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第203話
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ゾルムの部屋を出たアリシアとグレイは最近ではグレイ専用の部屋となりつつある客室に向かって歩いて行く。
「・・・」
「・・・」
二人の間には沈黙が流れ、足音だけが響く。
アリシアはグレイの少し前を歩いているため、グレイにはアリシアの表情が見えない。
(・・・機嫌悪くしちゃったかな)
グレイは心当たりを思い浮かべる。
(流石にゾルム様の言葉に対してあの返しは良くなかったかな)
あれでは分不相応な平民の自分がアリシアを欲しているみたいにアリシアが受けとってもおかしくはない。
(いやいや、それ自体は間違ってないんだけど、流石に平民の俺がってなるよね・・・それに、いきなり妻になんて絶対無理だしな)
グレイは何とも気まずい様子でアリシアの後に続く他なかった。
一方、アリシアの方はというと、
(グレイったら私《わたくし》の事を妻に欲しいという時の事を前向きに捉えてましたわっ!!)
顔を真っ赤にして悶えていた。
アリシアは照れくさすぎてグレイの方を向くことが出来なかったのだ。
まさかこの時、グレイが同じやり取りを思い浮かべながらもアリシアに対して申し訳なさを感じていたとは全く気付いていなかった。
グレイもアリシアの後ろからでも見える赤くなった耳を見ていればアリシアが機嫌を悪くしている訳では無いことに気づけたのだが今のグレイには気づくこともできない。
もしこの場にイズがいれば呆れた溜息をつきながらも二人の間を取り持っただろうが残念ながらこの場にはいない。
(ま、まずは恋人からですわよね)
そんな中、アリシアの妄想だけが続いていく。
(・・・ああ、でも駄目でしたわね。グレイはまだ平民ですもの)
アリシアは3大貴族の長女である。
流石に、平民と恋仲になるのは体面的にも到底認められないものである。
そのため、アリシアがグレイと一緒に居るためにとった行動がグレイを自分の『付き人』にするというものであった。
通常は嫡子以外の貴族の中から選ぶのだが、平民であっても『付き人』であればかろうじて認められる。
身分差ということに改めて思い至ったアリシアは少しだけ冷静になるころ、グレイを案内する予定の客室に到着していた。
「・・・グレイ、着きましたわ」
アリシアがグレイの方を向きながら、平静を装って到着を告げると、グレイがあからさまにビクッと体を震わせ、
「アリシア様、ありがとうございます」
思わず敬語になる。
ようやくグレイの様子がおかしいことに気が付いたアリシアは、
(変ですわね。グレイが私《わたくし》に萎縮するなんて・・・あっ)
ゾルムの部屋から出てからの自分の行動を客観的に思い返しグレイが勘違いしていることに気が付く。
(私《わたくし》のあの態度では怒っているとグレイが思っても無理はありませんわね)
一瞬もっとグレイを困らせてみたいという欲求に駆られたが流石に可哀想と思い直したアリシアはグレイに向かって、
「ふふふ、そんなに畏まらないで良いですわ。怒ってなどおりませんよ」
安心させるように言う。
「ほ、本当?」
グレイは少し警戒しながらもアリシアに尋ねる。
「ええ、もちろんですわ」
アリシアは実際に怒っている訳ではないため笑顔で肯定する。
グレイはアリシアの様子にほっとすると、
「ふぅ、良かった。少し調子に乗っちゃったかと思って後悔していたんだよね」
安堵する。
アリシアはそのグレイの様子を見て、少しだけ意地悪をしたくなった。
「へぇ、グレイはどんな行動が調子に乗ったと思ったのですか?」
「うっ・・・それは・・・その・・・」
「その?」
「・・・ゾルム様のアリシアを妻にという言葉に分不相応にも前向きなことを言っちゃったから・・・」
グレイがアリシアの追及に耐えられず、声を小さくしながら答える。
アリシアはグレイの気持ちをもう少しはっきりさせたくなって更に尋ねる。
「グレイはお父様への言葉に後悔しているのですか?」
すると、グレイは先ほどまでの態度を変え、真っ直ぐに堂々とアリシアを見ると、
「いや、それはない。前にも言ったけど俺はアリシアに惹かれているから・・・妻に貰うとか夫婦になるとかはまだイメージできないけど、少なくとも俺はアリシアともっと一緒に居たいと思っている」
「っ!?」
まさか面と向かってこう返されると思っていなかったアリシアが今度は動揺する。
(うう・・・そうでしたわ。グレイは偶に恥ずかしいことを堂々と言える方でした)
アリシアは以前ゾルムがグレイにアリシアのどこに惹かれたのかを聞いた時の様子を思い出しながら内心で呟く。
(私《わたくし》も自分の気持ちの一部でもお伝えするべきですわね)
以前、ぽつりとグレイに向かって自分も惹かれていると言ったことがあるが声が小さすぎてグレイには届かなかったことがあった。
アリシアは覚悟を決めるとグレイに向かって、
「グレイ、ありがとうございます。今は色々としがらみがあるため多くは言えませんが私《わたくし》もグレイともっと一緒に居たいという気持ちは同じですわ」
(今はまだ、これが精一杯。ですが、いつかしっかりと伝えたいですわ)
グレイは、アリシアの言葉に驚いた後、とても嬉しそうに、
「ありがとう」
と返事をしたのであった。
「・・・」
「・・・」
二人の間には沈黙が流れ、足音だけが響く。
アリシアはグレイの少し前を歩いているため、グレイにはアリシアの表情が見えない。
(・・・機嫌悪くしちゃったかな)
グレイは心当たりを思い浮かべる。
(流石にゾルム様の言葉に対してあの返しは良くなかったかな)
あれでは分不相応な平民の自分がアリシアを欲しているみたいにアリシアが受けとってもおかしくはない。
(いやいや、それ自体は間違ってないんだけど、流石に平民の俺がってなるよね・・・それに、いきなり妻になんて絶対無理だしな)
グレイは何とも気まずい様子でアリシアの後に続く他なかった。
一方、アリシアの方はというと、
(グレイったら私《わたくし》の事を妻に欲しいという時の事を前向きに捉えてましたわっ!!)
