他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第155話

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「なるほど・・・な」

ゾルムは手紙を読み終えるとムスターにも手渡す。

「私も見て構わないのですか?」

ムスターは念のため、ゾルムに確認すると、

「ああ。説明するより読んでもらった方が早い」

頷きながら答える。

「では、失礼致します」

ムスターは断りを入れた後、手紙の内容を読み進める。

しばらくして、読み終えると手紙をゾルムに戻す。

「それで・・・どう思った?」

ゾルムはムスターに意見を求める。

「そうですね・・・正直、何が何やら分かりかねますね・・・」

ムスターはゾルムの問いかけに素直に答える。

「そうだな・・・今度会った時にきちんと確認しないといけないが、ひとまず『バルム家に門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法があるのか』と尋ねられたら動揺せぬように答えるようにしよう」

ゾルムはアリシアのお願いの要点を呟く。

「畏まりました」

ムスターも異論があるわけではないため、了承の意を示す。

「すまないが、しばらく休ませてもらうぞ」

ゾルムが部屋の奥にある仮眠室に向かいながら、ムスターにそう告げる。

「では、昼食のころにまた参ります」

「ああ。頼んだ」

ゾルムはムスターにそう言うと仮眠室に向かう。

仮眠用のベッドに横になると、目をつむり、眠るまでの間、アリシアの手紙の内容を思い浮かべる。

(バスター家の娘が不治の病ということは知っていたが、まさかそれが【魔力過大病】だったとはな・・・)

貴族というのはとかく、自分の家の弱みになるようなことは秘匿とすることが多い。

そのため、病名までは知られていなかった。

(そして何よりもアリシアの言葉が『【魔力過大病】をバルム家に伝わる門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法で治しましたのでご報告致します』・・・とはな)

ゾルムには正直、何のことだが良く分からなかった。

(まぁ、聡明なアリシアの事だ。もし万が一あの手紙を誰かに読まれた場合を想定して直接的には書かなかったのだろうな)

もし、アリシアがバルム家に伝わる魔法があるという事に口裏を合わせてくださいと記した場合、万が一、第三者が読んだ時に嘘だとバレてしまうことを考慮したのだろう。

(それにしても一体どうやって【魔力過大病】を治したというのか・・・。真実を隠そうとしているくらいだ。きっと大きなことが潜んでいるに違いない)

ゾルムはそう考え、大方の目星はついていた。

(きっと、グレイ君を庇っているのだろうな・・・そういえばあの時もそうだった)

ゾルムは先週に起こったナガリアとの一戦のときを思い出す。

グレイに連れられて戻ってきたアリシアの服はボロボロだった。

そして、血で汚れていたにも関わらず、アリシア自身の傷もものの見事に回復していた。

あの時はアリシアが自分の魔法で治したのだとばっかり思っていたのだが・・・

(おそらく、グレイ君がいなくなっていたこの一か月の間で何かがあったのだろうな・・・)

ゾルムはそこまで考えた頃、深い眠りについたのだった。
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