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乙女ゲーム以前
異文化交流? -side C-
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僕がノイムフェーダへ旅立つ日、港にはエヴラールとビビアナ、両親が見送りに来た。
「エレナにも声かけたんだけどなー」
「……いいよ、ありがとう」
エヴラールは自分の力不足を悔やみ、ビビアナは僕の脇腹を叩いた。
「お兄様がしっかりしないから、見送りにも来てもらえないのよ」
言葉にならない。
不甲斐ない兄を責めるビビアナは本当に容赦ない。
「あちらでもお友達ができるといいわね」
「うん。エヴラールみたいないい友達ができるといいな」
横目で見れば、船を眺めていたエヴラールが振り返った。
「何だよ。にやにやして」
「何でもないよ。ところで、本当に行くの?」
「ダメか?」
「ダメどころか、とても助かるよ。でも、エヴラールは国に戻るんじゃ……」
留学に合わせて自分もノイムフェーダへ行くと言い出し、エヴラールは実家に手紙を書いた。ノイムフェーダの長い歴史の中で、アスタシフォンとの関係は良好とは言い難い。将軍の甥で、まだ子供のエヴラールは、手頃な人質として捕まる恐れもある。
「叔父上が直接話をつけてくださったみたいだ。お前と同じところにいるなら大丈夫だろうって」
「同じお邸?ルモニエ家に?」
「うん。侯爵家だし、叔父上の話だと中立派らしい。変な争いに巻き込まれる心配もないだろうって。俺も見聞を広めたほうがいいから、行って来いって言ってくれた」
「よかった。心強いよ」
「ん。ってことで、これからもよろしくな!」
少し日に焼けた笑顔が弾けた。
◆◆◆
父上と懇意にしているノイムフェーダのルモニエ侯爵は、母上の話では変わり者だとのことだった。着いたその日に、僕はそれを実感することになった。
「まさか、着いて早々、着せ替え人形にされるとはな」
「びっくりだね」
首回りも袖口も、三重のフリルがついた服を着せられ、エヴラールは「うげ」と吐く真似をしてみせた。
「結構似合ってるよ?」
「冗談やめろよ。こんな服、俺の柄じゃねえよ。クラウディオの方が似合ってるぞ。着飾れば見られるもんだな」
さり気なく言うことが酷い。でも、褒められて悪い気はしない。
「動作に気をつけないといけないね。ほら、食事の時とか」
「だな。そっと口に運ばないとな。袖口にソースでもつけてみろよ。あのオッサ……コホン、ラウル様は身だしなみにうるさいだろ。何言われるか分かったもんじゃない」
侯爵様はお留守で、僕達を出迎えてくれたのは彼女の夫であるラウル様だった。ラウル様はいい方だと思う。――服装にやたらうるさい点を除けば。
やや敵対関係にある国から来たエヴラールに対しても、酷い扱いをすることなくもてなしている。
「侯爵様の趣味なのかな、この服」
「趣味っつーか、皆こうだろ?気づかなかったのか、クラウディオ。この邸に来るまで、街で見かけた男はこんな格好だったぞ」
「そうなの?」
長時間の馬車移動は、乗り物酔いしやすい僕には苦行だった。必死に揺れに耐えていたから、窓の外を気にする余裕はなかった。そうか、これが普通なのか。
「ノイムフェーダは女王の治める国。昔から、家を継ぐのは女だって知ってるだろ?」
「ああ、うん。本で読んだけど、配偶者として選ばれる立場だから、特に男性の服飾文化が発展したんだよね。まるで、妹が持っていた人形みたいだ」
ビビアナも人形遊びをしていた頃があったなと懐かしく思う。あの頃は守ってやりたくなる可愛さだったのに、今はどうだろう。毎日僕を叱りつけているのだ。
「見た目を気にするのは悪くないんだろうが、何つーか、変な感じだよな。これ着て、今日の夜会に出ろだなんて。俺達、まだそういう年齢じゃないだろ」
