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第132話 道中⑤

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「おーい」

ルークが呆然とするミリーナの目の前で先程切断された木の枝をふるふるする。

「はっ!?ちょっと何今の!?」

正気を取り戻したミリーナがルークに問い詰める。

「何って、ちょっとしたコツだが?」

「嘘でしょ、あたしこんな太い木を斬れたことなんて初めてよ!!」

「それは良かったな」

「えっと、いやまぁ良かったのは良かったんだけどさ」

どうしたらこの興奮をルークに伝えられるのか、もどかしい気持ちになるミリーナ。

続いて声を出そうとした瞬間、ルークに止められる。

「!?」

ルークの様子を見て、緊急だと理解したミリーナは臨戦態勢になるが、

「おおおおっ!!」

ルークは突如大きな声を上げ、持っていた木の枝を投擲する。

投げられた枝は森の木の間を通り、一直線に進むと直ぐに見えなくなる。

「急にどうし」

グガァァァア!

ミリーナがルークに問いかけ終わるよりも早く断末魔のような声が森中に響き渡る。

直ぐにそちらに駆け出すルーク。

「え!何?なんなの!?」

取り残されたミリーナは慌ててルークを追いかけるが足の早いルークにどんどん離される。

(一体何事なのかしら!?)

ルークが見えなくなった後、消えた方向にしばらく走るとルークが立ち止まっているのが見えた。

「ルーク?」

「・・・ミリーナ、すまない。また、厄介事に巻き込まれてしまったようだ」

ミリーナが声をかけるとルークが珍しく謝ってくる。

さらに近づくと、ルークは小さな女の子を抱えていた。

「あー、まあ何というか」

ミリーナはルークと少女の他に眉間に木の枝をさされて絶命している熊を確認しつつ、

「ルークは悪くないから気にしないでいいわよ」

ミリーナは嘆息しながらそう答えた。

(短い平和だったわね・・・)
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