他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

文字の大きさ
213 / 488

第212話

しおりを挟む
『ふぅー、やはり風呂は最高だったな』

イズは風呂上がりに部屋に戻るや幸せそうに呟く。

「ああ。そうだな」

普段シャワーだけのグレイもイズの様子に笑顔になりながら同意する。

「あれ?そう言えば地図は見たっけ?」

グレイは部屋に置いたままにしていた筒を見てイズに尋ねる。

『ああ、グレイが考え事をしている間に見させて貰ったぞ』

「・・・そっか」

イズの言葉を聞いたグレイは「全然気づかなかった」と呟きながら腕輪の力で筒ごと地図をしまう。

『グレイ、すまんが水をくれないか?』

イズはグレイの様子を見ながらそうお願いをする。

「分かった」

グレイはコップを2つ出し、そこに【エリクサー】を注ぐ。

『ふぅ・・・やはり、風呂上がりにこれは格別だな』

イズは器用に【エリクサー】を一口飲むと幸せそうに呟く。

その様子を見ながらグレイは一気飲みをしていた。

「ぷはぁ~。最高だな」

グレイは飲み干した後、気持ち良さそうに呟く。

【エリクサー】は冷たくて美味しく体も癒やす。それでいて空腹の時にはそれすら満たしてくれるというまさに優れものである。

「イズの中ではこれが水代わりだったんだっけ?」

グレイは自分たちが何とも贅沢な使い方をしていると思いながらイズに尋ねる。

『ああ。そうだな。飲みすぎて害になることも無いから安心していい』

「・・・何度聞いても信じられない。当時の人たちはほとんどが水代わりにしていたんだろ?とんでもない時代だったんだな・・・」

グレイはイズが迷宮の主になった時代のことを考えながら呟く。

『そうだな。だから寿命以外で死ぬことは殆どなかったはずだ。それがいつの間にか滅んでいるとはな・・・』

イズが少しだけ寂しそうに呟く。

「・・・ごめん」

『いや・・・気にしないで良い。今はいつになく楽しいしな』

イズは申し訳無さそうにしているグレイに向かって気にしないようにと笑顔で応える。

「そっか、それなら良かった。ところで今日は楽しかったか?」

グレイはホッとしながらイズに尋ねる。

『ああ。アリシアの妹弟と遊ぶのは中々有意義だったぞ』

イズが嬉しそうに答えるのを見てグレイはちらっと見た遊びの内容を思い出しながら安心する。

(良かった。この様子ならイズが嫌々やっていたわけでは無さそうだ)

『ところでさっきの話の続きだが、この国の王に会うのだろ?どんな人物なんだ?』

イズが話題を変え、興味深そうに尋ねる。

「そうだな・・・俺も噂しか知らないけど今の国王様は名君と言われていて良い評判しか聞かないな」

『ほう。それは素晴らしいな』

「ああ。もうイズも本を見て知っているかもしれないが、この国・・・シルド王国は元々かなり小さな国だったんだが、歴代の国王様が段々と領地を増やし、大国になったと言われている。現在の国王様は29代目の国王様で名前をサンロード・セト・シルド様と仰るんだ」

グレイがイズに国王についての説明を簡単に行う。

『ふむ。確か、シルド王国は建国してから1700年近く経っているのだったな』

イズが夜な夜な本を読んで得た知識からシルド王国の事を思い出しながら呟く。

「ああ。正確には今年で1712年目だな。シルド歴1712年という言い方をする」

『ほう。ということは、他の国には他の国なりの言い方があるのか?』

グレイの説明に気になったイズが尋ねる。

「ああ。良くは知らないが、シルド王国の周りには大国がいくつかあるらしい。詳しい内容に関しては5年生になってから習うみたいだ」

魔法学園は魔法をメインに習う場所ではあるが、卒業後に要職に就く者も多いため、今いる国や周りの情勢についての学ぶ機会がある。

一般人は通常その情報は知ることが出来ないようになっている。

そもそも自分たちの住んでいる村や町の周りに何があるかが分かれば生きていくのに支障は無いので、知る必要も無いのだ。

そのため、シルド王国内の地図自体も普及されてはいない。

これは、一般に地図が普及してしまうことで他国にもその情報が渡り、戦争のための使われることを避けるためである。

もっとも、最近では国同士の争いは少なくともシルド王国ではないため、そこまで重要という訳では無いかも知れないが。

ちなみにゾルムが温泉の描かれた地図をグレイに譲ったのはグレイが信用に足る人物と判断していることが大きいた、戦争が最近では起こっていないということも含めての判断なのだろう。

地図を入れている筒に特殊な仕掛けがされているのはそのような背景からとみられる。

国内だけでもこういった状況なのだから、他国に関しての情報はほとんど入ってこないのだ。

魔法学園に通う生徒は貴族が多いため、貴族たちは他国のことをある程度は把握しているが、平民であるグレイは他国がどのくらい周りにあって、どんな国なのかも全く理解していなかった。

『ふむ。今度アリシアはその辺りのことを聞くのも面白いかもしれんな』

「そうだな。教えてくれるようだったら聞いてみても良いかも」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...