他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第69話

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「グレイ君、興味深い意見をありがとう」

ゾルムがしばらくの間笑い続けた後、グレイに謝ってから真面目な顔でそう言った。

ちなみにアリシアやムスターもグレイに謝っていた。

「いえ、正直に話しただけですからお気になさらないでください」

グレイは真面目に答えただけなのになぜ笑われたのか未だに分からないまま返事をする。

そんな様子を見たゾルムはグレイに感心する。

(一体どうしてこんな性格の子が育つのか。本当に興味深い子だ。『罪を憎んで人を憎まず』・・・とでもいうのか、自分が落とし前を付けたんだからもう加害者には何の感情も抱かない。やろうと思っても中々できることじゃない)

一方、グレイとしては、

(もし俺が迷宮で死んでいたら、拉致した連中だけでなくそのナガリアという指図をした奴に対しても恨んでいただろう。結果論ではあるけど、今ではあの迷宮に行くことができて本当に良かったと思っている)

そこまで悲観したものでは無かったのだ。

迷宮に行ったからこそ、激レアアイテムの腕輪も手に入れることができた。さらに回復の泉も得ることができた。そして何よりもイズに会うことが出来たのだ。

生きて帰った今となっては得るものがとても多かったのだ。

(それに、もし迷宮に飛ばされていなかったら、あの黒ずくめの執事には勝てなかった)

グレイが拉致されて迷宮に飛ばされなかったら、さっきのようにアリシアを襲った黒ずくめの執事に勝てる訳が無かった。

あれは、相手が疲弊していたこともあるが、腕輪の力と回復の泉の力が無ければ手も足も出なかっただろう。

そして、イズが居なければ黒ずくめの執事に勝ったとしても、周りにいたナガリアの部下たちによってなすすべもなくやられていたに違いない。

もっともグレイが拉致されていなければゾルムが発起して国王に直談判に行くことは無かったかずっと先の話だったし、それによってナガリアが隠居させられバルム家に戦闘を仕掛けることもなくなっていただろう。まあ、そのような事情はグレイには知る由もなかったがこれは余談である。

(迷宮をクリアしたのも万に一つの奇跡だったし、今回アリシアさんを助けることができたのも奇跡のようなものだ・・・こんなに綱渡りで今後も大丈夫か俺・・・?)

思い返せば返すほど、自分が薄氷の上を歩いていることに気づかされるグレイ。

(・・・このままじゃだめだ。対策を考えないと)

グレイは落ち着いたら今の状況を打破するための方法を模索しようと決心した。

「ところでお父様。あの黒服の執事は何者だったのですか?とんでもない猛者でしたが・・・」

グレイが真剣な顔をして考え事をしているとアリシアが気になっていたもう一つのことをゾルムに尋ねた。

グレイもあの執事については知りたいと思っていたため、アリシアとゾルムのやり取りに集中する。

「・・・あの者か・・・」

ゾルムは一度そう呟いた後、

「あの者の名はザルス・キリー・・・伝説の暗殺者『闇朧《やみおぼろ》』だ」

「・・・驚きましたわ。ナガリアがそのような強力なカードを持っていたなんて・・・どうりで反則的な強さだった訳ですわ・・・」

アリシアはゾルムのその言葉で納得したように呟いた。



「あの・・・そんなに有名な人だったんですか?確かにとんでもない達人だとは思いましたが・・・」

話についていけないグレイがゾルムとアリシアの会話に混ざる。

「「・・・」」

グレイの言葉にゾルムとアリシアが顔を見合わせる。

「・・・そうか、グレイ君は平民だったな」

ゾルムがうっかりしていたとばかりに呟く。

アリシアがグレイの方を向き、

「グレイさん、『闇朧《やみおぼろ》』というのは貴族間では特に有名な暗殺者のことなのです」

「・・・貴族専門の暗殺者ということですか?」

「はい。とは言っても、もうかなり前の話で私《わたくし》も話を聞いていた位なのですが」

アリシアがゾルムの方をちらりと見る。

「・・・そうだ。当時はフリーの暗殺者でね。特殊なルートでしか依頼することができないが一度依頼することができればターゲットの死は確実。それこそ成功率は100%であるにもかかわらずその存在すらも謎に包まれていた。一方、二つ名だけは広まり『闇朧《やみおぼろ》』の名を聞いただけでどんな貴族でも恐怖に震えた。いつの間にか姿を消していたが・・・まさか、ナガリアの執事になっていたとは思いもよらなかった」

ゾルムがアリシアに続いて説明をする。

「・・・そんな相手だったのですね。アリシアさんが手傷を負わしていなかったら危うかったですね・・・」

グレイはほんの半日前の死闘を思い出しぞっとする。

ゾルムはその辺りの話まではナガリアから聞いていなかったのかアリシアを褒める。

「へぇ、アリシア。凄いじゃないか」

「いえ・・・偶然ですわ。正直死ぬところでしたから、刺し違えてもナガリアを倒そうとした結果、それを庇った闇朧《やみおぼろ》が手傷を負っただけですわ・・・」

アリシアもその時のことを思い出したのか、青ざめる。

「本当にグレイさんが駆けつけてくださって助かりましたわ」

と改めてグレイに礼を言う。

「私も偶々でしたが、何とかなって良かったです」

グレイもグレイで謙遜する。

「二人ともそう謙遜しなくても良い。アリシアの決死の行為があったから、そしてグレイ君の奮闘があればこそ最高の結果を引き出したんだ。誇ると良い」

「ありがとうございます。お父様」

「ありがとうございます。ゾルム様」

「とんでもない。むしろ私の不甲斐なさの所為で申し訳なかった」

ゾルムが謝る。むざむざとアリシアを攫われたことを言っているのだろう。

「お父様、老いたとは言え、相手はあの闇朧《やみおぼろ》だったのです。いくら対策していてもどうにもなりませんでしたわ。お気になさらないでください」

アリシアがゾルムに対してフォローをする。

「・・・そうは言ってもな・・・」

「もう済んだことですわ。気になさらないでください」

「・・・分かった。ありがとう」

アリシアの言葉にようやくゾルムは納得したかのように礼を言う。実際には無理やり納得させるための言葉だったのだろう。

「「「・・・」」」

しばらく沈黙がその場を支配する。

(・・・気まずいな)

グレイがその場の雰囲気に耐えられず、別の話題を振ることにする。

「アリシアさん。アリシアさんがここにいらっしゃったということは今は週末なのですか?正直なところ日付の感覚が無くて・・・」

アリシアもこの沈黙を何とかしたいと思っていたためグレイの質問に乗って答える。

「あ、そうでしたわね。今日は週末ではなく、平日です。正確には木曜日ですわ」

「・・・ということは、本当に緊急事態だったのですね」

(・・・アリシアさんが平日に自宅にいる理由はきっとナガリアとやらとの闘いが本格化したからなんだろう)

「・・・グレイ君は本当に察しがいいな。アリシアもグレイ君も明日もここにいなさい。というか、来週までここでゆっくりするといい。魔法学園には私の方から伝えておく。騎士が来るから事情聴取もあるだろうしね」

「畏まりましたわ」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」

「うん。さあ、二人とも今日はゆっくり休むといい」

夕食会はこうしてゾルムの言葉で締めくくられた。
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