死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第15章・共謀する聖人

◆ 15・再生する城(後) ◆

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 うすぼんやりした白い犬の顔に、二つの赤い光が宿る。
 目だ。
 血のように赤く光る目――犬は、四匹揃って天を向く。
 高く轟く咆哮。
 耳を塞ぐ間もなく、足元が揺れる。地震かと思ったのも一瞬で、私とアレックスの周囲の床が波打つ。

 それは数分続いた。

 人間不思議なもので、揺れて慌てたのも最初の数秒。己に被害は起きないらしいと理解すると同時に、成るに任せる心持ちに変わっていた。
 私もアレックスも揺れが収束するのを黙って、ただ待った。

 ピタリと止まった音と揺れに、緊張が途切れる。
 瞬間、身体から力が抜ける。気を抜いたからではない。

「チャーリー!?」

 尋常ではない脱力感から、倒れ伏し、指の一本すら動かせない。息すら億劫なほど、身体がままならない。


 なに……これ……っ。


 私を抱き起こしているアレックスの感触すらも感じられない。まるで高熱で寝込んだ時のように、自分がずっしりと重く感じられた。
 かろうじて開いている口から、細く薄い息を吸う。
 頭がクワンクワンと痛む。
 目が回る。
 目を開けていることすら億劫で、私は目を閉じた。


◆◇◆


「んー……?」

 目覚めた時、私は一人だった。
 穴の開いた天井からは夜空が見えている。

「どこ……?」

 どうやら私は、長椅子に座っているようだった。
 手触りは石、身を起こして周囲を見回せば古びた玉座が目に入る。私はその正面――一段下がった所に、座しているようだ。

「チャーリー、起きたんだね!」

 後ろからアレックスの声がした。
 億劫な身体を動かせば、椅子から転がり落ちる。身体が変だった。

「チャーリーっ、無理しちゃダメだ。君は……その、生命力を引き抜かれてるわけで……多少だけど。どちらにしろ、影響は大きいよ」


 生命力を……、そうだった!


 天井を見る。穴が空いている。周囲を見回せば、窓にガラスはないし、破れた布が風にはためいている。あんなものを断じてカーテンなどとは呼びたくない。

「どういうコトよ! 全然改装してないじゃない?! 責任者を出しなさいよ!」

 私の生命力を使っておいて、この有様はひどすぎる。

「マスターのヨウボウをカナえたまで」

 偉そうな声は犬のものだ。
 アレックスの後ろから悠々と一匹が歩いてきている。完全な犬だというのに、二足歩行だ。しかも私の命を使ってか、もはやぼんやりとした光の結晶ではない。
 白い毛並みに赤い目をした歴とした犬だ。

「マスター、ツギのメイレイを」

 四足で尻を下ろす姿に、歯を噛み締める。
 城を更に活性化させようと思ったら、私はまだまだ命を差し出さねばならない。だが少しの量でこれだけの脱力感だ。

「今の所はこのままでいいんじゃないかな? それよりチャーリ―が寝ている間に周囲を見てきたけど、ここが最上階みたいだよ。彼らも部外者であるボクにはあまり話をしてくれなかったから、本題の逃亡ルート探しに戻ろう」

 頷き、私は足に力を入れて立つ。
 座り込んでいる犬の横を通り過ぎれば、犬も後ろからついてきた。


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