他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

文字の大きさ
46 / 488

第45話

しおりを挟む
『・・・』

イズはグレイの質問に即答できず、器用に腕を組むようにして考えこむ。

しばらく沈黙が空間を支配し、グレイが耐えられなくなって再度話しかけようとした時、イズが話し始めた。

『・・・正直なことを言うとな。具体的に何をしたいというのは無いのだ。もちろん、この迷宮からずっと出ることができなかったこともあり解放されたいという気持ちはあるのだが・・・』

イズが正直な気持ちを話す。

「そうか・・・」

グレイはやはりという気持ちであった。

この迷宮を踏破するのを心待ちにしていた様子はイズの言動から伝わってきたが、いざ踏破した後もグレイのことを急かしたりせず、律儀に質問に答えてくれる様子からどうしたら良いか決めかねていると感じていた。

もし、グレイがイズの立場だったら、必要なことはさっさと説明しこの迷宮を飛び出していたに違いない。

(考えてみればイズはイズで大変な日々を過ごして来たんだよな・・・よし)

グレイはイズの気持ちを慮り、ある決意をする。

少し俯き気味のイズに対し、

「なぁ。・・・もし、イズが良かったらなんだが、俺と一緒に行かないか?」

『!?』

イズは思いもよらなかったのか、グレイの提案に驚く。

『し、しかし、我は迷宮の主だったのだぞ?お主ら人間を大勢殺して来たと言っても過言ではないのだ』

「イズが直接殺して来た訳じゃないだろうが。それにここにきた人間たちは命の危険があることを知った上で挑戦したはずだ。気にする必要はない」

『だ、だが我はグレイと同じ存在じゃないのだ。我はグレイに迷惑を掛けるかもしれない』

「人間同士だろうとそうでなかろうと迷惑を掛けることはお互いあり得るんだ。気にする必要はない」

『・・・』

イズはこれ以上言うことが思いつかないのか小さなくちばしをパクパクさせる。

「重要なのはイズがどうしたいかだ。俺はそれが聞きたい」

グレイがイズの目を見てそう問いかける。

『・・・我はグレイと共に行きたい』

イズは小声ではあったが、はっきりと宣言した。

「そうか!これからよろしくなイズ!」

グレイはその言葉を聞き、嬉しそうにイズに言う。

『・・・ああ。こちらこそよろしく頼む』

イズも嬉しそうにグレイに応じた。






「えーっと、このオーブに触れながら行きたいところを思い浮かべ、【転移】と念じればいいんだったよな?」

グレイが左肩に止まっているイズに確認を取る。

『ああ。それでいい。今までは使用してもこの迷宮の結界で弾かれてしまうが今なら気にせず移動できるはずだ』

グレイはイズの言葉にきっと何度も試して弾かれたんだなと思ったが言わないようにする。

「分かった」

グレイは魔法学園を浮かべ魔力を込めながら【転移】と念じる。

が、何も反応しない。

『・・・気は済んだか?』

イズが先ほど言った通り、グレイの魔力ではこの迷宮から地上に出るくらいしか出来ないのだが、グレイは試さずにいられなかったことを理解しつつ声を掛ける。

「くぅ・・・こんな時は自分の魔力の無さを呪わずにいられないぜ」

グレイは分かっていたことだがいざ目の当たりにすると、とてもがっかりした。

『グレイ・・・きっといいことあるさ。魔力だけが全てじゃないからな』

イズが右の羽根を使ってグレイの方を優しく撫でる。

「・・・ありがとう。まぁ、仕方ないか」

グレイはイズに礼を言ってから、迷宮の外をイメージし、魔力を込めながら【転移】と念じた。

その瞬間、グレイとイズの2人を優しい光が包み、2人の姿が掻き消えたのであった。





「はぁはぁはぁ・・・ここは?」

グレイは先ほどとは異なる景色を見ながら荒い息を吐く。

魔力をほとんど使った為である。

『大丈夫か?』

グレイの左肩からイズの声がする。

「ああ。大丈夫だ」

グレイが呼吸を整えながらイズに答える。

『・・・ここは、迷宮の入口がある場所だな』

イズが周りを見ながらグレイの最初の質問に答える。

