他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第53話

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「・・・まず、これを何とかするから少し待ってて」

グレイは自分の名前を嬉しそうに呼んでくれたアリシアにそう言うと目の前の炎に集中する。

そこで初めてアリシアはグレイが素手で炎を受け止めていることに気がつく。

「!?」

驚きながらも大声を上げてはグレイの邪魔になると思い、黙って状況を確認するアリシア。

(見た時は驚いてしまいましたが、グレイさんは炎を受け止めても平気そうな顔をしてらっしゃいますわね)

涼しげなとまではいかないが慌てる様子はない。

そればかりか、

(何ですの?炎が小さくなっていっていますわ)

段々と炎の大きさが小さくなっていくではないか。

さらに不思議なことに炎が小さくなるにつれてグレイの手からは白い蒸気が上がっていく。

(グレイさん・・・貴方という人は、本当に・・・)

アリシアはグレイがいつも自分の予想の斜め上を行き、驚かしてくれることに感慨深い気持ちになっていた。

同時に、このような光景は自分では到底思いつかないため、今この瞬間が現実であると言うことを確信した。

(生きていてくださって本当に良かったですわ)

状況がこのようなもので無ければいつぞやのように駆け寄り抱きついていただろう。

ぐっと堪え、アリシアはグレイの背中をじっと見つめていた。

(間に合って良かった)

グレイはギリギリのところでアリシアがピンチな時に間に合ったことを心の底から安堵していた。

(無理して急いだ甲斐があった)

迷宮から無事脱出してからのグレイは必要最低限な事以外、殆ど休み無く移動し続けていた。

強行軍に及んだのも全てアリシアのことが心配だったから。

魔法学園の前にここに寄ったのは偶然だったが、それが功を奏した。

(あとは、この場を上手く切り抜けるだけだな)

グレイは目の前の問題に注力する。

(それにしても、とっさにやってみたけど上手くいって良かった)

グレイは今更になって今自分のしていることが成功したことにほっとした。

ぶっつけ本番の対応、それは腕輪の力で泉の水を両手に【展開】し続けることだった。

これなら水が炎を消化し、仮に手が火傷したとしても泉の水の効果で回復し続けられると考えたのだ。

それが上手く行き、グレイは全く火傷を負っていなかった。

そればかりか予想外に良いことが起きる。

煙だ。水蒸気の発生により、視界を塞ぐ効果が見込めた。

(よし。炎は無効か出来たみたいだな)

炎が消えたことを確認したグレイは、向こうからの視界が塞がっているこの時間を無駄にしないようにすぐにアリシアの方に向き、駆け寄る。

正直久しぶりに会ったアリシアに抱きつきたかったが弁える。

「・・・グレイさん。うっ」

アリシアも喜びを表現したそうだったが怪我のせいで上手くいかない。

「しっ・・・積もる話は後で。今はこの場を乗り切ろう」

グレイは小声でアリシアに話しかける。

「ええ」

アリシアも小声で頷いた後、

「ですが、私《わたくし》のことは置いていってください。あの男には到底太刀打ち出来ません。グレイさんだけなら逃げられるはずです。そして、彼らもグレイさんのことにもう拘ったりしませんわ」

グレイにそう提案する。

足手纏の自分は置いていってと。

(もうひと目グレイさんにお会いできて私《わたくし》は満足ですわ。グレイさんだけでも生きていてくれれば安心して逝けます)

アリシアの目は本気で死を覚悟したものだった。

「・・・」

グレイはアリシアに対して反論しようと思ったが、今のアリシアには何を言っても聞かないと思い、行動で示すことにした。




「ちょっとだけ沁みるから我慢してね」

グレイがそう言うとアリシアの今だに血が流れ続ける左足に手を向ける。

「?何を?」

アリシアはグレイが不可解なことをしていることに驚き、早くここから離れてというのを忘れ尋ねる。

「いっ!?」

突然感じる痛みに思わず大きな声を出しかけてしまう。

「グレイさん!!」

アリシアは小声で怒るという器用なことをする。

「どう?まだ痛い?」

グレイはアリシアの言葉には答えず、別のことを尋ねた。

アリシアはグレイの言葉に毒気を抜かれながらも聞かれた通り左足の具合を確認する。

「・・・痛くありませんわ」

やはり、まだ夢の続きなのだろうか。

呪文の詠唱もなく簡単にあの傷を治してしまったのだ。

普通に考えてあり得ない。

アリシアは呆然としてしまう。

「次は左腕だね」

続けてグレイは何かをする。

少し冷静になったので今度はアリシアにも痛みが引いていくことを実感することが出来た。

「嘘・・・でしょう?」

アリシアにはもはや何がなんだか分からなかった。

尋常ではないことが起きている。

それだけは良く分かった。

「あとは・・・アリシアさん、今から口の中に回復薬を出すから驚かず飲んでね」

グレイが続けて声を掛ける。

(回復薬?口の中に出す??どういうことでしょうか??)

正直聞きたい言葉だらけだったが今は緊急事態。

アリシアは黙って頷く。

「ん!?」

グレイに頷いた瞬間、口の中に心地よい冷たさの液体が出現した。

アリシアは零さないようにしながら飲み干す。

(とても美味しいですわね)

まず感じたのは味であった。

(あれ?先程までの疲れも取れてますわ)

そして、疲労が取れていることに気がつく。

アリシアはこれなら立てるのではと考え、恐る恐る立ち上がると、

「・・・立ててしまいましたわ」

放って置いても死ぬ寸前だったにも関わらず、何事も無いように立ててしまったのだ。

「大丈夫そうだね。間にあって良かった」

グレイが安堵する。

「グレイさん。ありがとうございますわ」

アリシアが居間は非常時のため簡単に礼を言う。

この状態なら自分もグレイと一緒に逃げ出すとこができるかもしれない。

「早く、逃げましょう!?」

アリシアはグレイの手を取り出口に向かおうとする。

「・・・グレイさん。どういうおつもりですか?」

グレイはアリシアにはついて行かずに立ち止まったまま動かうとしなかった。

「アリシアさんごめん。もうこんなことが起きないようにここで決着をつける。俺は大丈夫だから先に戻ってて」

グレイはアリシアにそう答える。

「・・・」

アリシアはグレイの目をまっすぐ見たあと、黙って先程と同じ体勢に戻る。

「アリシアさん?何を??」

グレイはアリシアの行動の意味が分からず動揺する。

「私《わたくし》一人で逃げるわけありませんわ。グレイさんの勇姿をしっかりと見させて貰いますわ」

グレイの質問にアリシアははっきりと答える。

「えっ!?いや、駄目だって。早く動いて!!」

先程とは打って変わり明らかに慌てるグレイ。

「ふふふ。グレイさんは決着をつけてくださるのでしょう?なら、私《わたくし》がここに居ても何の問題もありませんわ」

アリシアがおかしそうに言う。

グレイがグレイ自身のことでは動揺しないにも関わらずアリシアのことでは凄く動揺する様が面白く、そして同時にとても嬉しかったからだ。

「大丈夫ですわ。私《わたくし》の怪我が治っていることは分かるはずがありませんからこの体勢でいればグレイさんより先に狙われることはありませんから。あ、そろそろ煙が晴れますわよ」

「・・・いざとなったら逃げてね」

グレイはアリシアを説得するのを諦め、背を向けて歩き出す。

言葉とは裏腹にグレイは負けてやるつもりは全く無かった。
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