「うん。でも、こっちではこれが普通なんだって。男は十二歳くらいから貴族の集まりに顔を出して、良縁を掴むとかなんとか。別に、僕は良縁なんて要らないのに……」
「エレナちゃんがいるからな」
エヴラールがにやにや笑って僕の脇腹を小突く。
「心配なんだ。僕のせいで、せっかくできた友達と会えなくなってしまったんだから」
「友達?アレハンドリナか。うーん。変な影響を受けないうちに離れてよかったんじゃないか?ちょっとどころじゃなく変だろ、あいつ。ま、俺は嫌いじゃないけどな」
「エヴラールはああいうのが好みなの?やめておきなよ、イルデフォンソが怖いから」
「ははは。確かに。敵に回したくはねえよな」
「支度はできたかな?」
見目麗しい従者を引き連れて、ラウル様が部屋に入って来た。僕達を出迎えた時とは服装が異なる。より豪華に……けばけばしくなっている気がする。艶のあるハニーブロンドをかきあげて、長い睫毛に縁どられた緑色の瞳で僕達の服装を瞬時に確認した。笑みを浮かべる顔には皺ひとつなく、とても四十代とは思えない。
「はい。……ええと、僕達もご一緒させていただいてよろしいのですか?」
「構わないよ。私も、友人達も、君達のような若い子が参加してくれれば嬉しい。同年代の子も来るから、友達もできると思うよ」
「はあ……」
エヴラールと会話する時は、彼が僕に合わせてくれるからイノセンシア語で、ラウル様や邸の使用人と会話する時はノイムフェーダ語を使う。家庭教師に習っていたから、どうにか通じる会話ができているが、言葉の壁は結構厚い。うまい言い回しが浮かばないこともある。
「実は、近頃目新しい話題もなかったのでね。おしゃべりに興じるのも退屈になってきたところだったんだ」
「俺……じゃなくて、私達が『新しい話題』ってことですか?」
「ふふふ。その通りだよ、エヴラール。君はアスタシフォンの出身だ。この国では誰もが、君の国を野蛮な国だと誤解している。私はそんな連中の鼻を明かしてやりたいのだよ。君のように……」
ラウル様はエヴラールに近づき、彼の顎を指先でそっと持ち上げた。
「なっ!」
「アスタシフォンにもこのように、優美かつ繊細な美しさを持つ少年がいるのだと、真実の美を知らない愚かな者どもに知らしめてやるつもりだよ」
「は、離してください!」
手を振り払ってエヴラールは後ずさった。青ざめた顔で何度も瞬きをしている。
うん。僕も怖かったよ。
ラウル様は、何事もなかったかのように、僕を上から下まで眺めて、
「合格点……かな。見た目だけなら」
と呟いた。
言葉の意味が分からないまま、僕達は夜会へと向かった。
◆◆◆
「すごい……」
会場に着くなり、僕は言葉を失った。
こんなキラキラした空間は、イノセンシア中どこを探しても見つからないだろう。
「目が痛くなりそうだ」
馬車の中でもラウル様から指導を受けていたエヴラールは、げっそりやつれた顔をして額に手を当てた。
「大丈夫?」
「ああ。『女子に好まれる台詞集』を詰め込まれたお蔭で、頭がパンクしそうだけどな」
物覚えの良いエヴラールは、ラウル様直伝の甘い台詞をいくつか口にして、大きく溜息をつく。ラウル様は僕にも教えようとしたけれど、母国語でさえ口下手な僕には難しいと匙を投げた。結果、エヴラールは個人指導を受けた格好になった。
「……あ」
そこで僕達は、会場の人々がこちらに注目していると気づいた。
ラウル様が今夜の主催者に、僕達を客として紹介したのだろう。彼と話をしている老婦人が僕達を見て目を細めた。遠巻きに眺めていた人の群れから、僕達と同じくらいの年齢の少年が近づいてきた。プラチナブロンドの髪を後ろに束ね、金糸で刺繍された真っ赤な上着を着こなしている。服ばかりが目立っている僕とは大違いだ。
「何だ……?」
