156 / 488
第155話
しおりを挟む
「なるほど・・・な」
ゾルムは手紙を読み終えるとムスターにも手渡す。
「私も見て構わないのですか?」
ムスターは念のため、ゾルムに確認すると、
「ああ。説明するより読んでもらった方が早い」
頷きながら答える。
「では、失礼致します」
ムスターは断りを入れた後、手紙の内容を読み進める。
しばらくして、読み終えると手紙をゾルムに戻す。
「それで・・・どう思った?」
ゾルムはムスターに意見を求める。
「そうですね・・・正直、何が何やら分かりかねますね・・・」
ムスターはゾルムの問いかけに素直に答える。
「そうだな・・・今度会った時にきちんと確認しないといけないが、ひとまず『バルム家に門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法があるのか』と尋ねられたら動揺せぬように答えるようにしよう」
ゾルムはアリシアのお願いの要点を呟く。
「畏まりました」
ムスターも異論があるわけではないため、了承の意を示す。
「すまないが、しばらく休ませてもらうぞ」
ゾルムが部屋の奥にある仮眠室に向かいながら、ムスターにそう告げる。
「では、昼食のころにまた参ります」
「ああ。頼んだ」
ゾルムはムスターにそう言うと仮眠室に向かう。
仮眠用のベッドに横になると、目をつむり、眠るまでの間、アリシアの手紙の内容を思い浮かべる。
(バスター家の娘が不治の病ということは知っていたが、まさかそれが【魔力過大病】だったとはな・・・)
貴族というのはとかく、自分の家の弱みになるようなことは秘匿とすることが多い。
そのため、病名までは知られていなかった。
(そして何よりもアリシアの言葉が『【魔力過大病】をバルム家に伝わる門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法で治しましたのでご報告致します』・・・とはな)
ゾルムには正直、何のことだが良く分からなかった。
(まぁ、聡明なアリシアの事だ。もし万が一あの手紙を誰かに読まれた場合を想定して直接的には書かなかったのだろうな)
もし、アリシアがバルム家に伝わる魔法があるという事に口裏を合わせてくださいと記した場合、万が一、第三者が読んだ時に嘘だとバレてしまうことを考慮したのだろう。
(それにしても一体どうやって【魔力過大病】を治したというのか・・・。真実を隠そうとしているくらいだ。きっと大きなことが潜んでいるに違いない)
ゾルムはそう考え、大方の目星はついていた。
(きっと、グレイ君を庇っているのだろうな・・・そういえばあの時もそうだった)
ゾルムは先週に起こったナガリアとの一戦のときを思い出す。
グレイに連れられて戻ってきたアリシアの服はボロボロだった。
そして、血で汚れていたにも関わらず、アリシア自身の傷もものの見事に回復していた。
あの時はアリシアが自分の魔法で治したのだとばっかり思っていたのだが・・・
(おそらく、グレイ君がいなくなっていたこの一か月の間で何かがあったのだろうな・・・)
ゾルムはそこまで考えた頃、深い眠りについたのだった。
ゾルムは手紙を読み終えるとムスターにも手渡す。
「私も見て構わないのですか?」
ムスターは念のため、ゾルムに確認すると、
「ああ。説明するより読んでもらった方が早い」
頷きながら答える。
「では、失礼致します」
ムスターは断りを入れた後、手紙の内容を読み進める。
しばらくして、読み終えると手紙をゾルムに戻す。
「それで・・・どう思った?」
ゾルムはムスターに意見を求める。
「そうですね・・・正直、何が何やら分かりかねますね・・・」
ムスターはゾルムの問いかけに素直に答える。
「そうだな・・・今度会った時にきちんと確認しないといけないが、ひとまず『バルム家に門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法があるのか』と尋ねられたら動揺せぬように答えるようにしよう」
ゾルムはアリシアのお願いの要点を呟く。
「畏まりました」
ムスターも異論があるわけではないため、了承の意を示す。
「すまないが、しばらく休ませてもらうぞ」
ゾルムが部屋の奥にある仮眠室に向かいながら、ムスターにそう告げる。
「では、昼食のころにまた参ります」
「ああ。頼んだ」
ゾルムはムスターにそう言うと仮眠室に向かう。
仮眠用のベッドに横になると、目をつむり、眠るまでの間、アリシアの手紙の内容を思い浮かべる。
(バスター家の娘が不治の病ということは知っていたが、まさかそれが【魔力過大病】だったとはな・・・)
貴族というのはとかく、自分の家の弱みになるようなことは秘匿とすることが多い。
そのため、病名までは知られていなかった。
(そして何よりもアリシアの言葉が『【魔力過大病】をバルム家に伝わる門外不出かつ一度しか使えない特別な魔法で治しましたのでご報告致します』・・・とはな)
ゾルムには正直、何のことだが良く分からなかった。
(まぁ、聡明なアリシアの事だ。もし万が一あの手紙を誰かに読まれた場合を想定して直接的には書かなかったのだろうな)
もし、アリシアがバルム家に伝わる魔法があるという事に口裏を合わせてくださいと記した場合、万が一、第三者が読んだ時に嘘だとバレてしまうことを考慮したのだろう。
(それにしても一体どうやって【魔力過大病】を治したというのか・・・。真実を隠そうとしているくらいだ。きっと大きなことが潜んでいるに違いない)
ゾルムはそう考え、大方の目星はついていた。
(きっと、グレイ君を庇っているのだろうな・・・そういえばあの時もそうだった)
ゾルムは先週に起こったナガリアとの一戦のときを思い出す。
グレイに連れられて戻ってきたアリシアの服はボロボロだった。
そして、血で汚れていたにも関わらず、アリシア自身の傷もものの見事に回復していた。
あの時はアリシアが自分の魔法で治したのだとばっかり思っていたのだが・・・
(おそらく、グレイ君がいなくなっていたこの一か月の間で何かがあったのだろうな・・・)
ゾルムはそこまで考えた頃、深い眠りについたのだった。
160
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる