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乙女ゲーム以前
異国の友人 ― side C ―
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「よう、……まだやってんのか?」
「もう少しだけ」
剣を振るう僕に、壁に凭れたエヴラールが声をかけた。海を隔てた外国、アスタシフォンの将軍の家に居候を始めて早ひと月。エヴラールは僕より一つ年上で、若くして将軍になったジェラールさんの甥だ。歳が近いからと彼の母親、つまりジェラールさんの姉がよく連れて来るのだ。
「練習熱心だって叔父上が褒めてたけど、やりすぎはよくないぜ?あっちにいる時は、ろくな訓練もしてこなかったんだろ?」
「この一か月でかなりできるようになったよ?君には及ばないけど」
「宰相の長男で騎士になるわけでもないのに、どうして剣に目覚めたんだ?」
「この間、妹から手紙が来たんだよ」
「妹ねえ……頑張る理由が妹って、重度のシスコンかよ」
エヴラールは吐きそうな顔で髪を掻き上げた。肩までの金髪が輝き、長い睫毛で縁どられた緑色の瞳を伏せる。女っぽい顔立ちでも、剣の腕前は確かだ。同世代では右に出る者がいない。ジェラールさんから彼がモテるのだと聞いても納得してしまう。
「ビビアナとは仲がいいよ。問題は、手紙の中身なんだ。エレナが……僕の婚約者が、騎士団の練習を見に通っているらしいんだ」
「で?」
「で、って……だから、剣の腕を磨いたら、僕にも目を向けてくれないかなって」
「くっだらねー」
「うう……」
「そんなんで簡単にオチたら苦労しねえっての」
壁から背中を離し、僕の手を掴んで剣の動きを止める。仕方なく僕は剣の練習をやめた。
「エヴラールは苦労しているんだね」
「お前みたいに婚約者なんか決められてたまるかよ。俺は自分がいいと思った相手を本気でオトしに行くんだ。剣を練習すれば振り向いてもらえるなんて、ぬるいこと言ってんな」
「……エヴラールはモテるからいいよね」
「ぁあ?数より質だろ。俺はただ一人に選んでもらえればそれでいい。ディアーヌ様を我が妻に迎えるんだ」
「ディアーヌ様って、王女様だよね。三番目の。君より年上だったかな」
「だから何だ?そりゃあ、王族は他国に嫁ぐ政略結婚が多いけど、俺は実力で国王陛下に認められてみせる。来年、武術大会の成年の部に出場できるようになるから、一気に決めてやるぜ」
「うわあ、すごいね。ジェラール様がエヴラールを褒めるのも分かるよ」
「まあな。何事も気持ちが大切だろ。俺は強くなって、ディアーヌ様に選ばれる男になる。お前は……そのナントカちゃんに選ばれたい、好きになって欲しいんだろ?」
「そうだよ。自分に自信を持てるようになったら、堂々とエレナの前に立てる気がするんだ。素直な気持ちで、愛らしい彼女を褒めて、それで……」
「は?」
「どこか変かな?」
「褒めて当然だろ?お前、褒めたことねえの?」
「あ……」
エヴラールは訝しんでいる。僕の顔が固まったのを見逃してはくれなかった。
◆◆◆
「ふぅーん」
腕を組み顎に手を当て、美形剣士のエヴラールはにやにやして俺を見た。
「……あの」
「バカだろ、お前」
「う……」
「何つまんねえ意地張っちゃってんの?三つ年下だろうが、初対面で絶叫されようが、そこはお前が包み込んでやるべきじゃん。向こうだって緊張してたんだろうし、たった一度のことをズルズル引きずってさ。小せえ男だな、クラウディオ」
「はっ……」
図星だ。
そんなことは分かっている。
ビビアナにも指摘されて、外国に来てエヴラールにも言われて。
僕はつい、涙を流してしまった。エヴラールは僕の頭に腕を回して、よしよしと撫でてくれた。
「泣いてんじゃねえよ。……ったく、剣の技術だけ磨いたってダメだろ。お前の心が強くならなきゃどうしようも……って、俺の服で拭うな!鼻水つけんなって」
「ず、ずびばぜん……」
「今度実家に帰るんだろ?そん時、俺も連れて行けよ。お前が婚約者の前で立派な騎士でいられるように協力してやっからさ」
協力してくれるのはありがたい。
僕は心から彼に感謝していた。……この時は。
◆◆◆
