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第207話
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「ふぅ」
ボフン
グレイは客室に入るとひとまずベッドに俯せのまま倒れ込む。
いくら慣れてきたとはいえ、今いる場所は3大貴族であるバルム家の屋敷なのだ。どうしたって緊張する。
グレイはそのまま仰向けになる。
(ひとまずゾルム様が口裏を合わせてくれるようで良かった)
思い出すのはこの屋敷に到着した時のやり取りである。
正直なところゾルムが口裏を合わせてくれなかった場合、厄介なことになっていただろう。
(・・・だが、それでも完全ではない・・・)
グレイは想像する。
不治の病が治ったユーマリアがバスター家から出るようになれば、経緯《いきさつ》を知ろうとする者は少なくないはずである。
もしそうなれば、アリシアまで辿り着く者もいるだろう。
いくらかはゾルムが口裏を合わせることで何とかなるだろうが本当に一度しか出来ない事なのかを勘ぐる者も中にはいるに違いない。
幸いにもアリシアはバルム家の人間なので強硬な手段はまず取らない者が多いだろうが、ナガリアという前例がある。
用心に越したことは無いだろう。
(アリシアのことだ。きっとその事も考えた上での行動なんだろうな・・・)
グレイはアリシアに申し訳ない気持ちで一杯になる。
(いざとなったら、【エリクサー】の事を暴露しよう)
アリシアの身に危険が迫るような事態になるのであれば、グレイは【エリクサー】の事を隠す気なんて更々なかった。
グレイはいざという時の覚悟を固め、このことに関してはこれ以上深くは考えないようにする。
次に考えるのは、この後のゾルムとの話についてだ。
「・・・それにしても一体ゾルム様は何を話すおつもりなのだろう・・・」
グレイはそう呟くと瞼が重くなるのを感じた。
何だかんだで朝からの移動と緊張感から疲れていた。
やがて、グレイはそのまま眠りについたのであった。
「・・・おかしいですわね」
アリシアは14時50分きっかりにグレイのいる客室の前に到着した後、呟く。
グレイは基本的に待ち合わせの10分前には集合しているタイプの人間だ。
人を待つのは良いが待たせるのは嫌う。
流石に今回は自分のいる部屋の前なので10分前ということはしないだろうが、時間きっかりになってもいないというのはグレイらしくなかった。
「・・・あと、3分だけ待ってみましょう」
どうせゾルムの部屋までの移動は3~4分で済むのだ。
3分くらい待ったとしても全く問題はない。
(ふふふ、私《わたくし》がグレイを待つという経験はあまりできませんからね。この3分間を楽しませて貰いましょう)
何せアリシアが早めに待ち合わせに到着したとしても必ずグレイは既に到着しているのだ。
このような状況は滅多にない。
・・・あの日を除いて
(流石に、この状況で拉致される何てことはありませんわよね・・・)
アリシアはひと月と少し前のことを思い出し、ほんのわずかに不安になる。
思わず、時計を見ると時刻は14時53分になっていた。
(・・・突撃ですわ)
アリシアはグレイのいる客室に入ることを決意しまずは扉をノックする。
コンコンコン
「グレイ?いますか?」
アリシアが声を掛けるがグレイからの返事は無い。
「入りますわよ」
アリシアは一声掛けると扉を開ける。
スー
鍵はかかっておらず扉はすんなりと開いた。
「・・・」
アリシアは無言のまま、客室の中に入る。
(・・・何でしょう。やましいことは何もしていないのですが、ドキドキしますわ)
アリシアは自分の屋敷でこのような気持ちになるとは思いもよらなかった。
緊張しながら、客室の中に入っていくとグレイを直ぐに見つけることが出来た。
「あら・・・ふふふ、グレイったら疲れていたのですね」
アリシアはグレイがベッドで寝てしまっている姿を目撃し、微笑みを浮かべる。
「これは、お父様に言って時間をずらして頂かないとですわね」
アリシアはそう呟くと、グレイのいる部屋をそっと出て行く。
真っ直ぐにゾルムのいる部屋に辿り着くと、延期して貰うことを告げる。
事情を聞いたゾルムは、
「グレイ君もこの1~2か月で色々あったからな。来れる時間になってからで良いさ。別に明日でも良いしね」
と快く頷いた。
礼を言って部屋を出たアリシアは、
「延期と言ってもいつグレイが目覚めるか分かりませんので仕方がありませんわよね?」
まるで自分に対する言い訳のように呟くと、心持ち嬉しそうに歩みを早めた。
「う・・・」
グレイはしばらくしてから目を覚ます。
どうやら寝てしまっていたようだ。
グレイは眠そうに目を開けるとまず時計を見る。
「時間は、16時・・・20分!?まずい、アリシアやゾルム様を待たせてしまった!!」
寝坊したことに気づいたグレイは直ぐに覚醒すると慌てて飛び起きる。
すると、視界の端で誰かが動いたのに気が付く。
グレイがそちらの方に目を向けると、そこにはテーブルの席に座って紅茶を上品に飲んでいるアリシアがいた。
「え?・・・え??」
グレイは状況が読めず、テンパる。
アリシアは、そんなグレイを楽しそうに見ながらこう言った。
