死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

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第16章・リスタート

◆ 5・病死へのカウントダウン(中) ◆

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「ちなみに……何の病気?」

 ドキドキしながら問う。
 現状、私に持病はない。いや、今まではなかった。私の体調面で言っても、どこか悪い気配は全くない。

「流行り病だよ」
「はやりやまい……」
「聖女が一番に死ぬんだよね。そこから一気に新種の病気が広まっていく形だったよ」


 フロー……。


「聖女の死体から生まれた病気だって専門家は言ってたかな」
「つまり、フローが死ななければ私も死なない?」
「そうだね」
「っていうか、どうして聖女が一番に死ぬの?! フローは何で死んだの?!」

 彼は一口、紅茶を飲み立ち上がる。
 バルコニーへと続くガラス扉を開けて、外に出て行く。

「ちょっと……!」

 慌てて後を追う。
 彼は中庭を見下ろし、指さした。ちょうど噴水が目に入る。白い大きな噴水は豊かに水の飛沫をあげている。

「アレだよ」
「え?」


 まさか噴水で溺れ死ぬとか?


「あの水を飲んで死ぬんだ」
「水を? え? なんであんな水を飲むのよ?」

 意味が分からない。
 干ばつでもあるまいし、噴水の水を飲むなど正気とも思えない。私なら喉が渇いても、室内に入ってメイドに用意させる。

「聖女の死因は溺死じゃなくて、毒殺だね」
「毒?! まさか……わ、私が?」

 誰からも好かれるおとぎ話のプリンセス系妹だ。そんな妹を殺したいと思う人物は私くらいだろう。父は利害の関係から、母にとっては弟子のようなもので、立場から考えてみても私としか思えない。

「いや、キャメロン」
「キャメロン?! 第三王子の?! あいつに何の関係があるのよ!」
「彼は毎回殺しに来る。彼は僕らよりも経験をつんできているからね、おそらく行きついたんだよ。この世界線では正解に辿り着けないと」


 だからって、……強制的に終わらせようとしたっていうの?
 正解って何よ、何をもって正解とするのよ! 聖女と魔王が覚醒して、勇者と戦って、私が魔王に殺されて、魔王と勇者が最後の戦いをして、聖女が人間に殺されるって?
 そんな、クソみたいな未来が正解だっていうの??


「チャーリー、……チャーリーはどうしたい?」

 驚いてアレックスを見る。
 彼はこちらを見ず、噴水を見つめている。

「今日、キャメロンが来ることになってるよね?」
「……そうだわ……って!!!! まさか、それって」


 殺しにくるの?! フローをっ。


「ボクは……生きることに正解も不正解もないと思ってる。キミがこのまま進みたいというなら、今からすることは一つ。キャメロン対策だ」

 正解も不正解もないと言ってくれるのは彼が優しいからだ。
 本当は正解も不正解もある。それでも私の気持ちを汲んでくれようとしているのだろう。それでも正解は存在する。するのだ――。

「……生きたいわ」

 だが私の口からは、希望が漏れる。
 彼は頷く。

「それなら、キャメロンを止めよう」

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