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41 シシャ視点:ファーガスとの決裂
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なのに、どうして、こうなったのだろう。
軍の中でも特殊な機関であるせいか、工作部の置かれる場所は隅。
歴史ある建物のせいか窓が少ない上に小さく暗い。陰険な工作部にはお似合いだと嫁のアイリはよく言う。そして嫁の言葉は何気に私を傷つける。
おかしい。私はあっちにいたはずだった。
窓の外に見える一際立派な建物に未練はないが、自分のこの立ち位置に疑問はある。
振り返ってみれば、文官コースを順調に進んでいたのに、学校での鍛練の時間がいやに長かった気がする。
特別補習、特別補講として軍の教育課程が一人だけ課せられていたのは、一体誰の仕業だったんだ。
そして私は思惑に気付くのが遅すぎだ!
「私はこんなだから、とても騎士としてダイゴに仕える事はできない。でもね、私は文官として出世し、陰でダイゴを支えるよ」
自分のひ弱な腕をさすり吐いた健気な台詞が、誰かの胸をうっかり打ってしまったのかもしれない。
誰だ、ダイゴではないだろう。だとしたらその時近くにいたダイゴの母親か、側近か、それとも私の父母か、それは未だにわからない。
こうして敷かれたレールの上ではあるが、年上の嫁と出会ったこともあり目一杯走ってしまった。
そのせいで、今では軍の司令塔の一端である工作部の副参謀になっていた。誰かのサブにつき、後片付けをしたり始末に頭を捻るのは嫌いじゃない。でも出世しすぎだと思う。
ダイゴを先に結婚させて独立させる予定だったのに、なぜかそれも私の方が先で子供も三人の男の子を授かっている。
何から何まで私がダイゴの先を行ってしまっている。
職場での立場ではダイゴより上だ。
ダイゴより上ではあるが、ダイゴは王族だ。王族でなくても彼は彼であって、昔から傲慢なダイゴだ。
「シシャ、大変だっ」
ダイゴが静かな執務室に飛び込んできた。
砂埃が舞っているのには目をつぶる。自分の周りの空気だけもと、私はふっと息をふき押し返した。たいして意味がないことはわかっている。
参謀の部屋と扉で繋がっているこの部屋は静かだ。部下たちも年中、地方や他国へ出払っている。きっと隣の部屋にいる参謀にもダイゴがやってきたと伝わっている。
しかし、しばらく扉を伺い参謀の登場を待ったが、反応はなかった。
ダイゴでなければ、うるさいと一喝する声が届くはずだが、彼は分かりやすい人だ。面倒には関わらない。だからダイゴには関わらない。
シシャというのはダイゴしか使わない愛称。
うちは子爵家だ。
第五王子と子爵家の末息子。
第五と子爵。
ダイゴとシシャ。
これだけ時を経るともはや自虐ネタではない。
お茶を入れて一息入れさせようと席を立ち背をむける。
広くない部屋ではあるがすぐに茶の準備ができる設備はある。振り返った時にはダイゴは私の席にふんぞり返って渋い顔で眉間を押さえていた。絵になる。
しかし何があったのだ。
誘惑に負けて上司のかつらを飛ばしたか、何だ何だ何だ。
騎士になったダイゴは心を新たにしたのか夜の散歩もなくなり、口も手も慎むようになっている。今では冷静沈着な頼りになる隊長様。民にも人気もある好青年だ。
しかし、喋って聞かせる内容はどれも身内である軍の要職に就く者の極秘にしたいはずの醜聞話で、内部には疎い私には聞いていてとても辛いばかりだ。
あの人がカツラ装着者などとは知りたくもなかったが、自前の資料には一応そのことを書きこんでおいた。職務の一環だ仕方がない。ダイゴのお陰でネタが増える。
前の机の下に置いてあった背もたれのない椅子を持ち出し、私はそこに落ち着き、何があったと話を促す。
結果……恋だった。
ダイゴから初めて振られた恋バナはいつだったろう。
私は顎を支えて天井にある愉快な顔をした木目を睨む。天井の木目に顔を見つけたのは、ダイゴがここへ押し掛けるようになってからだ。
そう、恋バナ、あれは確か12年前だったか。
過去を遡る。
休暇で学生寮から自分の部屋に戻った夜に、ファーガスの閨の教育として送り込まれた女に跨られたという話があった。
唇を塞がれ気持ち悪かったので頬を張った、動かなくていいのは楽だったが、精神統一して無理矢理イッたらしく、自分の右手が一番だと色気もない淡々とした話だった。
嫁に乗っかられるまで童貞だった私にはきつい話だった。
