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第14章・灰は撒かれた
◆ 1・おなかはいっぱい ◆
しおりを挟む異国での生活も慣れた、三週間目の朝。
実家から遠く離れた砂漠の国では日々は、驚きに満ちている。カメのモンスターが守護神だったり、カメが死んだら町が終わる説、館の主は行方不明から干上がった川で溺死。
それに伴って、周囲に蔓延したと噂される疫病。町は引き続いての混乱中だ。
そして私の方でも、怪しい堕天使猟奇天使が現れ――私以外には、見えないという異常事態が続いている。
日課になっている朝の報告会では、カリムの死体発見話一色だ。
「さて、これからの流れとしては、ヨルク家の血縁者と話をつける事だ」
先輩が仕切る。
「カリム殿の不幸はすでに町に届いているし、すぐに親族がこの館にやってくるだろう。その時に我々は疑われる可能性が大だ。我々がカメを倒した事は知る者は知っているし、ヨルク家の親族ともなれば知っているだろう」
「そうよね。申し開きをする必要があるわ、それもアリバイ込みでね」
モニークの言葉に先輩もアレックスも頷く。
「誰が跡取りか、これも重要だ。カリムに聞くべき事の何も聞けていない以上、新ヨルク当主に聞くしかない」
「でも先輩、カリムって当主になって結構すぐよ? 跡取り問題が心配!」
聞いた限りでは、前当主が死んだのも最近の事だ。
遺書など用意していないだろうし、跡取りが定まっていないならばお家騒動になりかねない。
「他人様の家のお家騒動とか、勘弁してよ! 私は関わりたくないわ」
少々大仰に叫ぶ。
同時に斜め上から声が降る。
「ねーねー、チャーリー? どうしてみんなとおどろいてるの? その人が浮いてたのはみたし、知ってたでしょ?」
黙れ、猟奇天使……!
まだ私が第一発見者である事を皆は知らない。死の報告が伝わるより早く、見てきた事を誰にも言っていない。
最初はアレックスに話そうと思っていたが、この天使のささやきが邪魔をしたのだ。
「それは同意ね。お家騒動にまで関わる余裕ないですね」
モニークが同意してくれるも、やはり堕天使の声すら聞こえていないらしい。
「面倒なのは、カリム殺害を疑わることよりも町の立て直しだ。ヨルクの人間はおそらく……俺達が悪役だと知っている。血を使って、新たな守護神創造を……っと考えるのが自然な流れだろうな」
途端、堕天使フローラが笑いだす。
甲高い、子供らしい声だ。
「やーだぁ! こないこない! だって、みーんなココに、おさまったし」
彼女は己の腹を撫でる。
思わず立ち上がっていた。視線が集中し、慌てて言葉を探す。
うそ、ウソでしょ?! あの死体たちって、まさか……あの魂たちって、全部ヨルク家の、だったの?!
「そうだよ」
勝手に心を読み、返事をするフローラ。
拳を握りしめ、何とか動揺をやり過ごす。
「あ、アレックス! え……いベル、エイベルはいつ帰るかしら?!」
用事を言いつけられて出ている弟の帰還を問えば、彼は少し考え込む。
「そう、だね。明日には……多分」
「そう! それなら、あの子にしっかり護衛してもらいましょう!」
先輩は奇妙な物を見るような目で「そうだな」と呟いた。
何事もなかったように再度座し、目を閉じる。
つまり、魔王の城の場所を知る者が全員死んだって事よね?
これは……まずい……!!
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