ツンデレ貴公子は守備範囲外なので悪役令嬢に押し付けたい

青杜六九

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乙女ゲーム以前

幕間 使者

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「お嬢様に、お手紙ですか?」
伯爵家執事のバスコは若い侍女を上から下まで眺めて、眉間に皺を寄せた。
「はい。坊ちゃんがすぐにお渡しするように言いつかっております」
「ああ……雇われたばかりのようですね、君は。知らないのも無理はないか」
「何でしょう?」
「実は、クラウディオ様とうちのお嬢様は、関係修復不能な喧嘩をしてしまっていましてね」
「まあ……存じませんでした!」
「クラウディオ様は何も仰いませんでしたか?」
「はい。すぐに届けてほしいとだけ」
侍女の手から封筒を受けとり、執事は封筒の文字に目を走らせた。
「これは代筆ですか?」
「いいえ。クラウディオ坊ちゃんが書かれました。字の練習をなさって」
「とても綺麗ですね。別人に見える……ん?」
「どうなさいました?」
「別人か……いいかもしれない」
「といいますと?」
「幸い、差出人の名前がないようです。文面にも名前を書いていらっしゃらなければ、クラウディオ様が書いたとは分かりますまい。お嬢様に懸想するどこかの貴公子からの手紙だと思わせれば、抵抗なさらずに封をお開けになるのではないでしょうか」
「エレナ様を騙すんですか?」
「開けていただかないことには始まらないでしょう。……私に任せて。すぐにお嬢様から返事をいただいてまいります」
バスコは軽く頷いて、エレナの部屋へ向かった。
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