いや、これを恋バナというには無理があるのは承知している。だがダイゴの口から女性の話題が出たのはそれが最初で最後の記憶なのだ。
恋の相手はパトリシア。
名は知っている。よりによって新人、嫁の可愛い子猫ちゃんのうちの一人。地味系平均顔美人といった所。
私は彼女の情報を知っている。参謀の書庫には昔の資料が差し込まれていて、それに目を通したことがあるのだ。
記憶を紙のように捲れば詳細が出てくる。
フルネームはそう……
「パトリシア・デライム」
間違いないだろう。
ダイゴは初めて彼女の名前を知ったのか、うっとりと何度もつぶやいている。初めてみる顔だ。 彼の好きな葉の茶だというのに、手をつけていないのは出されたことに気付いていないからだろう。
噂で聞き知っている。希望の新人の内の一人。私も見たことがある。そう……
「ダナじゃない方、だね」
悪意はないが、口にして初めて人を貶める言葉だと気付いた。
「国で一二番と言われる広い領地を持つ男爵家の三女。魔力もち。準備校の試験官がそちらで必要な人材だろうかと工作部に書類を送ってきたのだろう。当時の古い資料だがまだ参謀の部屋の資料庫に保管されている」
持ち出し禁止、部外者には見せられないが、そこにはデライム家の内情も詳しく書きこまれていた。経済的には、逼迫していたはずだ。
『隠』、密偵には相応しい能力。貧しい家。
ふた昔前だったら確実に工作部が引き取り育てていただろう。
何しろ女の密偵には価値がある。
「町娘、踊り子として他国に潜り込ませる。貴族の娘として嫁にだし窓口として使うのも良し、か。彼女のように清楚で庇護欲をそそる女性を好む男は多い。任務だと言って交渉すれば、そう、あるいは……」
「ふざけるなっ!」
私の言葉を遮り、立ち上がって机にダンッと手をつくダイゴ。幻聴ではなく木がミシミシと軋む音がまだ聞こえる。
記憶を辿る方に集中してしまい、ダイゴの変化を見ていなかった。
騎士になった彼は強い。背も高く、脱げば相応の筋肉がある。日々剣を握る手は厚い。軍最弱の私には彼の素手一つが凶器だ。
いつの時代の話だと思っている、明らかに非人道的だろ、冗談だ。
これまでにないダイゴの表情に、ところが口は動かなかった。
そんなことをしたらうちの嫁が黙ってないし。今言ったのって工作部的一般論だし。
頭の中で言い訳は空回りし音もたてずに消える。
それほどに、ダイゴは怒っていた。
「いいかっ」
ダイゴが言い含めるように、ぐっと身を乗り出し、一音をゆっくりと紡ぐ。
「まずはその資料、こちらに、渡してもらおう」
「それは、私の一存でどうにかできる物ではない」
歯の根ががガチガチと音をさせる。
「……なるほど。そちらは参謀と相談させてもらうとする」
「そうしてくれ、そこに私の出番はない」
資料があるとバラシてしまったのは私だが、交渉は雲の上の出来事。私抜きだ。参謀ごめんなさい、あとはお任せします。
ダイゴの声のトーンが落ち着いたことがわかり、私はダイゴに出した茶を奪い乾いた唇を潤おした。
「彼女の持つ魔力が何であれ、私は心を決めている。彼女を工作部から守る。その為にも彼女を私のものに、そうだ今からプロポーズしよう……」
さもいいアイデアだと言うようにダイゴは声を高くする。プロポーズは飛躍し過ぎではないかと思ったが、その思考は断たれた。
「シシャ、もうお前に、用はない」
用はないとは、もう会うこともないだろうという意味だ。
いつものように、またな、とは言わずにダイゴは乱暴に出て行った。
降ってわいた別離に、私は長い溜息を吐いた。冷静になれ慌てることはない。私は実はこれを待ち望んでいたはずだ。はずだ……幼いころからずっと。
シシャ、私をそう呼ぶ人はもうこの世にいなくなった。
私の心と同じく、空になったカップの底は乾き始めシミを作っていた。
軍の中でも特殊な機関であるせいか、工作部の置かれる場所は隅。
歴史ある建物のせいか窓が少ない上に小さく暗い。陰険な工作部にはお似合いだと嫁のアイリはよく言う。そして嫁の言葉は何気に私を傷つける。
おかしい。私はあっちにいたはずだった。
窓の外に見える一際立派な建物に未練はないが、自分のこの立ち位置に疑問はある。
振り返ってみれば、文官コースを順調に進んでいたのに、学校での鍛練の時間がいやに長かった気がする。
特別補習、特別補講として軍の教育課程が一人だけ課せられていたのは、一体誰の仕業だったんだ。
そして私は思惑に気付くのが遅すぎだ!
