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第15章・共謀する聖人
◆ 27・死亡 ◆
しおりを挟むにじり寄るミランダから、目を逸らした一瞬。
それは瞬きにも満たない瞬間。
チクリと胸が痛む。
視線を下ろせば、黒い針が前から伸びていた。先を辿れば、アレックスの背に到達。
その針は彼ごと私を、刺し貫いていた。
うそ……っ
死ぬの……、私?
ここまで来た。
一段上とやらも経験し、魔王とも契約し、必要とされる城まで手に入れる――前なのだ。今までの人生が走馬灯となって浮かぶ。
あぁ……、どうしてよ……! どうして……。ここまで……来た、の……に……。
「ぅ……っ……っ」
涙が零れた。
悲しくてじゃない。悔しくて、だ。
「……だい」
前から声がした。顔を上げ視線を向ければ振り向いた彼の――ルーファの顔。
「……じょうぶ……、もんだ、い……ない、よっ」
ふわりとほほ笑む秀麗な顔に、カエルの顔が被った。
こんな状態で笑えるなど、正気とも思えない。それでも、彼の笑みはプリンス・オブ・コンクエストらしく完璧な笑みだ。
安心させ、信頼に足ると思わせてくれる。
たとえ、次々にパラパラと、まるでパズルのピースのように皮膚がはがれ、零れ落ちていようとも。幸いなのは、その剥がれ落ちた裏側も、残った方にも肉がなく、白い靄でしかないことだ。
あれっ、くす……。
外側が砂のように地面に散らばって、残った白い霧すらも、ひと風でかき消えた。
残ったのはミランダと私。
彼女は悠然と一歩踏み出し、私の真ん前に立つ。
「お嬢様、とても気分がいいです。あなたが次に起きた時、今回の記憶はないでしょう」
彼女は未だ散る破片を手に微笑む。
そこで気付いた。
破片は私の服の色だ。どうやら私も『同じ』状態らしい。だが、頭と感情が噛み合わない。アレックスが大丈夫だと言ったからか、私の心は先ほどよりも落ち着いていた。
「お嬢様、彼らが言うにはですね。どうやらあなたがココに到達したのは三回目らしいです。記憶を残すには魔王と聖女が同じ領域に達していなければならないようですよ?」
言外に『どうします?』と笑うメイド。
今、彼女に言うべきことは罵倒ではない。判明したことも多い。記憶を失っていたパターンも理解した。それならば、次にすべきことは協力者への――。
きおく、失うなら……。
「……し、え……て……」
かろうじて言葉になる。
正しく伝わったかは分からない。
教えてほしい。
次回こそ正しく選べるように、教えて欲しい。これが徒労で終わらぬように。
彼女は心底嬉しそうに私を見降ろしていたが、やがて手をつきだす。私の顔にめり込んだようなソレをグルグルと振り回し、一言。
「ご苦労様です」
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