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第14章・灰は撒かれた
◆ 28・一瞬の隙 ◆
しおりを挟む言葉を失うとはこの事だ。
聖女改め人ですらない所業――妹は斧をふるった。
もちろん、私は恥も外聞も投げ捨てて転げ避ける。
「……いやいやいや、根拠は?!?! こっちだって根拠見せないと死んでもやらないわ!!!!」
彼女は小首を傾げる。
「ずっと言ってます。わたしが違うと思うので」
「いやいやいや、あんた何様よ!! 聖女だからってそんな俺様理論が通ると思ってるの?? 誰も納得しないわ、それ!」
「でも違いますから」
「根拠は?!」
「根拠はわたしのフィーリングです」
ふぃ……っ!!!!
「そ、んな……不確かなもので、あんたは愛する姉を殺そうとしてるの?」
「はい」
不思議そうに頷く姿に、頬をはつり回したい気分になる。
もちろん、斧を持った相手にそんな無謀なチャレンジはしないが、いつか仕返しはしようと心に決める。
「では、改めまして」
彼女がまたも斧をふるい、私は走って避けた。
「姉様、ズルいですっ。逃げないでください」
言う間にも、斧が風を切りブンブンと音を立てている。
ことごとく避けて距離を取る。
一方エイベルの方も、ヘクターから間合いを取っている。
「姉様、あきらめて……大丈夫ですから、あなたは何度でも」
構える斧がキラキラと光る。
「やり直せますから」
まずい……。
絶対あれ、マズい……っ。
光が収束し、刃部分が発光している様は誰が見ても触ってはいけない雰囲気を漂わせている。
「ではまた、会いましょう……姉様」
彼女が斧を振り上げる。
彼女は聖女……、でも……っ、このまま殺されるのは絶対にイヤ!
「〈 スコターディ 〉」
覚悟を決めた私の前は、闇を纏う。
武器は現在拳のみ。
「姉様、わたしは姉様に苦しんでほしくないんです。姉様の武芸は所詮、令嬢の趣味程度です。無理をなさらず、覚悟をお決めになって?」
腹立たしい評ながら、事実だ。
唇をかみ、地面を見つめる。
弱くはないつもりだが、だからといって最強ともいえない。極められていたなら、とっくに武力で周囲を制圧して覇王にでもなっている。
「……うるさいわね、来なさいよ!」
妹はあの母に斧を授けられ、鍛えられてきた。
勝ち目は薄い。
それでも、希望はあると信じたい。
顔をあげた先に、何かが掠めた気がして目を見開く。
「……っ」
フローレンスの後ろに、アレックスが立っている。
敵と味方の関係を疑い混乱したのも一瞬で、妹が息を飲んだ瞬間に終わった。彼女も後ろに気づいたのだ。
振り向くフローレンスの喉にまっすぐ――吸い込まれるように白刃が埋まる。
「……え?」
その声は私だったのか、フローレンスのものだったのか。
アレックスはそのまま剣を引き抜き、流れるような動作で聖女の首を落とした。
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