ツンデレ貴公子は守備範囲外なので悪役令嬢に押し付けたい

青杜六九

文字の大きさ
23 / 77
乙女ゲーム以前

パーティー始まる

しおりを挟む
「……四人?」
見間違いかしら。私、ビビアナ様は誘ったけれど、それでも三人よね。
ビビアナ様からの手紙を読んでいくと、クラウディオの友人のエヴラールと一緒だとある。
ああ、あれか。
カルロータ様に引けを取らないくらいキラキラした目で騎士達を見ていた男がいたな。見た目は優雅だったけど、あれがいいなんて脳筋に決まってる。馬車の中では無視するに限るわね。

が。
これはどうしたことか。
行きの車内では、ビビアナ様にひっついて隣に座れたものの、向かいには憮然としたクラウディオ。奴の隣にはこれまた対照的な、よく喋る適当そうな男。適当男はファブリシオで懲りているのに、うんざりだわ。
「ねえ、エレナ様」
「はい」
いけない。
ビビアナ様のお話、ちゃんと聞いていなかったわ。
何だったかしら。最近の流行について……よね?
「今日のパーティーで着て行く服がなくて、お兄様の服は急いで仕立てさせたのよ」
「はあ……」
「ふふ。興味がないって顔ね」
バレてる!?
「でも、よく見て。生地もデザインも、今季の流行最先端なのよ。……全体的に、ピチピチ感は否めないけれどね」
「最先端……」
今年の社交界では、男女とも身体にフィットしたデザインの服を着るのが流行している。ボディラインに自信がある若い女性は、ここぞとばかりに曲線美を誇示するようなドレスを纏い、鍛えている男は筋肉美を見せている。カルロータ様には天国のようでも、私にはつらいものがある。目の前で腕組みをしているクラウディオもその一人で、肩幅が広くなったななどと意識させられてしまう。
「ははっ。いいじゃないか。服を仕立てている間に鍛えたって感じがするだろ?こっちの社交界はスマートな王子様より筋肉自慢がモテるんだな」
「誤解ですわ、エヴラール様」
「ふうん。エレナちゃんは筋肉より王子様が好み?」
「……どちらも好みませんわ」
王子って、あの王子?
数えるほどしか見たことはないけれど、胡散臭い王子スマイルの、腹黒そうな?
脳筋も腹黒もゴメンよ。
「じゃあ、どんな男が好み?」
うわあ。やけにズバズバ訊いてくるな。
隣のビビアナ様をちらりと見る。……目を逸らされた。酷い、助けてくれても……。
「筋肉質でもなくて、何を考えているのかきちんと伝えてくださる、優しい方がいいです」
「う……」
ん?クラウディオ、何か顔色が悪いわね。
「あれ?大丈夫か、クラウディオ」
「お兄様、ほらもうすぐ着きますわよ!」

   ◆◆◆

イルデフォンソの家に着くなり、クラウディオはエヴラールに支えられてどこかへ行ってしまった。何だろう。具合が悪かったなら、無理してパーティーに出なくてもいいのに。
「エスコートを放棄して、まったく……お兄様ったら肝心な時に役立たずだわ」
ビビアナ様は腰に手を当てて、二人が消えた方を睨んでいる。
「ビビアナ様は、あの……エヴラール様にエスコートを……」
「あの様子ではしばらく帰って来ないでしょうね。……はあ、計画が台無しだわ」
「計画?」
「ふふ、こっちの話よ」
人差し指を唇に当て、ビビアナ様はにっこり笑ってウインクした。悪役令嬢でも可愛い。
「何だ、求婚者を連れて来るってのは、出まかせだったのか?」
はっと振り返ると、ビビアナ様と同じくらいの歳の貴公子が立っている。このパーティーに呼ばれているくらいなのだから、名家のお坊ちゃんなのね。立ち居振る舞いがとても優雅だ。勝ち誇ったようににやにやしている点を除いては。
「あら、ルカも招待されていたのね」
「前から知っていただろ。『わたくし、モテ期がやってきましたの!』とか言って、俺に見せつける気だったくせに。……それで?求婚者とやらはどこなんだ?」
「い、意地悪……」
ルカを睨み付けるビビアナ様の瞳に熱が……あら、あらあらあら。そういうことなのね。
「いいわ。ルカ・オルディアレス。この間の賭けはあなたの勝ちよ」
「だな。後でたっぷり働いてもらうぞ」
一体何の賭けをしたのやら。ビビアナ様を余裕の表情で見下ろすルカも、心なしか頬を染めている。……ふうん。そうなのね。
「今晩はダメよ。私、エレナ様とご一緒しているの」
「おっと、悪い。ビビアナに友達なんかいたんだ」
「失礼ね。お兄様の婚約者よ」
「義理のお姉さん?……にしては、小さくないか?」
「初めまして。エレナと申します。父はメンディサバル伯爵で、ビビアナ様とは幼い頃より親しくさせていただいております」
「あ、俺はルカ。……さっきビビアナが言っていただろう。オルディアレス家の気楽な次男坊だよ」
「王太子殿下とお親しいと聞きましたが……きゃっ」
突然後ろから肩を掴まれた。
「お兄様!?」
何だって?
振り返って軽く絶望する。黒髪に青い目の美男子かつ細マッチョのクラウディオが、厳しい表情で私を睨んでいたのだ。ビビアナ様の友達と話したくらいで、何なの、この顔!
「ク……クラウディオ様?もうお加減はよろしいのですか?」
馬車を下りた時は、確かに死にそうな顔をしていたのに。復活が速すぎるでしょ?
「……問題ない」
「まだお顔の色が優れませんわ。どうぞ、お部屋で休んでらして」
とっとと消えな!この不機嫌男が!
「エレナ……」
青い瞳が揺らいだ。あっちに行けとオーラで語っていたのに気づかれた?
「クラウディオ―!」
向こうからエヴラールが走ってくる。鍛えられた脚力で、すぐに皆に合流した。
「まだ休んでろよ。エレナのエスコートなら、俺に任せてくれ」
「君は、ビビアナの……」
「心配するな。……ビビアナにはそこの彼がいるだろ」
「なっ、違いますわ、この人は……」
真っ赤になったビビアナ様が腕をブンブン振り回している。エヴラールは私の手を掴み、
「さあ、行きましょうか。お嬢さん」
とその場から強引に連れ去った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

処理中です...