NO STRESS 24時間耐えられる男の転生譚 ~ストレスから解放された俺は常人には扱えない反属性魔法を極めて無双する~

天宮暁

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第三章 9歳

11 いにしえの帝国

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「――くっ! 殺せ!」

 赤毛の皇女騎士がそう言った。

「いいやっほぉぉっ!」

 俺はおもわず、自分の影とハイタッチをかわす。

「な、何を喜んでいる!?」

「いやぁ、つい……」

「さては貴様、女をいたぶるのが趣味の変態か? まだ子どもだというのに世も末だな」

「いきなり軍隊率いて攻め込んできた人に言われたくないんだけど」

「ふんっ、好きにしろ。どうせすぐに部下たちが駆け付けてくるはずだ」

「お姉さん、本当にそう思うの? だとしたら、三徹で相当頭がイってるね。こんだけ騒いだのに誰も様子に見にこないなんて、あきらかにおかしいでしょ」

「な、何……っ? だが、たしかに……」

「この部屋の周囲には……ええと、説明が難しいけど、人除けの結界のようなものを張ってある。音や振動は漏れてるんだけど、それに気づいてもおかしいとは思えなくなる、そんな結界をね」

 近づく者の脳内に「闇」を生み、認識能力を選択的に阻害する。
 そんな術をかけてある。

「というわけで、尋問の時間だ。俺はべつに変態じゃないから、素直に話してくれるならそれでいいんだけど……」

 そう言いながらネルズィエンに近づくと、

「ペッ!」

「うわっ、汚いな!」

 吐きかけられた唾を、影の触手でとっさに防ぐ。

「お断りだ。貴様になど、私は死んでも口を割らん」

「そう言うと思ったよ」

 俺はパチンと指を鳴らす。
 影の触手がうごめいて、ネルズィエンの全身を覆う、真っ赤な鎧の中に潜り込んでいく。
 ……べつに指は鳴らさなくてもよかったんだが、演出だ、演出。

「なっ……やめっ……ぁふぅっ!?」

 ネルズィエンが艶めいた悲鳴を上げた。

 顔を真っ赤にして、ネルズィエンが言ってくる。

「き、貴様! 私を辱めるつもりか!」

「そういうわけじゃないんだけど」

 俺は触手を操り、ネルズィエンの赤い鎧を外していく。
 ザリガニみたいと言われてた有機的なフォルムの鎧だが、普通の鎧と留め金の位置はほぼ同じ。

 ほどなくして、赤い鎧が剥ぎ取れた。

 俺は、触手に持たせた赤い鎧を検分する。
 魔力も探ってみるが……あれ? 何も感じないぞ。
 てっきりマジックアーマー的なサムシングかと思ったのだが。

「赤装歩兵って言ってたね。でも、これはデザインが奇抜なだけの普通の鎧にしか見えないんだけど」

 俺は、ネルズィエンに目を戻す。

 ネルズィエンは……なかなか目に毒な格好になっていた。

 首元から下腹部までを、密着する生地のタイツみたいな布が覆ってる。
 前世で言えば、体操のレオタードみたいなデザインだ。
 ただし、レオタードよりも布が薄く、質感としてはストッキングに近い。

 ネルズィエンは、下着すらつけていなかった。
 鎖骨のライン、豊かなバスト、引き締まったくびれ、豊満なヒップ、鋭角に切れ込んだVライン。バストはトップの形が浮いてるし、下腹部は赤い茂みが透けている。

 エロい。とにかくエロい。
 ただでさえ恵まれたスタイルのボディが、騎士として鍛え抜かれたおかげでさらに魅力を増していた。
 バストは、ブラもないのにつんと上を向いている。
 腹筋は、割れるというほどではないが、鍛えた筋肉の上にうっすら脂肪が乗って、絶妙の造形美を醸し出している。
 骨盤の形が浮いた、鼠蹊部のラインまでが完璧だ。

 ぴちぴちの戦闘スーツでもあつらえれば、そのまま対魔忍が務まるだろう。
 もっとも、前世の対魔忍だって、最初から局部が透けるような装備はしていない。

「……お姉さん、露出狂?」

「だ、誰が露出狂か! 吸魔煌殻きゅうまこうかくはもろ肌につけねば効果がないからだ!」

 顔を赤くして、対魔忍――じゃなかった、ネルズィエンが言った。

「でも、この吸魔煌殻? たいしたものには見えないんだけど」

「……ふん」

 ネルズィエンが口をつぐむ。
 「吸魔煌殻」で口を滑らせたと気づいたらしい。

 俺は、影の触手でネルズィエンの脇腹をくすぐった。

「ふひゃひゃひゃひゃっ、や、やめろ!」

「じゃあ、話す?」

「そ、それは……」

「こちょこちょ」

「ふひひひ、ひゃははっ、や、やめてくれ! 話す!」

「ほんとかなぁ。嘘を答えられても困るし、もうちょっと追い込むか」

「や、やめ……んんんん!? ふひぃぃっ、あぁぁぁあっ!」

 俺は数分ほど、ネルズィエンの全身をくすぐった。
 ネルズィエンの全身から汗が吹き出し、ただでさえ薄い鎧下が透けている。
 ……18禁になりそうだから、具体的な描写は差し控えさせていただきたく存じます。