アスタシフォンとイノセンシアを結ぶ定期航路は、僕達のような旅行者がたくさん利用する。エヴラール付きの従僕二名と僕達は、早朝から真夜中まで、ほぼ一日がかりでイノセンシアの王都に着いた。
「でけえな、お前ん家」
「そうかな。……王宮はうちよりもっと広いよ?」
「当たり前だろ。王宮と比べんな。つか、王宮としか比べらんないってのが逆にすげえ」
エヴラールは我が家を見て驚いていた。彼の叔父の家も大きいけれど、昔大家族だったころの名残で無駄に広い我が家に比べたら半分くらいだ。驚くのも無理はない。
「お帰り、クラウディオ」
「只今戻りました。父上、母上。……と、ビビアナは?」
「少し前まで、お前が来るのを待っていると言って頑張っていたんだがね。長椅子で転寝をし始めたから、部屋に運ばせたよ」
「そうですか。……ええと、こちらは」
「初めまして。エヴラールと申します。母は先代リーニュ公の娘で、私は現将軍ジェラールの甥に当たります」
「クラウディオと仲良くしてくれているんだってね」
「はっ」
「手紙に書いたんだ。エヴラールと仲良くなったって」
「そうなのか」
「君の部屋を用意させてあるよ。クラウディオの部屋の近くだからね。まずは旅の疲れをゆっくり癒すといいよ」
「ありがとうございます。お世話になります」
エヴラールはきびきびと頭を下げた。緩く波打つ金髪が揺れ、顔を上げた瞬間、自分に注がれる視線を感じて顔を向けた。見れば侍女達が頬を染めて彼を見ている。どう見ても侍女の方が十歳は上だぞ?
「注目されているな」
ふっと笑うと、自分を見ていた侍女達に軽くウインクする。侍女達は頬を染めて口を手で覆い、廊下の隅できゃあきゃあ言い合っている。
「うわあ……すごいね、君」
「これくらいサービスして当然だろ」
「……誰か、案内を」
父上の声に、八名の侍女が名乗りを上げた。そんなにぞろぞろ要らないよ。
「パーティーは三日後なんだろ。疲れてるんだから、ぐだぐだ考えてないで今晩はさっさと寝ろよ」
部屋の前でエヴラールは僕に釘を刺した。
彼の言う通りだ。
僕は部屋に戻るなり、どうしようもないことをぐだぐだ考えてしまった。
エレナは僕のことを忘れているだろうか。
迷惑な奴がいなくなって清々していたのに、戻ってくるなんて最悪だろうな。
パーティーが終わったら、次の日には国を立とう。中途半端な僕は、彼女の隣に立つ資格はないのだから。
「もう少しだけ」
剣を振るう僕に、壁に凭れたエヴラールが声をかけた。海を隔てた外国、アスタシフォンの将軍の家に居候を始めて早ひと月。エヴラールは僕より一つ年上で、若くして将軍になったジェラールさんの甥だ。歳が近いからと彼の母親、つまりジェラールさんの姉がよく連れて来るのだ。
「練習熱心だって叔父上が褒めてたけど、やりすぎはよくないぜ?あっちにいる時は、ろくな訓練もしてこなかったんだろ?」
「この一か月でかなりできるようになったよ?君には及ばないけど」
「宰相の長男で騎士になるわけでもないのに、どうして剣に目覚めたんだ?」
「この間、妹から手紙が来たんだよ」
「妹ねえ……頑張る理由が妹って、重度のシスコンかよ」
エヴラールは吐きそうな顔で髪を掻き上げた。肩までの金髪が輝き、長い睫毛で縁どられた緑色の瞳を伏せる。女っぽい顔立ちでも、剣の腕前は確かだ。同世代では右に出る者がいない。ジェラールさんから彼がモテるのだと聞いても納得してしまう。
「ビビアナとは仲がいいよ。問題は、手紙の中身なんだ。エレナが……僕の婚約者が、騎士団の練習を見に通っているらしいんだ」
「で?」
「で、って……だから、剣の腕を磨いたら、僕にも目を向けてくれないかなって」
「くっだらねー」
「うう……」
「そんなんで簡単にオチたら苦労しねえっての」
壁から背中を離し、僕の手を掴んで剣の動きを止める。仕方なく僕は剣の練習をやめた。
「エヴラールは苦労しているんだね」
「お前みたいに婚約者なんか決められてたまるかよ。俺は自分がいいと思った相手を本気でオトしに行くんだ。剣を練習すれば振り向いてもらえるなんて、ぬるいこと言ってんな」
「……エヴラールはモテるからいいよね」
「ぁあ?数より質だろ。俺はただ一人に選んでもらえればそれでいい。ディアーヌ様を我が妻に迎えるんだ」