顔を真っ赤にして悶えていた。
アリシアは照れくさすぎてグレイの方を向くことが出来なかったのだ。
まさかこの時、グレイが同じやり取りを思い浮かべながらもアリシアに対して申し訳なさを感じていたとは全く気付いていなかった。
グレイもアリシアの後ろからでも見える赤くなった耳を見ていればアリシアが機嫌を悪くしている訳では無いことに気づけたのだが今のグレイには気づくこともできない。
もしこの場にイズがいれば呆れた溜息をつきながらも二人の間を取り持っただろうが残念ながらこの場にはいない。
(ま、まずは恋人からですわよね)
そんな中、アリシアの妄想だけが続いていく。
(・・・ああ、でも駄目でしたわね。グレイはまだ平民ですもの)
アリシアは3大貴族の長女である。
流石に、平民と恋仲になるのは体面的にも到底認められないものである。
そのため、アリシアがグレイと一緒に居るためにとった行動がグレイを自分の『付き人』にするというものであった。
通常は嫡子以外の貴族の中から選ぶのだが、平民であっても『付き人』であればかろうじて認められる。
身分差ということに改めて思い至ったアリシアは少しだけ冷静になるころ、グレイを案内する予定の客室に到着していた。
「・・・グレイ、着きましたわ」
アリシアがグレイの方を向きながら、平静を装って到着を告げると、グレイがあからさまにビクッと体を震わせ、
「アリシア様、ありがとうございます」
思わず敬語になる。
ようやくグレイの様子がおかしいことに気が付いたアリシアは、
(変ですわね。グレイが私《わたくし》に萎縮するなんて・・・あっ)
ゾルムの部屋から出てからの自分の行動を客観的に思い返しグレイが勘違いしていることに気が付く。
(私《わたくし》のあの態度では怒っているとグレイが思っても無理はありませんわね)
一瞬もっとグレイを困らせてみたいという欲求に駆られたが流石に可哀想と思い直したアリシアはグレイに向かって、
「ふふふ、そんなに畏まらないで良いですわ。怒ってなどおりませんよ」
安心させるように言う。
「ほ、本当?」
グレイは少し警戒しながらもアリシアに尋ねる。
「ええ、もちろんですわ」
アリシアは実際に怒っている訳ではないため笑顔で肯定する。
グレイはアリシアの様子にほっとすると、
「ふぅ、良かった。少し調子に乗っちゃったかと思って後悔していたんだよね」
安堵する。
アリシアはそのグレイの様子を見て、少しだけ意地悪をしたくなった。
「へぇ、グレイはどんな行動が調子に乗ったと思ったのですか?」
「うっ・・・それは・・・その・・・」
「その?」
「・・・ゾルム様のアリシアを妻にという言葉に分不相応にも前向きなことを言っちゃったから・・・」
グレイがアリシアの追及に耐えられず、声を小さくしながら答える。
アリシアはグレイの気持ちをもう少しはっきりさせたくなって更に尋ねる。
「グレイはお父様への言葉に後悔しているのですか?」
すると、グレイは先ほどまでの態度を変え、真っ直ぐに堂々とアリシアを見ると、
「いや、それはない。前にも言ったけど俺はアリシアに惹かれているから・・・妻に貰うとか夫婦になるとかはまだイメージできないけど、少なくとも俺はアリシアともっと一緒に居たいと思っている」
「っ!?」
まさか面と向かってこう返されると思っていなかったアリシアが今度は動揺する。
(うう・・・そうでしたわ。グレイは偶に恥ずかしいことを堂々と言える方でした)
アリシアは以前ゾルムがグレイにアリシアのどこに惹かれたのかを聞いた時の様子を思い出しながら内心で呟く。
(私《わたくし》も自分の気持ちの一部でもお伝えするべきですわね)
以前、ぽつりとグレイに向かって自分も惹かれていると言ったことがあるが声が小さすぎてグレイには届かなかったことがあった。
アリシアは覚悟を決めるとグレイに向かって、
「グレイ、ありがとうございます。今は色々としがらみがあるため多くは言えませんが私《わたくし》もグレイともっと一緒に居たいという気持ちは同じですわ」
(今はまだ、これが精一杯。ですが、いつかしっかりと伝えたいですわ)
グレイは、アリシアの言葉に驚いた後、とても嬉しそうに、
「ありがとう」
と返事をしたのであった。
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