338 / 375
第15章・共謀する聖人
◆ 15・再生する城(後) ◆
しおりを挟む
うすぼんやりした白い犬の顔に、二つの赤い光が宿る。
目だ。
血のように赤く光る目――犬は、四匹揃って天を向く。
高く轟く咆哮。
耳を塞ぐ間もなく、足元が揺れる。地震かと思ったのも一瞬で、私とアレックスの周囲の床が波打つ。
それは数分続いた。
人間不思議なもので、揺れて慌てたのも最初の数秒。己に被害は起きないらしいと理解すると同時に、成るに任せる心持ちに変わっていた。
私もアレックスも揺れが収束するのを黙って、ただ待った。
ピタリと止まった音と揺れに、緊張が途切れる。
瞬間、身体から力が抜ける。気を抜いたからではない。
「チャーリー!?」
尋常ではない脱力感から、倒れ伏し、指の一本すら動かせない。息すら億劫なほど、身体がままならない。
なに……これ……っ。
私を抱き起こしているアレックスの感触すらも感じられない。まるで高熱で寝込んだ時のように、自分がずっしりと重く感じられた。
かろうじて開いている口から、細く薄い息を吸う。
頭がクワンクワンと痛む。
目が回る。
目を開けていることすら億劫で、私は目を閉じた。
◆◇◆
「んー……?」
目覚めた時、私は一人だった。
穴の開いた天井からは夜空が見えている。
「どこ……?」
どうやら私は、長椅子に座っているようだった。
手触りは石、身を起こして周囲を見回せば古びた玉座が目に入る。私はその正面――一段下がった所に、座しているようだ。
「チャーリー、起きたんだね!」
後ろからアレックスの声がした。
億劫な身体を動かせば、椅子から転がり落ちる。身体が変だった。
「チャーリーっ、無理しちゃダメだ。君は……その、生命力を引き抜かれてるわけで……多少だけど。どちらにしろ、影響は大きいよ」
生命力を……、そうだった!
天井を見る。穴が空いている。周囲を見回せば、窓にガラスはないし、破れた布が風にはためいている。あんなものを断じてカーテンなどとは呼びたくない。
「どういうコトよ! 全然改装してないじゃない?! 責任者を出しなさいよ!」
私の生命力を使っておいて、この有様はひどすぎる。
「マスターのヨウボウをカナえたまで」
偉そうな声は犬のものだ。
アレックスの後ろから悠々と一匹が歩いてきている。完全な犬だというのに、二足歩行だ。しかも私の命を使ってか、もはやぼんやりとした光の結晶ではない。
白い毛並みに赤い目をした歴とした犬だ。
「マスター、ツギのメイレイを」
四足で尻を下ろす姿に、歯を噛み締める。
城を更に活性化させようと思ったら、私はまだまだ命を差し出さねばならない。だが少しの量でこれだけの脱力感だ。
「今の所はこのままでいいんじゃないかな? それよりチャーリ―が寝ている間に周囲を見てきたけど、ここが最上階みたいだよ。彼らも部外者であるボクにはあまり話をしてくれなかったから、本題の逃亡ルート探しに戻ろう」
頷き、私は足に力を入れて立つ。
座り込んでいる犬の横を通り過ぎれば、犬も後ろからついてきた。
目だ。
血のように赤く光る目――犬は、四匹揃って天を向く。
高く轟く咆哮。
耳を塞ぐ間もなく、足元が揺れる。地震かと思ったのも一瞬で、私とアレックスの周囲の床が波打つ。
それは数分続いた。
人間不思議なもので、揺れて慌てたのも最初の数秒。己に被害は起きないらしいと理解すると同時に、成るに任せる心持ちに変わっていた。
私もアレックスも揺れが収束するのを黙って、ただ待った。
ピタリと止まった音と揺れに、緊張が途切れる。
瞬間、身体から力が抜ける。気を抜いたからではない。
「チャーリー!?」
尋常ではない脱力感から、倒れ伏し、指の一本すら動かせない。息すら億劫なほど、身体がままならない。
なに……これ……っ。
私を抱き起こしているアレックスの感触すらも感じられない。まるで高熱で寝込んだ時のように、自分がずっしりと重く感じられた。
かろうじて開いている口から、細く薄い息を吸う。
頭がクワンクワンと痛む。
目が回る。
目を開けていることすら億劫で、私は目を閉じた。
◆◇◆
「んー……?」
目覚めた時、私は一人だった。
穴の開いた天井からは夜空が見えている。
「どこ……?」
どうやら私は、長椅子に座っているようだった。
手触りは石、身を起こして周囲を見回せば古びた玉座が目に入る。私はその正面――一段下がった所に、座しているようだ。
「チャーリー、起きたんだね!」
後ろからアレックスの声がした。
億劫な身体を動かせば、椅子から転がり落ちる。身体が変だった。
「チャーリーっ、無理しちゃダメだ。君は……その、生命力を引き抜かれてるわけで……多少だけど。どちらにしろ、影響は大きいよ」
生命力を……、そうだった!
天井を見る。穴が空いている。周囲を見回せば、窓にガラスはないし、破れた布が風にはためいている。あんなものを断じてカーテンなどとは呼びたくない。
「どういうコトよ! 全然改装してないじゃない?! 責任者を出しなさいよ!」
私の生命力を使っておいて、この有様はひどすぎる。
「マスターのヨウボウをカナえたまで」
偉そうな声は犬のものだ。
アレックスの後ろから悠々と一匹が歩いてきている。完全な犬だというのに、二足歩行だ。しかも私の命を使ってか、もはやぼんやりとした光の結晶ではない。
白い毛並みに赤い目をした歴とした犬だ。
「マスター、ツギのメイレイを」
四足で尻を下ろす姿に、歯を噛み締める。
城を更に活性化させようと思ったら、私はまだまだ命を差し出さねばならない。だが少しの量でこれだけの脱力感だ。
「今の所はこのままでいいんじゃないかな? それよりチャーリ―が寝ている間に周囲を見てきたけど、ここが最上階みたいだよ。彼らも部外者であるボクにはあまり話をしてくれなかったから、本題の逃亡ルート探しに戻ろう」
頷き、私は足に力を入れて立つ。
座り込んでいる犬の横を通り過ぎれば、犬も後ろからついてきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる