだからあなたにはムリ」
彼女は私の隣に降り立ち、ベッドに着地する。
「〈 生物未満、精霊の紛いモノよ。貴様に一つの道しるべをくれてやろう 〉」
まただっ……、また声が……!
老婆のような声で、取り巻く雰囲気も一変させた堕天使が、エイベルに人差し指を突きつける。
「〈 聖女を捕獲し、埋めよ 〉」
「……ちょ、埋め????」
愕然とする。
どんな様子であろうが残酷な趣味は変わらないらしい。
「いやいや、埋めるはちょっと…サンtね。それに、そうよ、えーっと、フローは心が読めるってか、見えるっていうか……だし? そう簡単には」
「……そっか」
エイベルが漏らす。
「……しったんだ。色がみえるコトとか、キオクのコト」
一瞬でバレた……!? いや、これはコレで……。うまく言いくるめて、フローが教えてくれなかった成功ルートの色々を聞ければ勝機が!
「オネーサマ、言っとく。オレのキオク、コワれてる。いえない」
「え、覚えてないって意味?」
彼は首を振る。
「コトバかえられない……」
「つまり?」
「チャーリーが見てきたらいいの! マオーはダメな子だから、チャーリーががんばらないとーなんだよ!」
堕天使が元気に解説する。
「見てきてって……、まさか、あんたまで死ねって言うの?」
「ちがうちがう! マオーはそのためのモノを手に入れてきたみたい。つかおう!」
彼女はエイベルの胸に手をつき入れる。腕がスゥ―ッと胸に沈み込んでいる。悲鳴をあげるより一歩早く、彼女のもう片方の手が私の額に沈み込んだ。
「な……ん……っ」
「いってらっしゃい、チャーリー! セイカイがみつかるといいね」
それを最後に、意識も強制終了だ。
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