異世界人αと日本人Ωの間に生まれたハーフな俺

宇井

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4 外国人さん相手に奮闘する俺

 二日で出てくるはずの父さんの入院が長引いた。延長はあと二日らしい。
 かなりがっかり。
 退院祝いにご飯は何を作ろうって考えてたのに。病院食も美味しいって聞くけど、やっぱり家庭の味とは違うじゃん。
 家は牛乳飲まない一家なのに、朝食に必ず出るって言うし。父さんに牛乳は拷問と同じじゃん。
 でも俺はこんな事じゃ落ち込まない。
 朝は病院に顔を出してから学校。学校帰りに病院よってから帰宅。あと何回かなら全然平気でこなしちゃうよ。
 父さんはすっかり元気になっていて病院内を自由に動き回ってるっぽい。そして暇っぽい。だけど洗濯機は回していない。
 入院している階の洗濯機三台中の一台壊れたみたいで、洗濯したい人が集中。なかなかタイミング悪くて使いづらいって。
 病院って干せる場所がないから、洗濯から乾燥までがセットで全部終了までが三時間かかるんだって、だからなかなか空かない。そんな事初めて知ったわ。
 それに洗濯物はやっぱりお日様に干してほしいとか、珍しく我儘いうから、俺が洗濯係を申し受ける事にした。そう負担でもないしね。

 今日も袋一つ分の洗い物を手に市営住宅の階段を昇る。
 ふっと、階段の踊り場から見えたお空は、下がピンクで真ん中が青、そして上が紫のグラデーション。めっちゃ幻想的なんだけど! そう誰かに教えたくなるほど綺麗で、じっと見つめていたら目が焼けるみたいにじわっと熱くなった。
 おっと感傷的になるのはよくないね。今は特にさ。今日はいい日。最後まで元気よくいくよっ。
 トトトトトッ、階段を登りきって玄関扉が並ぶ通路にでると、その黄昏色を背負った……コスプレイヤーを発見した。
 なんでここにコスプレ人!
 どこかの婆さんに続いてコスプレイヤー登場とは、なんか変な人に遭遇する悪い癖でもついたのかね、俺ってば。
                 
 地味な市営住宅に突如として現れた場違いな人。
 他の部屋を訪ねてきた人だといいなぁって白々しく願ったけど、しっかり我が家のドアの前に、扉を睨むかのようにしてズンッって感じで直立している。
 金髪、ブーツ、マント……膝まで隠れるマント、長い……体デカイ。
 見える横顔はただ真っ直ぐに扉を見据えていて、まるで敵にでも対峙しているみたい。結構怖い。
 これきた。ヤバイ人きた。
 一度ここを離れようかと思ったけど、うーん、でも、早く洗濯回したいしなあ……
 そこで俺はある人の存在を思い出す。
 父さんの友人には色んな種類の人がいるけど、コスプレ好きのOLさんもいるのだ。だからその流れの知り合いなのかもしれない。
 そうだ、そうだ! だったら何の問題もないじゃん!
 ……面倒な人じゃないといいな。
                       
 ダイニングの椅子に座ってもらって、冷蔵庫から麦茶を出してコップに満たしテーブルに置く。
 レイヤーさんが麦茶で一息ついている間に、ちゃちゃっと洗面所に移動して洗濯機に洗濯物を投入、洗剤を適当に入れてボタンを押す。お客様よりあくまでこっちが優先。できれば明日には乾いていて欲しいし。
 そして台所に戻って何かお出しできる菓子はないかとガサゴソと探す。お菓子と言ってもスーパーで売ってるやつだけど。

「※※※※※※、※※※△ル」

 いつの間にか隣に来ていたレイヤーさんが俺の頭を撫でる。
 きっといい子だって言ってるんだろうな。言葉はわからないけど、笑顔つきの手は優しい。
 父さんが入院した事を知って、コスプレイベント中にも関わらず駆けつけてくれたのかもしれない。だとしたら超いい人じゃん。
 金髪のカツラを被っているのかと思ったけど違った。間近で見たらレイヤーさんは本当の外国人だった。髪は地毛、目は緑色のイケメンおじさん。
 背も高いよ。俺が見上げちゃう位だから。そして年の割に体はかっちかち。胸筋がむっきゅってなっていて、筋肉が発達しすぎてるのが服の上からわかる。
 俺の父親きたのか! 一瞬だけそう思ったけど年齢が合わない。父親ならもう少し若いはず。このレイヤーさんはどうみても五十代だ。
 五十代なのにコスプレの為にここまで鍛えちゃうとか、意気込みがすごいよね。
 でもこれって何のキャラクターだろうな……ゲームか? 何かヒントが出てこないかと脳ミソをひねったけど、俺の知るアニメやゲームのどれにも該当しなかった。
 お客様に喜んでもらえるような話題ふれなくてごめんね。