「分かるのか?」

グレイが辺りを見回しても何も見つからなかったためイズに問う。

辺りは岩山と砂が見えるばかりで迷宮があるとは思えなかった。

『ああ。迷宮の入口に来たことは無いがこの辺りで気配を感じる。きっと砂に隠れてしまっているだけだろう』

イズは確信を込めてグレイの質問に答える。

「ということはここは迷宮の外で間違いないんだな?」

グレイは迷宮の中を地上から通った訳では無いため地下99階までがどのような構造になっていたかが分からない。

もしかしたら、今周りに見えているようなまるで外のような迷宮の階層があってもおかしくないと考え、イズに確認を取る。

『ああ。間違いない。迷宮の中か外かくらいははっきりと分かるからな。ここは地上だ』

イズが断定する。

「そうか・・・」

グレイはイズの言葉に返事をしてから、

「よぉぉぉし!!!やったぜ!!!!」

両手でガッツポーズをしながら大きな声で叫び喜びを露わにする。

ほぼ死ぬ可能性しかない状況での生還だ。

グレイの喜びようも無理はないだろう。

だが、グレイの左肩に居たイズにとってはそれどころでは無かった。

『おぉい!耳元で急に叫ぶな!!びっくりしただろうが!』

イズがグレイにクレームをつけた。

グレイはイズの言葉で我に返ると、

「悪い悪い・・・すまなかった」

と、申し訳なさそうに謝った。

『・・・分かった。以後、気を付けてくれよ』

イズはグレイをすぐに許す。

イズも急にグレイが叫ぶほど喜んだ気持ちが理解できたからだ。

というか、グレイが先に叫んでなかったら自分が叫んでいたに違いない。

そのな心情であったため、余りグレイを責める気にならなかった。

「ああ。すまなかった。それにしても良かった」

グレイが先ほどと異なることに対して安堵の声を上げる。

『ん?何がだ??』

グレイが無事生還できたこと以外に喜ぶことがあったか?と思いながらイズがグレイに問う。

「イズも一緒に出られたことがだよ」

グレイが本当に安堵したように言う。

『・・・ありがとう』

イズは不覚にもじーんと来てしまい、思わずグレイから顔を背けながら礼を言う。

(全く。不意打ちにも程がある。照れてしまうではないか)

イズは長い間存在してきたが、ほとんど会話ということをしたことが無い。

それこそ偶に、最終試練に到達する者に対して数回だけ話をする程度くらいなのだ。

人の好意に対しての免疫が全くといって無かった。

(はは。照れてるな)

グレイはイズの態度の理由がよく分かっていたが、口に出すことはせず頭の中で呟くに留めて置く。

「よし・・・まずは人がいる場所を探すか」

グレイは当てずっぽうで進む方角を決め、歩き出す。

『そうだな。それが良いだろう』

イズもグレイの言葉に同意する。

グレイは早く戻りたいという気持ちはあったがそれ以外に不安に思うことはほとんどなかった。

歩きながらグレイは一つずつ確認する。

(食事は泉の水のお陰で何とかなるから問題ない。寝床は途中で宿をとれば良いだろうしな。金は余り持ち歩いていないが安宿を選べば何とかなるだろ)

そこまで考えてふとグレイは懐を探る。

命の危険が迫っていたため財布を確認していなかったということに今になって気が付く。

「くそぉ・・・財布を盗られていたか」

グレイの財布は拉致された時に盗られていた。

(まあいいか、そんなに入ってなかったし)

グレイが財布に入っていた金額を思い出し、気にしないことにした。

『ん?金が無いのか?』

グレイの呟きを聞いたイズが反応する。

「ああ。拉致された時に盗られたようだ」

『そうか・・・金が無いと不味いのか?』

「・・・いや。野宿すればいいから大丈夫だ。問題は向かう方向をはっきりさせることだけだな」

『なら良かった。では、早く参ろう!!』

グレイの答えにホッとしたイズがこれからが楽しみといった気持ちを前面に出す。

「・・・ああ。そうだな!」

グレイはイズの言葉に嬉しそうに笑い、そう答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...