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第212話
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『ふぅー、やはり風呂は最高だったな』
イズは風呂上がりに部屋に戻るや幸せそうに呟く。
「ああ。そうだな」
普段シャワーだけのグレイもイズの様子に笑顔になりながら同意する。
「あれ?そう言えば地図は見たっけ?」
グレイは部屋に置いたままにしていた筒を見てイズに尋ねる。
『ああ、グレイが考え事をしている間に見させて貰ったぞ』
「・・・そっか」
イズの言葉を聞いたグレイは「全然気づかなかった」と呟きながら腕輪の力で筒ごと地図をしまう。
『グレイ、すまんが水をくれないか?』
イズはグレイの様子を見ながらそうお願いをする。
「分かった」
グレイはコップを2つ出し、そこに【エリクサー】を注ぐ。
『ふぅ・・・やはり、風呂上がりにこれは格別だな』
イズは器用に【エリクサー】を一口飲むと幸せそうに呟く。
その様子を見ながらグレイは一気飲みをしていた。
「ぷはぁ~。最高だな」
グレイは飲み干した後、気持ち良さそうに呟く。
【エリクサー】は冷たくて美味しく体も癒やす。それでいて空腹の時にはそれすら満たしてくれるというまさに優れものである。
「イズの中ではこれが水代わりだったんだっけ?」
グレイは自分たちが何とも贅沢な使い方をしていると思いながらイズに尋ねる。
『ああ。そうだな。飲みすぎて害になることも無いから安心していい』
「・・・何度聞いても信じられない。当時の人たちはほとんどが水代わりにしていたんだろ?とんでもない時代だったんだな・・・」
グレイはイズが迷宮の主になった時代のことを考えながら呟く。
『そうだな。だから寿命以外で死ぬことは殆どなかったはずだ。それがいつの間にか滅んでいるとはな・・・』
イズが少しだけ寂しそうに呟く。
「・・・ごめん」
『いや・・・気にしないで良い。今はいつになく楽しいしな』
イズは申し訳無さそうにしているグレイに向かって気にしないようにと笑顔で応える。
「そっか、それなら良かった。ところで今日は楽しかったか?」
グレイはホッとしながらイズに尋ねる。
『ああ。アリシアの妹弟と遊ぶのは中々有意義だったぞ』
イズが嬉しそうに答えるのを見てグレイはちらっと見た遊びの内容を思い出しながら安心する。
(良かった。この様子ならイズが嫌々やっていたわけでは無さそうだ)
『ところでさっきの話の続きだが、この国の王に会うのだろ?どんな人物なんだ?』
イズが話題を変え、興味深そうに尋ねる。
「そうだな・・・俺も噂しか知らないけど今の国王様は名君と言われていて良い評判しか聞かないな」
『ほう。それは素晴らしいな』
「ああ。もうイズも本を見て知っているかもしれないが、この国・・・シルド王国は元々かなり小さな国だったんだが、歴代の国王様が段々と領地を増やし、大国になったと言われている。現在の国王様は29代目の国王様で名前をサンロード・セト・シルド様と仰るんだ」
グレイがイズに国王についての説明を簡単に行う。
『ふむ。確か、シルド王国は建国してから1700年近く経っているのだったな』
イズが夜な夜な本を読んで得た知識からシルド王国の事を思い出しながら呟く。
「ああ。正確には今年で1712年目だな。シルド歴1712年という言い方をする」
『ほう。ということは、他の国には他の国なりの言い方があるのか?』
グレイの説明に気になったイズが尋ねる。
「ああ。良くは知らないが、シルド王国の周りには大国がいくつかあるらしい。詳しい内容に関しては5年生になってから習うみたいだ」
魔法学園は魔法をメインに習う場所ではあるが、卒業後に要職に就く者も多いため、今いる国や周りの情勢についての学ぶ機会がある。
一般人は通常その情報は知ることが出来ないようになっている。
そもそも自分たちの住んでいる村や町の周りに何があるかが分かれば生きていくのに支障は無いので、知る必要も無いのだ。
そのため、シルド王国内の地図自体も普及されてはいない。
これは、一般に地図が普及してしまうことで他国にもその情報が渡り、戦争のための使われることを避けるためである。
もっとも、最近では国同士の争いは少なくともシルド王国ではないため、そこまで重要という訳では無いかも知れないが。
ちなみにゾルムが温泉の描かれた地図をグレイに譲ったのはグレイが信用に足る人物と判断していることが大きいた、戦争が最近では起こっていないということも含めての判断なのだろう。
地図を入れている筒に特殊な仕掛けがされているのはそのような背景からとみられる。
国内だけでもこういった状況なのだから、他国に関しての情報はほとんど入ってこないのだ。
魔法学園に通う生徒は貴族が多いため、貴族たちは他国のことをある程度は把握しているが、平民であるグレイは他国がどのくらい周りにあって、どんな国なのかも全く理解していなかった。