 そうそう、黙っていると気難しそうだけど、この人面白いんだ。
 何か忘れ物したみたいで、慌てて体中まさぐって最後にオウフッみたいな大きな溜息ついてた。そんなに大事な物をどうして忘れたのかね。
 おっとしまった。
 レイヤーさんが面白すぎて、頂いたお見舞いの品をほったらかしにしていたよ。
 俺はテーブルに置いたままの紙袋から、南国風フルーツを取り出して冷蔵庫に入れた。柔らかな棘が一杯で、色は作り物めいた黄色、絵の具の黄色。こんなのネットの中でも見たことない。きっと高いんだろうな。
 言葉が通じればもっと楽しいのにな。
 でも俺もうかつに意思疎通できない知らない人を家に入れたんじゃないよ。ここに至るまでに玄関前で粘ったもん。
 スマホの音声翻訳機能を使って会話する努力をした。だけどどの言語もレイヤーさんの言葉を訳してくれなかったんだ。
 訛りでも強くて翻訳されないのかな、どうしようかって困ったよ。
 だけどレイヤーさんが「※※※ユーリ※※※ユーリ△※ル」言うから、やっぱり知り合いなんだなって家に入れたんだ。
 ユーリ=侑李=父さん、だもんな。
 袋の中には果物以外にももう一つの包みがあって、横から伸びてきたレイヤーさんの手にそっとそれを奪われた。
 レイヤーさんは座り、その隣の席をポンと叩く。そんな所じゃなくてこっちにこいってことだ。素直に隣に腰を降ろすと、レイヤーさんは包みを開ける。
 入っていたのは手作りのクッキー。スプーンでゆるい種を落として作ったような、形がいびつなやつ。

『食え食え。うまいぞ』(俺的超訳)

 そうニコニコしてくるから口に入れた。そしたら思わず「わぁーおっ」なんて声が出た。
 いや手作りを馬鹿にしてたんじゃないよ、だけどさ、しっとりしていて美味しいんだこれ。乳脂肪をけちっていない高級品の味がする。それにまだちょっと温もりが残ってる。気がする。
 できたて、焼き立て。

「おいしいです! これってレイヤーさんの手づくり?」

 おっと、通じないんだった。
 と、レイヤーさんのごっつい手が俺の手を取って繋いでにっこり笑ってきた。カサカサ、だけど温かい。
 いや、なんだこれ。
 確かに俺は年齢差とか気にしないけど、性別とかも気にしないけど。初対面とかでは流石に……
 違うよな。アプローチじゃないよな。頼むぞ。外国人さんってテレビ情報によると、スキンシップ多いし距離が近いんだよな。それだなきっと。
 性的なアレはないからまあいいかと、俺はやけにスキンシップ過剰なレイヤーさんの相手をする。

「うーんと、父さん、ユーリの入院が、ちょっとだけ、のびたの。ロングよ。でも元気。オーケー? ワカルぅ?」
「ユーリ※△※、アー※※、ドゥン※△□※※ル」

 俺は俺で日本語で喋りかけて、レイヤーさんはレイヤーさんの言葉を喋って。身振り手振り。
 まったく通じん。でも諦めないの大事。

『一生懸命喋ってるけどやっぱ意味わかんねえわ。でも楽しいならいいだろう、人類皆兄弟。わははっ』

 好き勝手に交互に喋って、最後は二人して笑い合った。
 超明るいおっさんで助かったわ。
                  
 俺じつは無茶くちゃ疲れていたのかもしれない。
 気が付いたら居間の畳の上に寝かされていた。カーテンを引いていないから窓の外が真っ暗なのがわかる。
 すぐに気づいたけど、俺の体には肩からすっぽりとマントがかけてあって、体はぽかぽかして何だか優しい気持ちになった。レイヤーさんの体格には丁度いいマントのサイズも、俺にはシーツみたいで笑ってしまう。
 結局クッキーはレイヤーさんと二人で全部食べちゃって、病院の父さんに持っていく分はなくなっていた。
 甘い物の後にはしょっぱい物がいいって事で、その後に出したポテチのコンソメ味も二人ですぐに空にしちゃったよ。
 明日は病院の父さんに面白い報告できそうだ。そうそう、もらった謎のフルーツをは持って行った方がいいのかな、これって日持ちするのかな。
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