55 / 176
第二章 おふくろの味としじみ汁
2-26
しおりを挟む
「それまでは、さくらの飯屋を続けますね」
母は眉間に皺を寄せたが、呆れたように笑った。
「親の言う事を聞かない子だね。何を言っても無駄そうだから、しばらくは好きにしなさい」
「ありがとうございます、お母ちゃん。あと、山川屋のあの人達がこの味噌汁を気に入ったら、宣伝してもらおうかと思ってるんだけど」
「え? 山川屋のご主人には秘密にしてるんだろう?」
そうなのよね、おチヨ達に出来る事で、さくらの得になる報酬が欲しいのだけど……思い付かない。
アタシはまた悩む事になった。
「待て」
そこで、父が提案した。
「山川屋は花火に出資しているのだよな?」
「はい。そう聞いているけど」
「それなら、こんなのはどうだろう……」
数日後。
「本当の本当に、ありがとうございました。トモミ様も大喜びでございました」
快晴の江戸、客で混み合うさくらに、おチヨが一人で来ていた。
「まさに、あの味噌汁でした。今は亡き奥様のと全く同じ味でした。こんな若くて地味な娘さんに、あんな難しい注文が成し遂げられるなんて、思ってませんでしたが」
「喧嘩売ってんのか礼を言ってんのかハッキリしてください。まぁ、アタシも役に立てて良かった」
「麦味噌。柚子。それらの塩梅。見事でした。私では思い付きもしませんでした。普通の洒落た料理屋とは違うから思い付くのかしら」
追い出そうとしたら三郎・弥次郎の大工親子に止められた。他の客達が大笑いする。
母は眉間に皺を寄せたが、呆れたように笑った。
「親の言う事を聞かない子だね。何を言っても無駄そうだから、しばらくは好きにしなさい」
「ありがとうございます、お母ちゃん。あと、山川屋のあの人達がこの味噌汁を気に入ったら、宣伝してもらおうかと思ってるんだけど」
「え? 山川屋のご主人には秘密にしてるんだろう?」
そうなのよね、おチヨ達に出来る事で、さくらの得になる報酬が欲しいのだけど……思い付かない。
アタシはまた悩む事になった。
「待て」
そこで、父が提案した。
「山川屋は花火に出資しているのだよな?」
「はい。そう聞いているけど」
「それなら、こんなのはどうだろう……」
数日後。
「本当の本当に、ありがとうございました。トモミ様も大喜びでございました」
快晴の江戸、客で混み合うさくらに、おチヨが一人で来ていた。
「まさに、あの味噌汁でした。今は亡き奥様のと全く同じ味でした。こんな若くて地味な娘さんに、あんな難しい注文が成し遂げられるなんて、思ってませんでしたが」
「喧嘩売ってんのか礼を言ってんのかハッキリしてください。まぁ、アタシも役に立てて良かった」
「麦味噌。柚子。それらの塩梅。見事でした。私では思い付きもしませんでした。普通の洒落た料理屋とは違うから思い付くのかしら」
追い出そうとしたら三郎・弥次郎の大工親子に止められた。他の客達が大笑いする。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる