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05 現在地、不明(1)
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「クシナダ? 大丈夫か?」
『はい。…………ええと、これはどのような状況なのでしょうか?』
さすがのクシナダも、状況を確認するのに時間がかかったようだ。
「答え合わせの前におまえの見立てを聞きたい。これはどういう状況なんだと思う?」
『率直に言って、不明です。経緯はまったく推測不能ですが、ここが太陽系外の惑星だろうことは推定できます。』
「木星や土星の衛星って線は?」
『あの巨大で暗い恒星を観測した結果から、この惑星はあの恒星の周囲を自転しながら公転していると推定されます。衛星ではありません。』
「あの恒星が宇宙のどこにあるもんなのかはわかるか?」
『不明です。ツルギの所有する天体データを検索しましたが、該当する恒星は見つかりませんでした。』
「未発見の恒星系ってことか? 厄介だな」
『宇宙に出て観測すれば、こちらから太陽系を発見することはできるかもしれません。』
「じゃあそうすっか。しかし、未発見ってことは、太陽からは相当遠い場所ってことだよな? どんな現象が起きたらこうなる?」
『さっぱりわかりませんね。お手上げです。もうずいぶん前に、太陽系から一万光年以内の天体の観測は終了し、未発見の恒星はもうないとされていたはずですが。
それより、宇宙に出るにはちょっとした問題があります。』
「ちょっとした問題?」
こいつがそう言う時には、たいていろくでもない話が待っている。
『メビウスマターが異常に活性化してるんです。そのせいで、コンバータがオーバーヒート寸前です。予備動力の小型核融合炉も、制御にメビウスマターを使ってますから、迂闊に起動できない状況です。』
「メビウスマターの異常……そんなことが起こりうるのか?」
『過去には事例がありませんね。もっとも、メビウスマター自体、その正体は謎に包まれているわけですから。これだけの異常事態が起これば、アクシデントのひとつやふたつ起こっても、まったく不思議ではありません。』
「そりゃあそうだが……どうにかできないのか?」
『通常の行動はなんとかできますが、戦闘レベルの出力は出せません。自動修復機能を使って、コンバータやキャパシタの強化を行うことはできます。……材料があれば、ですが。』
「おい、まさか……それを俺に探してこいと? どこの星系かもわからんこの謎惑星で?」
『ありていに言えばそういうことです。いつも通りのむちゃぶりというやつですね。』
「メビウス鉱の鉱床でも掘り当てろっていうのか?」
『それもいいですが、私は別の可能性を推します。』
「なんだそれは?」
『この惑星は、これまで人類が発見したことのないほどの優良物件です。人類が着の身着のままで移住できる、驚異の居住可能惑星ではありませんか。理想的な大気、ほどよい重力と自転速度、恒星からの適度な距離と公転周期。生命が誕生するのにこれほど適した場所は、地球とここの他にはないでしょう。』
「つまり……あれか。先住民がいるかも……と?」
『どのような容姿をしているかはわかりませんし、火星人類ほどの知性があるかどうかもわかりませんが、ね。』
「正真正銘の宇宙人と交渉して資材を手に入れようってのがおまえのアイデアか。……正気か?」
『それは私も疑っていますが、自己診断ではいまのところ正常です。自己診断プログラムが壊れてるのではないですかね?』
「おまえが自分の正気を疑える程度には正気だってことはわかったよ」
俺は大きくため息をつく。
……キリナ。おまえへのプロポーズはだいぶ先のことになりそうだ。
『はい。…………ええと、これはどのような状況なのでしょうか?』
さすがのクシナダも、状況を確認するのに時間がかかったようだ。
「答え合わせの前におまえの見立てを聞きたい。これはどういう状況なんだと思う?」
『率直に言って、不明です。経緯はまったく推測不能ですが、ここが太陽系外の惑星だろうことは推定できます。』
「木星や土星の衛星って線は?」
『あの巨大で暗い恒星を観測した結果から、この惑星はあの恒星の周囲を自転しながら公転していると推定されます。衛星ではありません。』
「あの恒星が宇宙のどこにあるもんなのかはわかるか?」
『不明です。ツルギの所有する天体データを検索しましたが、該当する恒星は見つかりませんでした。』
「未発見の恒星系ってことか? 厄介だな」
『宇宙に出て観測すれば、こちらから太陽系を発見することはできるかもしれません。』
「じゃあそうすっか。しかし、未発見ってことは、太陽からは相当遠い場所ってことだよな? どんな現象が起きたらこうなる?」
『さっぱりわかりませんね。お手上げです。もうずいぶん前に、太陽系から一万光年以内の天体の観測は終了し、未発見の恒星はもうないとされていたはずですが。
それより、宇宙に出るにはちょっとした問題があります。』
「ちょっとした問題?」
こいつがそう言う時には、たいていろくでもない話が待っている。
『メビウスマターが異常に活性化してるんです。そのせいで、コンバータがオーバーヒート寸前です。予備動力の小型核融合炉も、制御にメビウスマターを使ってますから、迂闊に起動できない状況です。』
「メビウスマターの異常……そんなことが起こりうるのか?」
『過去には事例がありませんね。もっとも、メビウスマター自体、その正体は謎に包まれているわけですから。これだけの異常事態が起これば、アクシデントのひとつやふたつ起こっても、まったく不思議ではありません。』
「そりゃあそうだが……どうにかできないのか?」
『通常の行動はなんとかできますが、戦闘レベルの出力は出せません。自動修復機能を使って、コンバータやキャパシタの強化を行うことはできます。……材料があれば、ですが。』
「おい、まさか……それを俺に探してこいと? どこの星系かもわからんこの謎惑星で?」
『ありていに言えばそういうことです。いつも通りのむちゃぶりというやつですね。』
「メビウス鉱の鉱床でも掘り当てろっていうのか?」
『それもいいですが、私は別の可能性を推します。』
「なんだそれは?」
『この惑星は、これまで人類が発見したことのないほどの優良物件です。人類が着の身着のままで移住できる、驚異の居住可能惑星ではありませんか。理想的な大気、ほどよい重力と自転速度、恒星からの適度な距離と公転周期。生命が誕生するのにこれほど適した場所は、地球とここの他にはないでしょう。』
「つまり……あれか。先住民がいるかも……と?」
『どのような容姿をしているかはわかりませんし、火星人類ほどの知性があるかどうかもわかりませんが、ね。』
「正真正銘の宇宙人と交渉して資材を手に入れようってのがおまえのアイデアか。……正気か?」
『それは私も疑っていますが、自己診断ではいまのところ正常です。自己診断プログラムが壊れてるのではないですかね?』
「おまえが自分の正気を疑える程度には正気だってことはわかったよ」
俺は大きくため息をつく。
……キリナ。おまえへのプロポーズはだいぶ先のことになりそうだ。
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