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第89話 護衛

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ルークとミリーナは護衛を受けることをドアに外で待機していたルマイルに伝えると直ぐにイリアが飛んできて感謝の言葉を二人に伝えた。

このまま護衛を引き受ける場合、領主の館に滞在することになるため、ミリーナとルークは二手に分かれることにした。

1人が早速イリアの護衛をし、もう1人が宿においてある荷物の引き取りと宿を出る手続きをするといった流れだ。

ちなみに、結局『礼』が金銭の場合に関しての結論が出なかったので、こちらに関してはミリーナがルークのことも含めてメリッサに手紙で確認を取るということになった。

今、イリアのところにはミリーナを残し、ルークは宿に向かって歩いている。

(なんだか最近、色々なことに遭遇してばかりだな)

ルークは軍を出てからのことを振り返る。

まず、実家に帰ったら既に家はなく、両親が亡くなっていた。

更に追い打ちをかけるように自分が死んだことになっており、結婚を約束した女性も既に嫁いでいて絶望した。

自分を死んだことにしたのが誰かを確認しに軍に戻ったら、元上司の行いであったことが発覚し、激怒し、元上司を殴り、牢屋に入れられ裁判を受けた。

死を覚悟していたら、無罪で釈放され部下たちに慕われていたことが非常によく分かり、感動した。

それでも気は沈んだままで、放浪していたらヤムイ村での襲撃事件に遭遇し、そこでミリーナと出会う。

ミリーナの生き様を見て元気づけられ、旅を続けていると今度は自分が使っていた『鬼剣』・・・『国重剣』の製作者に会うことができ、思いもよらず今腰に下げている『護命剣』を手に入れることに。

ヤムイ村で出会ったミリーナが勲章授与されるということで王都に顔を出してみたらまたまた騒動に巻き込まれ、その結果『国王代行』をやることになり、近衛騎士になりたてのミリーナも同行することになって、一つ目の街でいきなり誘拐事件に巻き込まれることになった。

軍に居た時にも色々あったが、軍を出た時の今に比べたらかわいいものだ。

(まぁ、お陰で落ち込んでいる暇は余りなくて助かっているがな)

ルークは大分増しになったとはいえ、まだ、ふとした瞬間に両親のこと、元許嫁のことを考えると落ち込んでしまうが、色々なことが起きるので気は紛れていた。

「いつか、元許嫁に再会したときに笑って話せるようになりたいものだ」

ルークがふと呟いた言葉は、街の喧騒によって直ぐに消えたのだった。
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