「このくらいでいっか」

「はぁ、はぁ……この、変態め……!」

「残念だけど、俺はまだ9歳なんだよなぁ」

 もう数年遅ければ、どうなっていたかわからない。
 主に俺の方がな。
 こんないい女が敵将やってるのが悪いんだ。

「で、この吸魔煌殻だけど……」

「私が身につけてるのはレプリカだ。ジノフ将軍もそうだな」

「レプリカ? 偽物ってことか? じゃあ本物はどこにある?」

「部下の赤装歩兵が身につけてるものがそうだ」

「部下が本物を装備してるのに、将官が偽物をつけてるのか? なぜだ?」

「そ、それは……」

「こちょこちょするか?」

「や、やめろ! くっ、ほ、本物の吸魔煌殻は、装備者の生命力を吸い取るからだ……」

「は? 吸い取るって……そうか! 吸魔煌殻ってのは、装備者の命と引き換えに、なんらかのパワーを発揮するってことなんだな!?」

「っ。そうだ……」

「うわっ。だとすると、おまえらやることエグすぎじゃね? 部下の命は使い捨てにしてんのに、自分たちだけはレプリカを装備して、さも自分も吸魔煌殻を使ってるように見せかけてるって……」

「しかたなかろう。命を吸われるなどと聞かされて、好き好んで装備したがる者などいるはずがない」

「い、いや、そういう問題か?
 でも、それなら、おまえはどうしてこんなクッソエロい鎧下を着てるんだ? 吸魔煌殻じゃないなら、普通の鎧下でいいはずだろ?」

「……普通の鎧下を着ていては、部下に不審に思われるだろう」

「それも偽装工作なのかよ。組織ぐるみの欺瞞だな」

「兵を率いるというのはそういうことだ」

 完全にブラック企業の言い分だな。
 《不夜城ブラックカンパニー》をかける前から帝国軍はブラックだったらしい。

「吸魔煌殻ってのはどんな力があるんだ?」

「装備者の力を増幅する」

「力って、具体的には?」

「すべてだ。単純な筋力、体力から、魔法の効果まで。吸魔煌殻の装備者は、そうでない者の三倍近い戦闘力を発揮できる」

「強力だな……で、それで寿命はどのくらい縮む?」

「はっきりとしたことはわからん。帝国が吸魔煌殻の運用を始めてまだ日が浅いからな。吸魔煌殻は常時発動しているわけではない。戦闘が多ければ多いほど生命力も削られる。建国時の志士の中には、数ヶ月で十歳以上老け込んだ者もいる。吸魔煌殻の使用中に、原因不明の突然死を迎えた者も数多い」

「なるほどな。でも、そうすると、ネオデシバル帝国とやらは出来て間もないってことだよな。ずっと吸魔煌殻を使ってるんなら、兵たちだっておかしいことに気づくはずだ」

「貴様は、デシバルの名を知らぬのか?」

「デシバル……ネオデシバルじゃなくてか?」

「『ネオ』は異界の言語で『新しい』を意味する言葉だと聞いている」

「異界の言語だって」

 異界の言語で、「ネオ=新しい」。
 短い接頭辞だから偶然の一致でもおかしくはないが……。

(俺みたいなのがいるんだから、他にも転生者がいてもおかしくない……のか?)

 かなり気になる情報だが、この女に聞いてもこれ以上のことは知らないだろう。

 それより、「デシバル」のほうはどうか。

「……たしか、千年前にこの大陸を統治してた大帝国の名前が『デシバル』だったな」

「ほう。その歳でよく知っているな。わが父である皇帝陛下は、そのデシバル帝国の最後の皇帝にして、ネオデシバル帝国の初代皇帝であらせられる」

「……は?」

 千年前に滅んだ旧デシバル帝国の皇帝が、現ネオデシバル帝国の皇帝?

「まさか、過去から未来にやってきたとか言わないよな?」

「あながち間違ってもおらぬ。父皇帝は帝国の崩壊にあって、秘密の地下廟に側近と従僕、近衛兵を合わせた五千人を集め、永き眠りについた。その眠りから覚めたのが、いまから九年ほど前のこと」

「おいおい……」

 さっきは俺の魔法をトンデモ扱いしてきたけど、そっちのほうがよっぽどトンデモじゃないか。

「われらは秘密裏に活動を開始した。目的は、むろん帝国の再建だ。まず手始めにザスターシャ王国を転覆させて乗っ取った。次の狙いがここ、ミルデニアというわけだ」

「なんでミルデニアなんだ。ミルデニアは、これといった特産もない、山に囲まれた小国だぞ」

「……それ以上は、言えない」

「へえ?」

「……くっ。こればかりは言えんのだ。たとえ殺されようと口外するわけにはいかぬ。もっとも、あまり詳しいことも知らないのだが……」

「つまり、皇帝にとってミルデニアはなんらかの特別な価値を持ってるってことか。それもおそらくは、帝国の再建に必要な何かなんだろう」

「……言えぬ」

 ネルズィエンの言葉は、肯定と捉えていいだろう。
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