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第157話 剣術大会④

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「ほほ~、あれが闘技場か!大きいのぉ」

ボルンの街の中心に向かうにつれて中央にある闘技場がはっきりと見えてくる。

ヒルダの目が釘付けにされ、さきほどからしきりに大きい大きいと喜びながら叫んでいる。

「ところで、結局ルークは参加するの?」

そんなヒルダを微笑ましそうに見ていたミリーナがルークに思い出したかのように尋ねる。

「どうするかな。正直、迷ってはいる」

ルークがミリーナの言葉に答える。

「そうなんだ。参加すれば絶対優勝だとは思うけど。強制するものじゃないしね。あ、ヒルダちゃんやあたしが観戦するしかないことを気にしているのならそこは気にしないで良いからね」

「そうじゃぞ、ルーク。むしろお主の英姿をもっと見てみたいわい。参加する場合は、観戦は拒否されてもするからの」

「わかった。二人ともありがとう」

ルークが『剣術大会』の参加を迷っているいくつかの理由の内の上位には間違いなくミリーナやヒルダを待たせることが入っていた。

「「水臭いわね(ぞ)、ルーク」」

「ふっ、そうだな。まあ、闘技場についたら開催期間や条件なども分かるようになっているだろう。それを見てから決めさせてくれ」

「「わかったわ(ぞ)!」」

またしても似たようなことを同時に話すミリーナとヒルダ。

(なんだか、最近本当の姉妹に見えてきたな)

そんな二人を見てルークはそんな他愛のないことを考えていた。

「おっ、見えたぞ!!」

「わぁ、大きいわね!!」

ルークはヒルダとミリーナの言葉に闘技場に目を向ける。

外装は全て黒一色で統一されている。

外のどこからでも中に入れるように入口が等間隔で設けられており、一際大きな入口が見える。

恐らく、闘技場の中心に入るための入口なのだろう。

「凄いわね、長蛇の列よ!あれ、みんな参加者なのかしら」

ミリーナが言うように、大きな入口には様々な武器を持った人々が列を成していた。

恐らく、闘技場の中央まで伸びていることを考えると千人は超えるのではないだろうか。

「ほんとじゃ!参加者に違いないぞ。だが、剣?なのか??」

「あ~、ごめんね、ヒルダちゃん。言い忘れていたけど『剣術大会』とは言うものの最近では剣に関わらず、武器を持っていればどんな武器でも良くなったのよ」

「なるほどのぅ」

「ほう、ミリーナよく知っているな」

ヒルダと同様、ルークも感心する。

「あたしは王都に住んでいたからその辺りの情報は入るのよね。とは言え、知ったのは騎士学校に入ってからだから、当時は『剣術大会』に出られないことが分かって後悔したわ」

ミリーナが言うには、元々は剣でのみ最強を選んでいたらしい。

だが、時代が経つにつれて剣以外を用いる達人が現れはじめ、『剣術大会』に参加できる人は剣に関わらず武器を持っていれば良いということになっていったとのことだった。
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