「私はこんなだから、とても騎士としてダイゴに仕える事はできない。でもね、私は文官として出世し、陰でダイゴを支えるよ」
自分のひ弱な腕をさすり吐いた健気な台詞が、誰かの胸をうっかり打ってしまったのかもしれない。
誰だ、ダイゴではないだろう。だとしたらその時近くにいたダイゴの母親か、側近か、それとも私の父母か、それは未だにわからない。
こうして敷かれたレールの上ではあるが、年上の嫁と出会ったこともあり目一杯走ってしまった。
そのせいで、今では軍の司令塔の一端である工作部の副参謀になっていた。誰かのサブにつき、後片付けをしたり始末に頭を捻るのは嫌いじゃない。でも出世しすぎだと思う。
ダイゴを先に結婚させて独立させる予定だったのに、なぜかそれも私の方が先で子供も三人の男の子を授かっている。
何から何まで私がダイゴの先を行ってしまっている。
職場での立場ではダイゴより上だ。
ダイゴより上ではあるが、ダイゴは王族だ。王族でなくても彼は彼であって、昔から傲慢なダイゴだ。
「シシャ、大変だっ」
ダイゴが静かな執務室に飛び込んできた。
砂埃が舞っているのには目をつぶる。自分の周りの空気だけもと、私はふっと息をふき押し返した。たいして意味がないことはわかっている。
参謀の部屋と扉で繋がっているこの部屋は静かだ。部下たちも年中、地方や他国へ出払っている。きっと隣の部屋にいる参謀にもダイゴがやってきたと伝わっている。
しかし、しばらく扉を伺い参謀の登場を待ったが、反応はなかった。
ダイゴでなければ、うるさいと一喝する声が届くはずだが、彼は分かりやすい人だ。面倒には関わらない。だからダイゴには関わらない。
シシャというのはダイゴしか使わない愛称。
うちは子爵家だ。
第五王子と子爵家の末息子。
第五と子爵。
ダイゴとシシャ。
これだけ時を経るともはや自虐ネタではない。
お茶を入れて一息入れさせようと席を立ち背をむける。
広くない部屋ではあるがすぐに茶の準備ができる設備はある。振り返った時にはダイゴは私の席にふんぞり返って渋い顔で眉間を押さえていた。絵になる。
しかし何があったのだ。
誘惑に負けて上司のかつらを飛ばしたか、何だ何だ何だ。
騎士になったダイゴは心を新たにしたのか夜の散歩もなくなり、口も手も慎むようになっている。今では冷静沈着な頼りになる隊長様。民にも人気もある好青年だ。
しかし、喋って聞かせる内容はどれも身内である軍の要職に就く者の極秘にしたいはずの醜聞話で、内部には疎い私には聞いていてとても辛いばかりだ。
あの人がカツラ装着者などとは知りたくもなかったが、自前の資料には一応そのことを書きこんでおいた。職務の一環だ仕方がない。ダイゴのお陰でネタが増える。
前の机の下に置いてあった背もたれのない椅子を持ち出し、私はそこに落ち着き、何があったと話を促す。
結果……恋だった。
ダイゴから初めて振られた恋バナはいつだったろう。
私は顎を支えて天井にある愉快な顔をした木目を睨む。天井の木目に顔を見つけたのは、ダイゴがここへ押し掛けるようになってからだ。
そう、恋バナ、あれは確か12年前だったか。
過去を遡る。
休暇で学生寮から自分の部屋に戻った夜に、ファーガスの閨の教育として送り込まれた女に跨られたという話があった。
唇を塞がれ気持ち悪かったので頬を張った、動かなくていいのは楽だったが、精神統一して無理矢理イッたらしく、自分の右手が一番だと色気もない淡々とした話だった。
嫁に乗っかられるまで童貞だった私にはきつい話だった。
いや、これを恋バナというには無理があるのは承知している。だがダイゴの口から女性の話題が出たのはそれが最初で最後の記憶なのだ。