『ふむ。今度アリシアはその辺りのことを聞くのも面白いかもしれんな』
「そうだな。教えてくれるようだったら聞いてみても良いかも」
イズは風呂上がりに部屋に戻るや幸せそうに呟く。
「ああ。そうだな」
普段シャワーだけのグレイもイズの様子に笑顔になりながら同意する。
「あれ?そう言えば地図は見たっけ?」
グレイは部屋に置いたままにしていた筒を見てイズに尋ねる。
『ああ、グレイが考え事をしている間に見させて貰ったぞ』
「・・・そっか」
イズの言葉を聞いたグレイは「全然気づかなかった」と呟きながら腕輪の力で筒ごと地図をしまう。
『グレイ、すまんが水をくれないか?』
イズはグレイの様子を見ながらそうお願いをする。
「分かった」
グレイはコップを2つ出し、そこに【エリクサー】を注ぐ。
『ふぅ・・・やはり、風呂上がりにこれは格別だな』
イズは器用に【エリクサー】を一口飲むと幸せそうに呟く。
その様子を見ながらグレイは一気飲みをしていた。
「ぷはぁ~。最高だな」
グレイは飲み干した後、気持ち良さそうに呟く。
【エリクサー】は冷たくて美味しく体も癒やす。それでいて空腹の時にはそれすら満たしてくれるというまさに優れものである。
「イズの中ではこれが水代わりだったんだっけ?」
グレイは自分たちが何とも贅沢な使い方をしていると思いながらイズに尋ねる。
『ああ。そうだな。飲みすぎて害になることも無いから安心していい』
「・・・何度聞いても信じられない。当時の人たちはほとんどが水代わりにしていたんだろ?とんでもない時代だったんだな・・・」
グレイはイズが迷宮の主になった時代のことを考えながら呟く。
『そうだな。だから寿命以外で死ぬことは殆どなかったはずだ。それがいつの間にか滅んでいるとはな・・・』
イズが少しだけ寂しそうに呟く。
「・・・ごめん」
『いや・・・気にしないで良い。今はいつになく楽しいしな』
イズは申し訳無さそうにしているグレイに向かって気にしないようにと笑顔で応える。
「そっか、それなら良かった。ところで今日は楽しかったか?」
グレイはホッとしながらイズに尋ねる。
『ああ。アリシアの妹弟と遊ぶのは中々有意義だったぞ』
イズが嬉しそうに答えるのを見てグレイはちらっと見た遊びの内容を思い出しながら安心する。
(良かった。この様子ならイズが嫌々やっていたわけでは無さそうだ)
『ところでさっきの話の続きだが、この国の王に会うのだろ?どんな人物なんだ?』
イズが話題を変え、興味深そうに尋ねる。
「そうだな・・・俺も噂しか知らないけど今の国王様は名君と言われていて良い評判しか聞かないな」
『ほう。それは素晴らしいな』
「ああ。もうイズも本を見て知っているかもしれないが、この国・・・シルド王国は元々かなり小さな国だったんだが、歴代の国王様が段々と領地を増やし、大国になったと言われている。現在の国王様は29代目の国王様で名前をサンロード・セト・シルド様と仰るんだ」
グレイがイズに国王についての説明を簡単に行う。
『ふむ。確か、シルド王国は建国してから1700年近く経っているのだったな』
イズが夜な夜な本を読んで得た知識からシルド王国の事を思い出しながら呟く。
「ああ。正確には今年で1712年目だな。シルド歴1712年という言い方をする」
『ほう。ということは、他の国には他の国なりの言い方があるのか?』
グレイの説明に気になったイズが尋ねる。
「ああ。良くは知らないが、シルド王国の周りには大国がいくつかあるらしい。詳しい内容に関しては5年生になってから習うみたいだ」
魔法学園は魔法をメインに習う場所ではあるが、卒業後に要職に就く者も多いため、今いる国や周りの情勢についての学ぶ機会がある。
一般人は通常その情報は知ることが出来ないようになっている。
そもそも自分たちの住んでいる村や町の周りに何があるかが分かれば生きていくのに支障は無いので、知る必要も無いのだ。
そのため、シルド王国内の地図自体も普及されてはいない。
これは、一般に地図が普及してしまうことで他国にもその情報が渡り、戦争のための使われることを避けるためである。
もっとも、最近では国同士の争いは少なくともシルド王国ではないため、そこまで重要という訳では無いかも知れないが。
ちなみにゾルムが温泉の描かれた地図をグレイに譲ったのはグレイが信用に足る人物と判断していることが大きいた、戦争が最近では起こっていないということも含めての判断なのだろう。
地図を入れている筒に特殊な仕掛けがされているのはそのような背景からとみられる。
国内だけでもこういった状況なのだから、他国に関しての情報はほとんど入ってこないのだ。
魔法学園に通う生徒は貴族が多いため、貴族たちは他国のことをある程度は把握しているが、平民であるグレイは他国がどのくらい周りにあって、どんな国なのかも全く理解していなかった。
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