「ディアーヌ様って、王女様だよね。三番目の。君より年上だったかな」
「だから何だ?そりゃあ、王族は他国に嫁ぐ政略結婚が多いけど、俺は実力で国王陛下に認められてみせる。来年、武術大会の成年の部に出場できるようになるから、一気に決めてやるぜ」
「うわあ、すごいね。ジェラール様がエヴラールを褒めるのも分かるよ」
「まあな。何事も気持ちが大切だろ。俺は強くなって、ディアーヌ様に選ばれる男になる。お前は……そのナントカちゃんに選ばれたい、好きになって欲しいんだろ?」
「そうだよ。自分に自信を持てるようになったら、堂々とエレナの前に立てる気がするんだ。素直な気持ちで、愛らしい彼女を褒めて、それで……」
「は?」
「どこか変かな?」
「褒めて当然だろ?お前、褒めたことねえの?」
「あ……」
エヴラールは訝しんでいる。僕の顔が固まったのを見逃してはくれなかった。
◆◆◆
「ふぅーん」
腕を組み顎に手を当て、美形剣士のエヴラールはにやにやして俺を見た。
「……あの」
「バカだろ、お前」
「う……」
「何つまんねえ意地張っちゃってんの?三つ年下だろうが、初対面で絶叫されようが、そこはお前が包み込んでやるべきじゃん。向こうだって緊張してたんだろうし、たった一度のことをズルズル引きずってさ。小せえ男だな、クラウディオ」
「はっ……」
図星だ。
そんなことは分かっている。
ビビアナにも指摘されて、外国に来てエヴラールにも言われて。
僕はつい、涙を流してしまった。エヴラールは僕の頭に腕を回して、よしよしと撫でてくれた。
「泣いてんじゃねえよ。……ったく、剣の技術だけ磨いたってダメだろ。お前の心が強くならなきゃどうしようも……って、俺の服で拭うな!鼻水つけんなって」
「ず、ずびばぜん……」
「今度実家に帰るんだろ?そん時、俺も連れて行けよ。お前が婚約者の前で立派な騎士でいられるように協力してやっからさ」
協力してくれるのはありがたい。
僕は心から彼に感謝していた。……この時は。
◆◆◆
アスタシフォンとイノセンシアを結ぶ定期航路は、僕達のような旅行者がたくさん利用する。エヴラール付きの従僕二名と僕達は、早朝から真夜中まで、ほぼ一日がかりでイノセンシアの王都に着いた。
「でけえな、お前ん家」
「そうかな。……王宮はうちよりもっと広いよ?」
「当たり前だろ。王宮と比べんな。つか、王宮としか比べらんないってのが逆にすげえ」
エヴラールは我が家を見て驚いていた。彼の叔父の家も大きいけれど、昔大家族だったころの名残で無駄に広い我が家に比べたら半分くらいだ。驚くのも無理はない。
「お帰り、クラウディオ」
「只今戻りました。父上、母上。……と、ビビアナは?」
「少し前まで、お前が来るのを待っていると言って頑張っていたんだがね。長椅子で転寝をし始めたから、部屋に運ばせたよ」
「そうですか。……ええと、こちらは」
「初めまして。エヴラールと申します。母は先代リーニュ公の娘で、私は現将軍ジェラールの甥に当たります」
「クラウディオと仲良くしてくれているんだってね」
「はっ」
「手紙に書いたんだ。エヴラールと仲良くなったって」
「そうなのか」
「君の部屋を用意させてあるよ。クラウディオの部屋の近くだからね。まずは旅の疲れをゆっくり癒すといいよ」
「ありがとうございます。お世話になります」
エヴラールはきびきびと頭を下げた。緩く波打つ金髪が揺れ、顔を上げた瞬間、自分に注がれる視線を感じて顔を向けた。見れば侍女達が頬を染めて彼を見ている。どう見ても侍女の方が十歳は上だぞ?
「注目されているな」
ふっと笑うと、自分を見ていた侍女達に軽くウインクする。侍女達は頬を染めて口を手で覆い、廊下の隅できゃあきゃあ言い合っている。
「うわあ……すごいね、君」
「これくらいサービスして当然だろ」
「……誰か、案内を」
父上の声に、八名の侍女が名乗りを上げた。そんなにぞろぞろ要らないよ。
「パーティーは三日後なんだろ。疲れてるんだから、ぐだぐだ考えてないで今晩はさっさと寝ろよ」
部屋の前でエヴラールは僕に釘を刺した。
彼の言う通りだ。
僕は部屋に戻るなり、どうしようもないことをぐだぐだ考えてしまった。
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