ダークナイトはやめました

天宮暁

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23 ホーリーナイトはじめました④初日の成果

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「やったっ! できました!」

 ルディアがはしゃいだ声を上げた。
 その手には、淡く発光する凶悪な剣。
 光の纏が成功したのだ。

「お上手です、ルディア」

 サリーが手を叩いてルディアを褒める。

 俺はそっと聞いてみる。

「なあ、これって早い方なのか?」

「早いです。
 普通は十日はかかります。
 遅い人は数ヶ月もかかるんです。
 そこで心が折れてやめていく人だっています」

「そうなのか。
 調べてないけど、ルディアは才能があるんだな」

「……教えてすぐにできた人が言っても嫌みです」

「俺は一応前職があるし……」

「適正Cなら数ヶ月コースなんですけどね。
 基本はどの剣でも同じということですか」

「いや、結構違うぞ。
 ただ……なんつーかな。
 奥の奥の方がつながってる感じだ。
 表面は違うが、本質的な部分が一緒というか」

「なるほど、達人の境地というわけですか」

「自分で言うのもなんだが、そうかもな」

 こういうのは素直に認めることにしてる。
 謙遜しても嫌みだと言われるからな。

「適正とはいったい……」

「実際、闇の魔力よりはだいぶやりにくい。
 やっぱり適正は低いんだろう」

 とくに、左手だ。
 闇の魔剣を握ってた左手が、光の力を拒んでる。

(纏も巡も、あまり一気にやるのはやめとこう。
 左手がちぎれるかもしれん)

 なお、俺は光の巡もすぐにできた。

 お昼を挟んで、午後はルディアの巡の訓練だ。
 ルディアが巡を覚えるのはすぐだった。

「できましたっ!」

「は、早いですね」

「纏よりやりやすいみたいです」

「そうですか。普通は逆なのですが」

 たしかに、普通は纏の方が覚えやすいはずだ。

(ルディアは体内の魔力循環に慣れてるな)

 竜鱗とともに育った副産物なのだろう。

「まさか、二人とも一日目で纏も巡も覚えるとは」

 教官のサリーが驚いている。

「さて、どうしましょう。
 慣れないことで疲れてるようなら終わりますが」

「俺はいいけどな。
 ルディアはどうだ?」

「たぶん大丈夫です」

 ルディアが気負いなく言った。
 見る限り、無理をしてるわけでもなさそうだ。

「それなら、軽く剣技の訓練に入りましょうか。
 纏も巡も、剣技あっての技術ですから。
 纏と巡だけだと訓練が単調になりがちですし」

「単調な訓練も好きだぞ?」

「ナインはそうでしょうね。
 普通は纏と巡ばかりやってると辛くなるんです。
 自分の内側をずっと覗き込むようなものですし」

「なるほどな……」

 体性感覚の鋭さには個人差がある。
 鈍い奴だと、巡を感じるのも大変だろう。

 せっかちな性格の奴もいる。
 早く実戦をやらせろってタイプだな。
 ファイアナイトやダークナイトに多いタイプだ。

「じゃあ、剣技か。
 型を覚えればいいのか?」

「正直、悩んでます。
 ナインは剣の基礎は十分ですからね。
 今さら基礎の型を繰り返すのが効果的かどうか。
 むしろ、わたしが教えを乞いたいくらいです」

「いや、さすがに無理だろ。
 ホーリーナイトじゃ戦い方が違う。
 まあ、剣を振るってレベルの動作は同じか」

「そういうことです。
 基礎の上での戦術は違ってきますけどね。
 それは、戦術を習ってからの話ですので」

「ルディアは基礎からやった方がよさそうか?」

「ルディアは、身体能力が高いです。
 下手に型にはめないほうが強いと思います」

「そうかもな」

 「型」は、一般人に合わせて作られたものだ。
 一般人の枠に入らない奴には向いてない。
 小さい靴を無理に履かせるようなもんだ。

「というわけで、乱取りをしましょうか。
 私が受けますので、順にかかってきてください」

 サリーが魔剣を構えてそう言った。
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