370 / 375
第16章・リスタート
◆ 16・見知らぬ人(前) ◆
しおりを挟む
「どうなさいました? ヨーク嬢」
大神官が私に声をかけた。
ここは屋敷のエントランスだ。今しがた、大神官を迎え入れ、私も参列者となっていた。
父と大神官は挨拶をかわし、次は本日のメインである私が挨拶をすべき所だ――が、言葉も出ない。
どういうコト……?
大神官の顔だ。
顔が問題だ。
一般的よりも豪華な白と金の礼装姿で大神官は立つ。大きな紋章付きの杖を手に、私を見ているその目、その顔が問題なのだ。
言葉を失い、ただただ彼を見つめる。
おっさん天使……、完全にマルッと服着てるおっさん天使じゃないの!!!!
ほりの深い顔立ちだ。ウェーブをかいた金髪に青い瞳、髭にがっしりした体躯、彼はは不思議そうに私を見ている。
おっさん天使のような底意地の悪さや、性格の悪さは全く見えない。本当に心配しているようにさえ思える。
今までの世界線で神官たちの顔はほぼ記憶している。それでも、この顔の大神官など見たことがない。
「娘1、どうしたの?」
父の声に我を取り戻す。
天使疑惑のある父と、天使の顔を持つ大神官。
「……大神官様が、私の誕生日を祝いにきてくださったと思うと……感動して、言葉を失いました」
「ヨーク嬢……。こちらこそ、そのように思っていただけることが何よりの喜びです。ですが、大変恐縮ですが……良い話ばかりではないのです」
それは納得だ。
いかに我が家が国でも有数の大貴族であろうと、娘の誕生日に大神官が来るはずもない。
「どのようなお話でしょうか?」
「それは……」
大神官は周囲のメイドたちを気にしているようだ。父は肩を竦める。
「娘1が聞きたがっているし、どうぞ」
「……第一王子と第二王子の件です」
囁くような声に、私は父を見る。
「承知しました。娘1、奥で話を聞こうじゃないか」
「……はぁ」
アレックスが教団に嫌われていることは有名だ、大方婚約破棄系の話ではと想像もつく。だが、第二王子の話まで私にする理由が分からない。
そもそもヨーク家と第二王子は関係が薄いのよね。
人払いをし、三人で応接室に向かう。
私は前を歩く大神官の背を見つめた。
本当に、おっさん天使じゃないの? 似すぎてるんだけど……。
ジッと見ている視線に気づいたのか、大神官が振り返る。
彼は速度を落として私と並んだ。マナー的には褒められたものではないが、父は先行しているし互いの行動を見とがめる人物もいない。
「おいおい、そんなに見るなよ」
低く呟かれた言葉に、足が止まる。
彼も立ち止まる。
「ほら歩け、オマエにしか『そう』見えてないんだ。歩け」
こいつ……おっさん天使だ!
叫び出しそうな喉は、何かに塞がれでもしたように声が出ない。
彼は歩く。
同時に、自分の意思に反して私の身体も歩き始めた。
大神官が私に声をかけた。
ここは屋敷のエントランスだ。今しがた、大神官を迎え入れ、私も参列者となっていた。
父と大神官は挨拶をかわし、次は本日のメインである私が挨拶をすべき所だ――が、言葉も出ない。
どういうコト……?
大神官の顔だ。
顔が問題だ。
一般的よりも豪華な白と金の礼装姿で大神官は立つ。大きな紋章付きの杖を手に、私を見ているその目、その顔が問題なのだ。
言葉を失い、ただただ彼を見つめる。
おっさん天使……、完全にマルッと服着てるおっさん天使じゃないの!!!!
ほりの深い顔立ちだ。ウェーブをかいた金髪に青い瞳、髭にがっしりした体躯、彼はは不思議そうに私を見ている。
おっさん天使のような底意地の悪さや、性格の悪さは全く見えない。本当に心配しているようにさえ思える。
今までの世界線で神官たちの顔はほぼ記憶している。それでも、この顔の大神官など見たことがない。
「娘1、どうしたの?」
父の声に我を取り戻す。
天使疑惑のある父と、天使の顔を持つ大神官。
「……大神官様が、私の誕生日を祝いにきてくださったと思うと……感動して、言葉を失いました」
「ヨーク嬢……。こちらこそ、そのように思っていただけることが何よりの喜びです。ですが、大変恐縮ですが……良い話ばかりではないのです」
それは納得だ。
いかに我が家が国でも有数の大貴族であろうと、娘の誕生日に大神官が来るはずもない。
「どのようなお話でしょうか?」
「それは……」
大神官は周囲のメイドたちを気にしているようだ。父は肩を竦める。
「娘1が聞きたがっているし、どうぞ」
「……第一王子と第二王子の件です」
囁くような声に、私は父を見る。
「承知しました。娘1、奥で話を聞こうじゃないか」
「……はぁ」
アレックスが教団に嫌われていることは有名だ、大方婚約破棄系の話ではと想像もつく。だが、第二王子の話まで私にする理由が分からない。
そもそもヨーク家と第二王子は関係が薄いのよね。
人払いをし、三人で応接室に向かう。
私は前を歩く大神官の背を見つめた。
本当に、おっさん天使じゃないの? 似すぎてるんだけど……。
ジッと見ている視線に気づいたのか、大神官が振り返る。
彼は速度を落として私と並んだ。マナー的には褒められたものではないが、父は先行しているし互いの行動を見とがめる人物もいない。
「おいおい、そんなに見るなよ」
低く呟かれた言葉に、足が止まる。
彼も立ち止まる。
「ほら歩け、オマエにしか『そう』見えてないんだ。歩け」
こいつ……おっさん天使だ!
叫び出しそうな喉は、何かに塞がれでもしたように声が出ない。
彼は歩く。
同時に、自分の意思に反して私の身体も歩き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる