私を見つけた嘘つきの騎士

宇井

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32 媚薬の効果

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 とにかく暑くて私は服を脱いでいった。
 ぽいぽっと投げて、床に落ちたそれを拾うファーガスが面白くてまた笑う。
 あれ、何でこんなに楽しいんだろう。
 かなり身軽になってベッドに横たわるけど、まだ暑い。
 
 うーん。

「こら、やめないか。身体が傷だらけになる」

 何だかわからないけど、ファーガスに手首をつかまれた。

「パトリシア」
「ふぁい?」

 バカ真面目な顔をする人の青い瞳をのぞきこむ。

「両手を出してごらん?」
「ん?」

 ん、ん、ん? 言ってる間にどこからか取り出した布で両手を括られる。

「痕になるかもしれないけれど、掻きむしるよりましだ」

 その長い指がすっと皮膚の表面を流れた時、ぞわっと順に鳥肌が立ったあと、体の奥がずくんっと反応して、思わず腰が浮いてしまった。

「ファーガスは……脱がないのですか?」
「脱いでしまったら、我慢がきかなくなるだろう。こんな僕でも、最初の時くらいは君の了解を得て意識がきちんとある時にしたいんだ」

 その返事を聞いてるうちにも、お腹の奥が熱を持つ。
 熱くて、熱くて、かゆい。全部脱いだはずなのに体の表面が熱を逃してくれない。
 それが辛くて、泣きたくないのに涙がぽろぽろと止まらなくなる。悲しいことなんてないのに、助けてって言いたくなる。
 熱い。
 手の届かない内側から破裂しそうなほど熱い。おなかの奥がかゆい。
 どうにもならない熱に、ベッドの上でのたうち回る。腕が拘束されているのも何気につらくて、解けないかとむやみに動かすけれど、さすがファーガスが結んだだけあって緩む気配もない。
 もうっ!
 陸に上げられた魚みたいにバタバタハアハアして、空気が足りないってジタバタして、心臓がバクバクして、このまま鼓動が走りすぎて、私、気が狂って死んじゃうのかもしれない。

「パトリシア、ごめんね」

 体を起こされたかと思うと、ファーガスに後ろから抱き込まれる。
 その胸に背中を預けると、いい子いい子と頭を撫でられた。たったそれだけが嬉しくて、バカみたいに頷く。何度も。
 投げ出していただけの脚は左右ともに立てられ、股を開かされた。体の真ん中にすうっと冷たい空気が触れて火照る場所を冷やす。

「んっ…」

 たったそれだけで唇は薄く開き、鼻から抜ける声が漏れる。
 普段ならこんなポーズしないけど、ファーガスの手が素肌を移動する度に、それに従わなきゃって思ってしまう。
 それに、今まで自分でも聞いたことがないような甘い息がとまらなくなる。
 背中の熱がファーガスに流れこんで、体温となじんだ気がした。

「こうして後ろから抱けば僕に君の姿は見えない。これだったら、意識が正常に戻っても恥ずかしさは最少に抑えられるだろう」
「……あっ……!」

 ファーガスの手が肩を撫で下へと降りる。辿り着いた先にはぷっくりと膨らんだ乳首。触れるかふれないかの距離でその周囲を撫でたあと、その頂上を指先で転がした。

「ふぁ……あっ……」

 くねくねと動かされ、私はその不思議な心地に腰をゆらゆらと動かした。遊ばれ形を変えるそこの先端が滲むように赤く色づく。
 さほど大きくない乳房を大きな手で包まれもまれ、また指は先端に戻る。
 その手はしばらく胸で遊んだ後、迷いなく下へと向かった。
 線をかくように胸の間を通り、臍についた所で、私の緊縛された腕に乗り上げる。手の甲をそっと包み、名残惜し気に去ると、その下にある薄い茂みを撫でた。
 もうすぐでさっきから熱のたまっている場所へたどり着く。
 ファーガスの焦らすような動きに、身体は期待を持つ。それを自覚した途端、じわっとそこが潤みきゅんとなった。
 そうなると、そこに早く触れてほしくてたまらなくなる。

「……ん……んっ……」

 早くはやくと息が荒くなる。
 さわさわと毛並みを確かめるようにされても、そこじゃないと腰がもぞもぞする。
 ようやく指はもっと下へと滑り下り、閉じていた場所をなぞった。

