他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第78話

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「うふふ、良かったですわ」

グレイが快諾してくれたことに喜ぶアリシア。

その笑顔は見惚れるほど可愛いかった。

「そ、それで、その台車には何が入っているの?」

グレイは話題を変えるためにアリシアが持ってきた台車について尋ねる。

「え?あ、そうでした。これはですね」

アリシアがグレイの問いかけに思い出したかのように台車の上にある白い布に手をかけながら、

「こういうものです」

そう言いながら白い布を取り去った。

「・・・教科書?」

グレイは台車に様々な科目の教科書が置いてあるのを認めて呟く。

「はい。グレイさんが宜しければひと月分の授業の内容をお教えしようかと思いまして」

アリシアがにっこりと微笑む。

「それは願ってもない。とても助かるけどアリシアさんは時間良いの?」

グレイは今更になって明々後日《しあさって》から学園に復帰することを意識し始めた。

「もちろんですわ。お教えすることで復習にもなりますし。私《わたくし》のためにもなりますわ」

アリシアがグレイが申し訳なく思わないように言葉を添える。

その事に気が付いたグレイが、

「ありがとうアリシアさん」

素直に礼を言う。

「ふふ、お気になさらないでよろしいですわ。早速始めましょう」

アリシアが教科書を取り出しグレイの前に置く。

『ほう。現代の教科書か。興味があるな』

今まで黙っていたイズがグレイの左肩から教科書を覗き込む。

「イズさんもお聞きになりますか?」

アリシアがひと月前の授業内容が記載してあるページを開きながら尋ねる。

イズは、ふむと呟いた後、

『今見ている教科書以外の内どれかを借りても良いか?』

「はい。もちろんですわ。どの教科書にされますか?」

『そうだな・・・まずは歴史についての教科書を貸してくれ』

イズの言葉にアリシアは台車の内から一つの教科書を取り、イズが見やすいようテーブルの上に置く。

「どうぞご覧になってください。グレイさんのために使うときにはお貸しくださいね」

『ありがとう。ああ分かった。・・・』

イズはアリシアに返事をした後、黙々と教科書を読んでいく。

「・・・器用だな」

グレイはイズが教科書を嘴を上手く使ってページを捲っているのを見ながら感心する。

アリシアもその様子を見て、

「そうですわね。・・・さぁ、グレイさん始めますわよ」

同意した後、グレイに向かって宣言する。

「はい。よろしくお願いいたします」

グレイはアリシアに御礼を言い、アリシアの授業に耳を傾ける。

(・・・今朝の魔法といい、今の勉強といい、アリシアさんに教えて貰ってばかりだな。いつか、俺もアリシアさんに何かを教えられるようにしたいな)

グレイはアリシアに教えて貰ってばかりの自分が少し情けないと思う。

一方、アリシアは、

(グレイさんにものを教えられて嬉しいですわ。何度も助けて頂いたのですから少しでもお役に立てて何よりです)

グレイにものを教えられて心の底から喜んでいた。



「アリシアさん、勉強を教えてくれてありがとうございました」

グレイがアリシアに頭を下げながら御礼を言う。

時刻は既に夜、お昼前から始めていたので既にかなりの時間が過ぎていた。

昼食や夕食の間は食堂で食べたが、それ以外はアリシアによる授業で殆どの時間を使っていた。

「とんでもないですわ。これで、ひと月分の内容はおおよそ網羅でききたはずです。後は、魔法学園に復帰なさってから分からないところがございましたら遠慮なくお声掛けくださいね」

アリシアがにっこりと言う。

「うん。ありがとう。その時はよろしく頼むね」

グレイが普段通りの言葉遣いに戻しながら言う。

「では、明日は7時過ぎには参りましょう」

アリシアが明日の集合時間を告げる。

グレイは頷くと、

「分かった。朝の7時だね」

「はい。おやすみなさいグレイさん」

「おやすみ、アリシアさん」

アリシアとグレイは寝る前の挨拶を交わす。

「イズさんもおやすみなさい」

『ああ。おやすみアリシア』

そしてアリシアはイズにも挨拶をするとグレイの客室から離れていった。

『・・・中々のスパルタだったな』

グレイが客室の扉を閉めたタイミングを見計らってイズが呟く。

食事以外はほぼノンストップで授業を教えていたのだ。

イズがそう言うのも分かる。

「そう?アリシアさんの教え方が上手くて全然気にならなかった」

一方、当事者のグレイの意見はイズとは異なり、全くもって苦だとは思っていなかった。

グレイの言葉を聞いたイズは、

『ふむ・・・これが惚れた弱みというやつか』

手持無沙汰な間に読んでいた言語学の教科書から学んだ言葉を呟く。

「ん?なんか言った?」

『いや。何でもない』

どうやらイズの呟きが小さ過ぎてグレイには聞こえなかったようだ。

別段、もう一度言う必要もない他愛の無い呟きだったのでイズは二度目を言うのはやめておく。

「ふわーあ。イズには悪いけど寝ちゃうね」

グレイがあくびをした後、ベッドに向かいながら呟く。

『ああ。お疲れさん』

「ありがとう。・・・おやすみイズ」

グレイはベッドに入ると直ぐにうとうとし始める。

『ああ。おやすみグレイ』

「・・・」

イズの言葉が聞こえたのかどうかグレイは直ぐに夢の世界の住人になってしまった。

イズはしばらくの間、グレイの寝顔を見た後、パタパタと飛んでいき、客室の明かりを消してやる。

『明日は、6時頃に起こせばいいか』

と時計を見て呟き、アリシアが持ってきた台車に向かう。

睡眠の必要ないイズがアリシアに『教科書を置いていって欲しい』と頼んだのである。

『これでグレイが寝ている間の時間潰し位になるだろう』

台車の中から適当に教科書を取ったイズが月明かりが射す窓際に向かい教科書を置くとゆっくりと読み始める。

『・・・今夜は良いが、月明かりが無い夜のために対策を考えておかないといかんな』

イズがぽつりと呟いた。
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