エヴラールの呟きが聞こえたのか、彼は一瞬顔を顰めてすぐに作り笑顔に戻った。
「やあ、はじめまして」
「あ、は、はじめま……」
「君達が噂の、ルモニエ侯爵様の『新しいお人形』かな?」
「お人形?何だよ、それ」
「おっと、失敬。皆がそう言っていたものでね。侯爵様は陛下の関心を得るために、『新しいお人形』を取り寄せたのだと」
いつから噂になっていたのか、聞くまでもないだろう。僕達が入国するよりずっと前からだ。僕の留学が簡単に叶ったのには裏があったのだ。
「どういう意味だよ」
「君達は何も知らないのかな?それなら好都合だ。これからもおとなしくしていてくれたまえ。――王女殿下の視界に入らないようにね」
謎の少年は、アイスブルーの瞳で僕とエヴラールを睨むと、遠くから見守っている取り巻き達のところへ戻って行った。
「おっかねー。来て早々、目ぇつけられるとはな」
「見た目は綺麗だけど、怖い人だったね」
何故かイルデフォンソの顔が頭に浮かんだ。彼は、天使のような見た目とは裏腹に、悪魔のように冷酷無比な一面がある。
「王女殿下がどうとか言ってたな。俺達がお目通りする機会なんてないだろ、普通」
「だと思うけど……」
目を見合わせて首を捻る。すぐに答えが分かった。
会場にいた人々がざわめき、主催者夫妻が入口に小走りで向かう。
「おい、あれ……」
先程の少年が顔に満面の笑みをはりつけて、スキップでもしそうな勢いで続いた。
「別人みたいだ……」
「お待ちしておりました、殿下。このフィリベール、殿下にお会いできた喜びで胸が震えております。ああ、今宵の満月も霞むほどの神々しさ……。美の女神もあなた様を前に跪かずにはいられないでしょう!」
「ふふ。フィリベール、あなたは相変わらず大仰だこと」
軽やかな笑い声がして、人垣から鮮やかな紫色のドレスが見えた。周囲の人々の様子といい、フィリベールの態度といい、間違いない。彼女が王女だ。
「マジか……」
人々の歓声にエヴラールの呟きが消えた。
「あら?」
王女が口元を扇子で隠し、首を傾げて僕を見つめた瞬間、僕は脱兎のごとく会場を飛び出した。
「エレナにも声かけたんだけどなー」
「……いいよ、ありがとう」
エヴラールは自分の力不足を悔やみ、ビビアナは僕の脇腹を叩いた。
「お兄様がしっかりしないから、見送りにも来てもらえないのよ」
言葉にならない。
不甲斐ない兄を責めるビビアナは本当に容赦ない。
「あちらでもお友達ができるといいわね」
「うん。エヴラールみたいないい友達ができるといいな」
横目で見れば、船を眺めていたエヴラールが振り返った。
「何だよ。にやにやして」
「何でもないよ。ところで、本当に行くの?」
「ダメか?」
「ダメどころか、とても助かるよ。でも、エヴラールは国に戻るんじゃ……」
留学に合わせて自分もノイムフェーダへ行くと言い出し、エヴラールは実家に手紙を書いた。ノイムフェーダの長い歴史の中で、アスタシフォンとの関係は良好とは言い難い。将軍の甥で、まだ子供のエヴラールは、手頃な人質として捕まる恐れもある。
「叔父上が直接話をつけてくださったみたいだ。お前と同じところにいるなら大丈夫だろうって」
「同じお邸?ルモニエ家に?」
「うん。侯爵家だし、叔父上の話だと中立派らしい。変な争いに巻き込まれる心配もないだろうって。俺も見聞を広めたほうがいいから、行って来いって言ってくれた」
「よかった。心強いよ」
「ん。ってことで、これからもよろしくな!」
少し日に焼けた笑顔が弾けた。
◆◆◆
父上と懇意にしているノイムフェーダのルモニエ侯爵は、母上の話では変わり者だとのことだった。着いたその日に、僕はそれを実感することになった。
「まさか、着いて早々、着せ替え人形にされるとはな」
「びっくりだね」
首回りも袖口も、三重のフリルがついた服を着せられ、エヴラールは「うげ」と吐く真似をしてみせた。
