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第231話 剣術大会本戦㉙

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ガン!

ガン!

ガン!

ガン!

ルークとバグラス大将軍の2人の考えとは別に引き続き、異音が会場中に響き渡る。

ダンッ

2人は再び距離をとった。

遅れて2人の戦いによる余波により風が吹き荒れる。

「強くなったのぉ、『魔人鬼』よ」

バグラス大将軍がルークに気づかれないように息を整えながら声を掛ける。

「その言葉はお前が負けた時に聞かせてくれ」

ルークも決め手に欠ける現状に焦っていることを悟らせないように答える。

「ふん。言いおるわ」

言葉の割に嬉しそうにバグラス大将軍が言う。

(俺と奴の差は奴の方が少し分がある。なら、後はこいつの性能に賭けるしかない)

ルークは護命剣を見ながらそう判断する。

バグラス大将軍の剣もかなりの業物ではある。

だが、護命剣よりは下の性能であると思い込みそこに頼ることにする。

「もっと戦っていたいが、決着をつけよう」

バグラス大将軍がそう呟きながら構える。

(儂の体力が持つうちに勝たせてもらうぞ)

「そうだな」

ルークも覚悟を決めた。

「では、もう一段上の本気を見せてやる」

バグラス大将軍そう言って再びルークに向かって迫りだした。

「なっ!!」

ルークは動揺しながらもバグラス大将軍の攻撃に備える。

(先ほどよりも上があるだと!?・・・はったりに決まっている)

そうは思っても動揺が消えきれない。

ガン!

(ぐっ)

バグラス大将軍の攻撃をルークが受け、先ほどよりも押される。

ガン!

(確かに先ほどとは違う。・・・だが、これは)

ガン!

(長距離走での本気を短距離走の本気に変えたようなものだ)

ガン!

(よし。なら俺も)

ガン!

ルークも短期決戦用の力配分に変える。

(儂の考えに合わせて同じようにしてきたか。咄嗟の状況判断も超一級じゃのぉ)

「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

2人は示したかのように同時に声を上げる。

ガァン!

ガァン!

ガァン!

先ほどよりも激しい異音が会場中に響き渡った。
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