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第16章・リスタート
◆ 17・見知らぬ人(中) ◆
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応接室に入り、座した私たちは無言で向かい合っている。
つい先ほどまで、耳心地良い言葉と声色で父と大神官――もとい、おっさん天使は話していた。内容はヨーク家からの寄付への礼や昨今の教会を取り巻く政情と多岐に渡る。
ってか、私がここにいる理由ある?
これ、お父様と二人で話せばいい話な気がするんですけど??
すでに話に飽きた私は右から左に聞き流している。下手をすれば眠気を誘いそうな音程の声を聴きながら、静かに卓に置かれた紅茶を一口二口と飲む。
「さて、多忙な大神官様がいらっしゃったのですから、特別なお話に写りましょうか。本題をお伺いしても?」
父の言葉に大神官はにこやかな表情を崩さないまま、なぜか私に視線を向ける。
「そうですね。ではご令嬢に、教会の意見を提示いたします」
そうして彼は懐から薄い封筒を取り出し、卓に置く。
宛名のない上質な封筒を見つめる父。
私も彼の言葉を振り返る。
私に提示??
「シャーロット・グレイス・ヨーク、あなたは勇者に選ばれました」
……ゆう?
たっぷりの無言時間を破ったのも大神官だ。
「生誕の宴があることは知っています。ですが、事は世界の平穏に関わります。一個人の誕生会を名目に先延ばしは……ね」
私とて、もう誕生会など求めてもいないから、夜会が潰れても問題はない。そのことをおっさん天使とて理解しているはずだ。
だが、よりによって『勇者』になれと教会から宣告されるとは――。
「ほう」
父が一言を漏らす。
そうだった、今この場で私の行動を決めるのは父だっ。
「それは聖女が降臨し、我が家の娘を伴侶と定めたということですね?」
「ええ」
「そして、その手紙は宣告書であると?」
「そうなりますね。ヨーク侯といえど、宣告書に疑問をさしはさむ余地はないかと思いますが?」
父はクスリと笑う。
「宣告書への疑問などありませんとも。私の質問は一つです。埋め合わせはどのようになされるので? 聖女の伴侶となった娘は現在の婚約を破棄しなければなりません。それによって我が家が被る財政的損失への補填ですよ」
おっさん天使はポカンと口を開ける。
「もちろん、第一王子との婚約は破棄します。宣告書があるのですからね。ですが、同時に我が家が被る政治的経済的損失は大きい。今まで教会は、この手の強硬手段に出る折には家族への保障を行ってきましたね? まさか我が家だけ対象外とはなりませんでしょう?」
「……常識的な範囲で補填いたしますよ」
「常識的な、では困ります。被る全てを補填していただかなくては、娘の売り先を将来有望な王子から教会にしようというのですから、利はみせていただかねばね。この封筒の中には」
封筒を手に取り、父が笑む。
「売買額が明記された領収証書がふさわしい」
お父様……絶好調ね。
「……相変わらずだなぁ、オマエは」
おっさん天使がポツリと呟いた。そうして、バサリと――羽音がした。
つい先ほどまで、耳心地良い言葉と声色で父と大神官――もとい、おっさん天使は話していた。内容はヨーク家からの寄付への礼や昨今の教会を取り巻く政情と多岐に渡る。
ってか、私がここにいる理由ある?
これ、お父様と二人で話せばいい話な気がするんですけど??
すでに話に飽きた私は右から左に聞き流している。下手をすれば眠気を誘いそうな音程の声を聴きながら、静かに卓に置かれた紅茶を一口二口と飲む。
「さて、多忙な大神官様がいらっしゃったのですから、特別なお話に写りましょうか。本題をお伺いしても?」
父の言葉に大神官はにこやかな表情を崩さないまま、なぜか私に視線を向ける。
「そうですね。ではご令嬢に、教会の意見を提示いたします」
そうして彼は懐から薄い封筒を取り出し、卓に置く。
宛名のない上質な封筒を見つめる父。
私も彼の言葉を振り返る。
私に提示??
「シャーロット・グレイス・ヨーク、あなたは勇者に選ばれました」
……ゆう?
たっぷりの無言時間を破ったのも大神官だ。
「生誕の宴があることは知っています。ですが、事は世界の平穏に関わります。一個人の誕生会を名目に先延ばしは……ね」
私とて、もう誕生会など求めてもいないから、夜会が潰れても問題はない。そのことをおっさん天使とて理解しているはずだ。
だが、よりによって『勇者』になれと教会から宣告されるとは――。
「ほう」
父が一言を漏らす。
そうだった、今この場で私の行動を決めるのは父だっ。
「それは聖女が降臨し、我が家の娘を伴侶と定めたということですね?」
「ええ」
「そして、その手紙は宣告書であると?」
「そうなりますね。ヨーク侯といえど、宣告書に疑問をさしはさむ余地はないかと思いますが?」
父はクスリと笑う。
「宣告書への疑問などありませんとも。私の質問は一つです。埋め合わせはどのようになされるので? 聖女の伴侶となった娘は現在の婚約を破棄しなければなりません。それによって我が家が被る財政的損失への補填ですよ」
おっさん天使はポカンと口を開ける。
「もちろん、第一王子との婚約は破棄します。宣告書があるのですからね。ですが、同時に我が家が被る政治的経済的損失は大きい。今まで教会は、この手の強硬手段に出る折には家族への保障を行ってきましたね? まさか我が家だけ対象外とはなりませんでしょう?」
「……常識的な範囲で補填いたしますよ」
「常識的な、では困ります。被る全てを補填していただかなくては、娘の売り先を将来有望な王子から教会にしようというのですから、利はみせていただかねばね。この封筒の中には」
封筒を手に取り、父が笑む。
「売買額が明記された領収証書がふさわしい」
お父様……絶好調ね。
「……相変わらずだなぁ、オマエは」
おっさん天使がポツリと呟いた。そうして、バサリと――羽音がした。
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