「結構似合ってるよ?」
「冗談やめろよ。こんな服、俺の柄じゃねえよ。クラウディオの方が似合ってるぞ。着飾れば見られるもんだな」
さり気なく言うことが酷い。でも、褒められて悪い気はしない。
「動作に気をつけないといけないね。ほら、食事の時とか」
「だな。そっと口に運ばないとな。袖口にソースでもつけてみろよ。あのオッサ……コホン、ラウル様は身だしなみにうるさいだろ。何言われるか分かったもんじゃない」
侯爵様はお留守で、僕達を出迎えてくれたのは彼女の夫であるラウル様だった。ラウル様はいい方だと思う。――服装にやたらうるさい点を除けば。
やや敵対関係にある国から来たエヴラールに対しても、酷い扱いをすることなくもてなしている。
「侯爵様の趣味なのかな、この服」
「趣味っつーか、皆こうだろ?気づかなかったのか、クラウディオ。この邸に来るまで、街で見かけた男はこんな格好だったぞ」
「そうなの?」
長時間の馬車移動は、乗り物酔いしやすい僕には苦行だった。必死に揺れに耐えていたから、窓の外を気にする余裕はなかった。そうか、これが普通なのか。
「ノイムフェーダは女王の治める国。昔から、家を継ぐのは女だって知ってるだろ?」
「ああ、うん。本で読んだけど、配偶者として選ばれる立場だから、特に男性の服飾文化が発展したんだよね。まるで、妹が持っていた人形みたいだ」
ビビアナも人形遊びをしていた頃があったなと懐かしく思う。あの頃は守ってやりたくなる可愛さだったのに、今はどうだろう。毎日僕を叱りつけているのだ。
「見た目を気にするのは悪くないんだろうが、何つーか、変な感じだよな。これ着て、今日の夜会に出ろだなんて。俺達、まだそういう年齢じゃないだろ」
「うん。でも、こっちではこれが普通なんだって。男は十二歳くらいから貴族の集まりに顔を出して、良縁を掴むとかなんとか。別に、僕は良縁なんて要らないのに……」
「エレナちゃんがいるからな」
エヴラールがにやにや笑って僕の脇腹を小突く。
「心配なんだ。僕のせいで、せっかくできた友達と会えなくなってしまったんだから」
「友達?アレハンドリナか。うーん。変な影響を受けないうちに離れてよかったんじゃないか?ちょっとどころじゃなく変だろ、あいつ。ま、俺は嫌いじゃないけどな」
「エヴラールはああいうのが好みなの?やめておきなよ、イルデフォンソが怖いから」
「ははは。確かに。敵に回したくはねえよな」
「支度はできたかな?」
見目麗しい従者を引き連れて、ラウル様が部屋に入って来た。僕達を出迎えた時とは服装が異なる。より豪華に……けばけばしくなっている気がする。艶のあるハニーブロンドをかきあげて、長い睫毛に縁どられた緑色の瞳で僕達の服装を瞬時に確認した。笑みを浮かべる顔には皺ひとつなく、とても四十代とは思えない。
「はい。……ええと、僕達もご一緒させていただいてよろしいのですか?」
「構わないよ。私も、友人達も、君達のような若い子が参加してくれれば嬉しい。同年代の子も来るから、友達もできると思うよ」
「はあ……」
エヴラールと会話する時は、彼が僕に合わせてくれるからイノセンシア語で、ラウル様や邸の使用人と会話する時はノイムフェーダ語を使う。家庭教師に習っていたから、どうにか通じる会話ができているが、言葉の壁は結構厚い。うまい言い回しが浮かばないこともある。
「実は、近頃目新しい話題もなかったのでね。おしゃべりに興じるのも退屈になってきたところだったんだ」
「俺……じゃなくて、私達が『新しい話題』ってことですか?」
「ふふふ。その通りだよ、エヴラール。君はアスタシフォンの出身だ。この国では誰もが、君の国を野蛮な国だと誤解している。私はそんな連中の鼻を明かしてやりたいのだよ。君のように……」
ラウル様はエヴラールに近づき、彼の顎を指先でそっと持ち上げた。
「なっ!」