「ごきげんようグレイ。よく眠れましたか?」
ボフン
グレイは客室に入るとひとまずベッドに俯せのまま倒れ込む。
いくら慣れてきたとはいえ、今いる場所は3大貴族であるバルム家の屋敷なのだ。どうしたって緊張する。
グレイはそのまま仰向けになる。
(ひとまずゾルム様が口裏を合わせてくれるようで良かった)
思い出すのはこの屋敷に到着した時のやり取りである。
正直なところゾルムが口裏を合わせてくれなかった場合、厄介なことになっていただろう。
(・・・だが、それでも完全ではない・・・)
グレイは想像する。
不治の病が治ったユーマリアがバスター家から出るようになれば、経緯《いきさつ》を知ろうとする者は少なくないはずである。
もしそうなれば、アリシアまで辿り着く者もいるだろう。
いくらかはゾルムが口裏を合わせることで何とかなるだろうが本当に一度しか出来ない事なのかを勘ぐる者も中にはいるに違いない。
幸いにもアリシアはバルム家の人間なので強硬な手段はまず取らない者が多いだろうが、ナガリアという前例がある。
用心に越したことは無いだろう。
(アリシアのことだ。きっとその事も考えた上での行動なんだろうな・・・)
グレイはアリシアに申し訳ない気持ちで一杯になる。
(いざとなったら、【エリクサー】の事を暴露しよう)
アリシアの身に危険が迫るような事態になるのであれば、グレイは【エリクサー】の事を隠す気なんて更々なかった。
グレイはいざという時の覚悟を固め、このことに関してはこれ以上深くは考えないようにする。
次に考えるのは、この後のゾルムとの話についてだ。
「・・・それにしても一体ゾルム様は何を話すおつもりなのだろう・・・」
グレイはそう呟くと瞼が重くなるのを感じた。
何だかんだで朝からの移動と緊張感から疲れていた。
やがて、グレイはそのまま眠りについたのであった。
「・・・おかしいですわね」
アリシアは14時50分きっかりにグレイのいる客室の前に到着した後、呟く。
グレイは基本的に待ち合わせの10分前には集合しているタイプの人間だ。
人を待つのは良いが待たせるのは嫌う。
流石に今回は自分のいる部屋の前なので10分前ということはしないだろうが、時間きっかりになってもいないというのはグレイらしくなかった。
「・・・あと、3分だけ待ってみましょう」
どうせゾルムの部屋までの移動は3~4分で済むのだ。
3分くらい待ったとしても全く問題はない。
(ふふふ、私《わたくし》がグレイを待つという経験はあまりできませんからね。この3分間を楽しませて貰いましょう)
何せアリシアが早めに待ち合わせに到着したとしても必ずグレイは既に到着しているのだ。
このような状況は滅多にない。
・・・あの日を除いて
(流石に、この状況で拉致される何てことはありませんわよね・・・)
アリシアはひと月と少し前のことを思い出し、ほんのわずかに不安になる。
思わず、時計を見ると時刻は14時53分になっていた。
(・・・突撃ですわ)
アリシアはグレイのいる客室に入ることを決意しまずは扉をノックする。
コンコンコン
「グレイ?いますか?」
アリシアが声を掛けるがグレイからの返事は無い。
「入りますわよ」
アリシアは一声掛けると扉を開ける。
スー
鍵はかかっておらず扉はすんなりと開いた。
「・・・」
アリシアは無言のまま、客室の中に入る。
(・・・何でしょう。やましいことは何もしていないのですが、ドキドキしますわ)
アリシアは自分の屋敷でこのような気持ちになるとは思いもよらなかった。
緊張しながら、客室の中に入っていくとグレイを直ぐに見つけることが出来た。
「あら・・・ふふふ、グレイったら疲れていたのですね」
アリシアはグレイがベッドで寝てしまっている姿を目撃し、微笑みを浮かべる。
「これは、お父様に言って時間をずらして頂かないとですわね」
アリシアはそう呟くと、グレイのいる部屋をそっと出て行く。
真っ直ぐにゾルムのいる部屋に辿り着くと、延期して貰うことを告げる。
事情を聞いたゾルムは、
「グレイ君もこの1~2か月で色々あったからな。来れる時間になってからで良いさ。別に明日でも良いしね」
と快く頷いた。
礼を言って部屋を出たアリシアは、
「延期と言ってもいつグレイが目覚めるか分かりませんので仕方がありませんわよね?」
まるで自分に対する言い訳のように呟くと、心持ち嬉しそうに歩みを早めた。
「う・・・」
グレイはしばらくしてから目を覚ます。
どうやら寝てしまっていたようだ。
グレイは眠そうに目を開けるとまず時計を見る。
「時間は、16時・・・20分!?まずい、アリシアやゾルム様を待たせてしまった!!」
寝坊したことに気づいたグレイは直ぐに覚醒すると慌てて飛び起きる。
すると、視界の端で誰かが動いたのに気が付く。
グレイがそちらの方に目を向けると、そこにはテーブルの席に座って紅茶を上品に飲んでいるアリシアがいた。
「え?・・・え??」
グレイは状況が読めず、テンパる。
アリシアは、そんなグレイを楽しそうに見ながらこう言った。
「ごきげんようグレイ。よく眠れましたか?」
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