NO STRESS 24時間耐えられる男の転生譚 ~ストレスから解放された俺は常人には扱えない反属性魔法を極めて無双する~

天宮暁

文字の大きさ
3 / 80
第二章 6歳

2 【無荷無覚】

しおりを挟む
 というわけで、俺はいちばん使えない加護である光闇サンヌルを授かって産まれた出来損ないなのだった。

 6歳までのあいだに、両親が俺に魔法を使わせようとしたこともある。
 この世界では、なるべく早いうちから子どもに魔法を覚えさせようとするからな。貴族ともなればなおさらだ。

 当時4歳だった俺は、両親の圧倒的な不安と一抹の期待を受けながら、初めて魔法を使おうとした。

 結果、相克でぶっ倒れ、まる一晩寝こんだらしい。

 それ以来、優しい両親は、俺に魔法を使えとは言ってこない。

 その分、両親は教育に熱を入れることにしたらしい。

 もともと、両親ともに優れた魔術師で、屋敷にはかなりの蔵書もある。
 優れた魔術師は宮仕えをすることが多いので、基礎教養は重要なのだ。

 父・エリオスは、代々続くブランタージュ伯爵家の若き当主。
 母・ミスラは、下級貴族の出自だが、劇的な大恋愛の果てにブランタージュ伯爵家に嫁いできたらしい。
 貴族の中には複数の妻を抱えるものもいるが、エリオスはミスラ以外に嫁は取らないと公言してる。

 ……公言してるのは、イケメンだからそう言っておかないと女のほうから言い寄って来られるからだけどな。
 もし女の身分がミスラの実家より上だったりしたら、かなり面倒なことになるらしい。

 そのおかげで、両親は王都の社交界と関係が薄く、王都から離れたここ――ブランタージュ伯爵領で平和な暮らしを送ってる。

「このまま行くと、俺が次のブランタージュ伯に収まるんだろうな」

 そうなった時に、サンヌルであることは不利に働く。
 それを補ってあまりあるだけの教養を身につけてほしいというのが、中央の汚さをよく知る両親揃っての願いなのだ。

「さいわい、俺は根気の強い子どもで、読書も好きだし、剣や弓の練習にも熱心だ。自分で言うのもなんだけど、同世代の子どもと比べたらちょっとしたものらしい。
 社交的ってほどじゃないが、大人の話はじっとして聞くし、同世代の子どもと遊ぶ時も、問題らしい問題を起こさない。手のかからない子どもだって評判だ」

 前世では、とくに読書好きだったわけではないし、運動はむしろ苦手だった。

 人付き合いも大の苦手だ。
 コミュ力がないせいで、パワハラ上司の横暴に逆らうことができず、そこから逃げ出すことすらできなかった。

 そういう、平凡で不器用な人間だったはずだ。

「……そう考えると、おかしいんだよな。
 6歳になる前から本を読むのが苦じゃなかったり、日が沈むまで剣や弓のトレーニングをしたりしてさ。
 大人の退屈な話にあいづちを打って、同年代の子どもが泣き出したら冷静にあやす。
 根気ありすぎだし、人間ができすぎじゃね?」

 根気、というのは違うな。
 俺の人間ができてるわけでもない。

「べつに、苦しいのを我慢して頑張ってるわけじゃないんだよな」

 前世のブラック企業勤めでは、苦しくても歯を食いしばって我慢していた。
 ブラック企業に取り込まれた人に特有の、外に出たら食っていけなくなるって不安に押しつぶされてたからな。

「いまは、そういう感じじゃないんだよな。
 かといって、勉強や運動がすごく好きになったって感じでもない。
 親に言われたからやってるだけだ。
 でも、そこに葛藤や反発がないから、ストレスなく続けられてる感じだな」

 ストレス、という言葉を口にして、俺の脳裏に閃光が走った。


 ――それなら、ストレスを感じずに済むようにしてあげる。


 穏やかな女性の声。
 転生する時に聞いた、「神」の声だ。

「……まさか、ストレスを感じないようになってるってことか?」

 子どもだから、時に親から叱られることもあった。

 そういう時でも、いまの俺エリアックは平然と親の説教を聞いている。
 怒られて怖いだとか、説教が長くて苦痛だとか、叱られる子どもが感じるはずのストレスを感じてない。

 感情の起伏が穏やかで、いつもおとなしくて素直な子ども。

 周囲からはそんなふうに思われてる。

「ストレスを感じない……? もうすこし詳しいことがわからないか!?
 ううっ!?」

 頭にずきりと痛みが走る。


 ――この世界は制限も多いから、大した力はあげられないけれど。


 光の中で、女神が言った。


 ――あげるのは、ごくシンプルな力よ。最初から努力なしで強くなれるような力じゃないわ。


 ――ただ、あなたの苦痛を取り去ってあげるだけ。前世であれだけ苦しんだんだもの。次の人生くらい、同じ苦しみを味合わなくてもいいと思うわ。


 ――そうね。【無荷無覚むかむかく】、とでも呼びましょうか。


 ――「人生とは、重き荷を背負いて遠き道を行くがごとし」。誰の言葉だったかしらね?


 ――でも、そこまで気負わなくてもいいと思わない? 鼻歌交じりにスキップしながら歩む人生があったっていいわ。


 ――そこまでイージーモードにはしてあげられないんだけど、ね。【無荷無覚】は、あなたの心の重荷を取り去ってくれる力よ。


 ――どんなストレスを受けても、あなたはそれをストレスとは感じなくなる。ストレスに起因する身体の反応もなくなるわ。


 ――チートか、ですって? うーん、そこまでのものなのかしら? たとえば、あなたのいた世界でも、もう半世紀もしないうちに、純粋な科学技術で同じことができるようになると思うわ。それを、ちょっと先取りしてあげるだけ。


「【無荷無覚】……」

 ストレスを完全に受け流す力、か。

 いまだ顔の思いだせない女神が言うように、脳科学や医療が進歩すれば、地球人類にも手が届く範囲の力なのかもしれなかった。
 近い未来には、抗うつ剤みたいな感じで、抗ストレス剤だとか、ストレス緩和剤だとか、そんなようなものができてもおかしくはない。

 そんなものがあれば、俺も過労自殺なんてせずに済んだのかもな。

 逆に、ブラック企業が社員にストレス緩和剤を飲ませてコキ使う……なんてディストピアもありうるか。

「たいした力じゃない、ね。十分役に立つと思うけどな」

 実際、これのおかげで、勉強も運動もはかどってる。
 他人とのコミュニケーションも、ストレスを感じないおかげか、前世ほど苦痛に感じない。もっとも、それは自分がまだ六歳児だからかもしれないが。

 そこで、俺はようやく気づく。


「この力があれば、光闇サンヌルの相克も克服できるんじゃ……?」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...