「アスタシフォンにもこのように、優美かつ繊細な美しさを持つ少年がいるのだと、真実の美を知らない愚かな者どもに知らしめてやるつもりだよ」
「は、離してください!」
手を振り払ってエヴラールは後ずさった。青ざめた顔で何度も瞬きをしている。
うん。僕も怖かったよ。
ラウル様は、何事もなかったかのように、僕を上から下まで眺めて、
「合格点……かな。見た目だけなら」
と呟いた。
言葉の意味が分からないまま、僕達は夜会へと向かった。
◆◆◆
「すごい……」
会場に着くなり、僕は言葉を失った。
こんなキラキラした空間は、イノセンシア中どこを探しても見つからないだろう。
「目が痛くなりそうだ」
馬車の中でもラウル様から指導を受けていたエヴラールは、げっそりやつれた顔をして額に手を当てた。
「大丈夫?」
「ああ。『女子に好まれる台詞集』を詰め込まれたお蔭で、頭がパンクしそうだけどな」
物覚えの良いエヴラールは、ラウル様直伝の甘い台詞をいくつか口にして、大きく溜息をつく。ラウル様は僕にも教えようとしたけれど、母国語でさえ口下手な僕には難しいと匙を投げた。結果、エヴラールは個人指導を受けた格好になった。
「……あ」
そこで僕達は、会場の人々がこちらに注目していると気づいた。
ラウル様が今夜の主催者に、僕達を客として紹介したのだろう。彼と話をしている老婦人が僕達を見て目を細めた。遠巻きに眺めていた人の群れから、僕達と同じくらいの年齢の少年が近づいてきた。プラチナブロンドの髪を後ろに束ね、金糸で刺繍された真っ赤な上着を着こなしている。服ばかりが目立っている僕とは大違いだ。
「何だ……?」
エヴラールの呟きが聞こえたのか、彼は一瞬顔を顰めてすぐに作り笑顔に戻った。
「やあ、はじめまして」
「あ、は、はじめま……」
「君達が噂の、ルモニエ侯爵様の『新しいお人形』かな?」
「お人形?何だよ、それ」
「おっと、失敬。皆がそう言っていたものでね。侯爵様は陛下の関心を得るために、『新しいお人形』を取り寄せたのだと」
いつから噂になっていたのか、聞くまでもないだろう。僕達が入国するよりずっと前からだ。僕の留学が簡単に叶ったのには裏があったのだ。
「どういう意味だよ」
「君達は何も知らないのかな?それなら好都合だ。これからもおとなしくしていてくれたまえ。――王女殿下の視界に入らないようにね」
謎の少年は、アイスブルーの瞳で僕とエヴラールを睨むと、遠くから見守っている取り巻き達のところへ戻って行った。
「おっかねー。来て早々、目ぇつけられるとはな」
「見た目は綺麗だけど、怖い人だったね」
何故かイルデフォンソの顔が頭に浮かんだ。彼は、天使のような見た目とは裏腹に、悪魔のように冷酷無比な一面がある。
「王女殿下がどうとか言ってたな。俺達がお目通りする機会なんてないだろ、普通」
「だと思うけど……」
目を見合わせて首を捻る。すぐに答えが分かった。
会場にいた人々がざわめき、主催者夫妻が入口に小走りで向かう。
「おい、あれ……」
先程の少年が顔に満面の笑みをはりつけて、スキップでもしそうな勢いで続いた。
「別人みたいだ……」
「お待ちしておりました、殿下。このフィリベール、殿下にお会いできた喜びで胸が震えております。ああ、今宵の満月も霞むほどの神々しさ……。美の女神もあなた様を前に跪かずにはいられないでしょう!」
「ふふ。フィリベール、あなたは相変わらず大仰だこと」
軽やかな笑い声がして、人垣から鮮やかな紫色のドレスが見えた。周囲の人々の様子といい、フィリベールの態度といい、間違いない。彼女が王女だ。
「マジか……」
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「あら?」
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