「あっ……」

 衝撃に顔が天井を向く。さらされた首筋にファーガスの息がかかり、キスをされたことがわかった。
 思わず閉じてしまった足を、ファーガスの足が後ろから固定してくる。
 空気にさらされた場所を感じると、今頃になって少しの羞恥が自分に戻ってくる。誰にも触られたことがない場所、そこにファーガスが触れているのだ。
 お酒のせいもあるかもしれない。だけどきっと私の肌は違う意味で赤みがさしているだろう。それはきっとファーガスを誘うような色づきになっているに違いない。
 こんなことをされてしまっている自分。
 している彼。
 触れらてよろこんでいる身体。
 私の戸惑いを知らないのか、ファーガスは指を動かし始める。
 
「……あっ……ああっ……ん」

 左右に分け入るように器用に動く指が、そっと様子を見るように上下へと往復を始める。それはいつの間にか溢れていた液を丁寧に塗り広げているようでもあった。
 くちゅ、くちゅ。
 粘り付くような音が、それがただの水でないことを教えてくる。

「ああっ……だめっ……」
「本当に、だめ?」
「……うっ……んっ」

 だめじゃない。だけどだめっ。
 次々と溢れる液を指がまとい、一番上にある粒に運ぶ。そこに触れられる度に身体が震え、足の先までビリビリと電流が走った。
 やがて他には興味がないのだと、その粒ばかりを構われてしまう。
 硬くなったそこは充血でもしているのか、少し触れられるだけで痛みに似た快感が、腰を通り背中を抜け脳へと届く。
 私の声で何を感じているのかがわかったのか、左右に揺れていた指が、上下にばかり動くようになった。しつこいほどに。

「あんっ……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

 そうされると声がとめられなくなる。

「パトリシア、壁が薄いから、静かに」
「あっあっあっ、あっ、あっ……むりぃ……」

 気持ちいい。
 ファーガスの指が魔法でも使っているみたいに、触れらた部分の全部が気持ち良くなる。

「んっ……」

 顎を持たれ、後ろを向かされ唇を吸われる。
 キスといより、吸われている。そうやって私の声さえもファーガス様に制御され、自分の思い通りにはいかなくなる。
 唇の気持ち良くて、触れられて尖る場所も気持ちいい。全部が気持ちいい。
 くちゅ、くちゅ……
 下からの音に、上からの音。
 どちらの水音も途切れることがなく、私の耳にまとわりつく。信じられないことに全部が自分の身体が出している淫靡な音なのだ。
 こんなの知らない……だけどやめないで。

「んぁ、ん……はぁ……」

 ようやくキスから解放された時には息も絶え絶えになっていた。

「ううっ……」

 液が溢れすぎているのか、それを吸い取ったシーツでお尻がひんやりする。だけどそれは私を冷ます役には立たず、ますますファーガスの指が触れる場所に意識が持って行かれた。
 ファーガスの意識もそこばかりになったのか、ついには彼の両手が存在を主張する赤い粒に引き寄せられる。
 器用にそこを広げ、隠れていたすべてを暴き出す。きっとそこは触れてほしいと、切なくひくひくと動き、ファーガスを誘っている。
 
「あっ……いたっ……!」

 痛くはなかったけれど、衝撃にそう叫んでいた。
 にゅりゅと隠れていた物がさらけ出されたように、空気に触れる面積が大きくなる。
 ブドウを食べる時に紫色の薄皮を割ると、小さな筋目が両端に裂かれぐにゅっと果実が飛び出す。そんな風に、私が剥かれた気がした。そうやって私の粒からも、中に埋まっていた果実が現れたのだ。
 
「……ん、ん、ん、ん、ん……はぁ……」

 信じられないほどの神経が剥き出しになったそこは、何をされても敏感に反応する。
 優しくクネクネと根元から揺り動かされ、目尻に溜まっていた涙が流れた。
 わからない、わからないけど、そこはきっといつもより膨らんで大きくなっている。ファーガスにいじめられるほどに、はちきれそうになるのだ。
 
「パトリシア。気持ちがいいなら、いいと口にした方が楽になる」

 きゅっとそこを押され、一瞬息を忘れる。

「はぁ……きもちいいです……」
「うん、僕もだよ。君に触れる指が、気持ちいいって言ってる」

 本当に?
 耳元にかかる優しい声に、また涙が復活してしまった。

「あっ、ああっ……きもちいい……きもちいい……」

 私の越えに遠慮がなくなると、動きも激しくなった。
 
「あっ……いく……いく……いっちゃう……いくぅ……ふぁーがす……ああっ!」

 気持ち良さが駆け上がる途中、ファーガスの片方の手が、私をの手を握ってくれた。
 ファーガスの荒い息遣いが私をさらに高めて、私はガクガクと身体を揺らし達していた。
 じんじんと痺れる身体、足先がぴくぴくと震え、頭がぼうっとする。

「パトリシア……いい子だ。眠るといい」

 労わりの声を聞いたら安心して、私は全てを後ろのファーガスに託して目を閉じた。
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