恋の相手はパトリシア。
名は知っている。よりによって新人、嫁の可愛い子猫ちゃんのうちの一人。地味系平均顔美人といった所。
私は彼女の情報を知っている。参謀の書庫には昔の資料が差し込まれていて、それに目を通したことがあるのだ。
記憶を紙のように捲れば詳細が出てくる。
フルネームはそう……
「パトリシア・デライム」
間違いないだろう。
ダイゴは初めて彼女の名前を知ったのか、うっとりと何度もつぶやいている。初めてみる顔だ。 彼の好きな葉の茶だというのに、手をつけていないのは出されたことに気付いていないからだろう。
噂で聞き知っている。希望の新人の内の一人。私も見たことがある。そう……
「ダナじゃない方、だね」
悪意はないが、口にして初めて人を貶める言葉だと気付いた。
「国で一二番と言われる広い領地を持つ男爵家の三女。魔力もち。準備校の試験官がそちらで必要な人材だろうかと工作部に書類を送ってきたのだろう。当時の古い資料だがまだ参謀の部屋の資料庫に保管されている」
持ち出し禁止、部外者には見せられないが、そこにはデライム家の内情も詳しく書きこまれていた。経済的には、逼迫していたはずだ。
『隠』、密偵には相応しい能力。貧しい家。
ふた昔前だったら確実に工作部が引き取り育てていただろう。
何しろ女の密偵には価値がある。
「町娘、踊り子として他国に潜り込ませる。貴族の娘として嫁にだし窓口として使うのも良し、か。彼女のように清楚で庇護欲をそそる女性を好む男は多い。任務だと言って交渉すれば、そう、あるいは……」
「ふざけるなっ!」
私の言葉を遮り、立ち上がって机にダンッと手をつくダイゴ。幻聴ではなく木がミシミシと軋む音がまだ聞こえる。
記憶を辿る方に集中してしまい、ダイゴの変化を見ていなかった。
騎士になった彼は強い。背も高く、脱げば相応の筋肉がある。日々剣を握る手は厚い。軍最弱の私には彼の素手一つが凶器だ。
いつの時代の話だと思っている、明らかに非人道的だろ、冗談だ。
これまでにないダイゴの表情に、ところが口は動かなかった。
そんなことをしたらうちの嫁が黙ってないし。今言ったのって工作部的一般論だし。
頭の中で言い訳は空回りし音もたてずに消える。
それほどに、ダイゴは怒っていた。
「いいかっ」
ダイゴが言い含めるように、ぐっと身を乗り出し、一音をゆっくりと紡ぐ。
「まずはその資料、こちらに、渡してもらおう」
「それは、私の一存でどうにかできる物ではない」
歯の根ががガチガチと音をさせる。
「……なるほど。そちらは参謀と相談させてもらうとする」
「そうしてくれ、そこに私の出番はない」
資料があるとバラシてしまったのは私だが、交渉は雲の上の出来事。私抜きだ。参謀ごめんなさい、あとはお任せします。
ダイゴの声のトーンが落ち着いたことがわかり、私はダイゴに出した茶を奪い乾いた唇を潤おした。
「彼女の持つ魔力が何であれ、私は心を決めている。彼女を工作部から守る。その為にも彼女を私のものに、そうだ今からプロポーズしよう……」
さもいいアイデアだと言うようにダイゴは声を高くする。プロポーズは飛躍し過ぎではないかと思ったが、その思考は断たれた。
「シシャ、もうお前に、用はない」
用はないとは、もう会うこともないだろうという意味だ。
いつものように、またな、とは言わずにダイゴは乱暴に出て行った。
降ってわいた別離に、私は長い溜息を吐いた。冷静になれ慌てることはない。私は実はこれを待ち望んでいたはずだ。はずだ……幼いころからずっと。
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