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僕の彼女はヤンデレ女子高生。逆らうと殺されそうなので、渋々付き合うことになりました。(SF・空想科学)
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「ヤンデレ」というお題で書いたマーケティングSSです。
なんていうか、すいません。
* * *
カーテンの隙間から入り込むやわらかい朝日。
春めいた暖かな陽気の中、僕はゆっくりと目覚める。
同時に、ジリリリリリリ──とけたたましい音を奏で始める、枕元のスマートフォンと目覚まし時計。いや、昨日から五分早く目覚ましセットしたのに、なんで電話も一緒に鳴ってるの? 僕の行動読まれてるとか、もしかしてエスパーなの?
「はい! おはようございます華子様。もうとっくに起きておりました!」
先ずは急いで電話にでる。半分だけ嘘をついているけど、嘘をつかねばならぬ理由がそこにある。
『そう。なら、いいんだけど。今日の待ち合わせは、いつもの場所に七時五分だから』
「了解、急いで向かうよ。と言いたいんだけど、どうして待ち合わせの時間まで五分早くなっているんですかね──」
『いいのよ、細かいことは。じゃあ、宜しく』
僕の苦情は、最後まで聞かれることなくぶつ切りされた。
電話をかけてきたのは僕の彼女である華子。やや性格がキツめの女の子で、怒らせるとちょっと──いや、だいぶ怖い。
僕は急いでパジャマを脱ぎ捨てると、素早く高校の制服に着替え朝食のパンを咥えたまま、大急ぎで家を出た。
パンをかじりながらひたすらに走る。
やがて待ち合わせ場所である交差点の信号が見えてくると、歩道の端に華子が立っていた。
「おはようございます」
「五秒遅刻」
「こ、こまけえ」
「何か言った? 大丈夫よ。まだセーフティーゾーンだから」
「アウトゾーンになったらどうなるの?」
「企業秘密」
「そ、そうですか」
「じゃあ、行きましょうか」
爽やかな風が吹き、柔らかな朝陽が降り注ぐ中、彼女と二人、肩を並べて学校を目指し歩き始める。
隣を歩く、彼女の横顔に目を向ける。整った輪郭線に収まるつぶらな瞳はまるで黒曜石のよう。艶のある黒髪は肩の下までしなやかに伸び、誰の目から見ても明らかであろう美少女。
周りの人たちの目には、仲の良い、理想のカップルにでも見えるんだろうか。
「うふふ」と彼女が意味あり気な笑みを浮かべたので。
「あはは」と僕は取り繕った笑いで返す。彼女が怪訝な目を向けてきたので、無理やり口角を上げてみると、満足げな顔に変わった。
危ない、危ない。今日も自己防衛本能が上手く働いてくれてよかった。まさに自然の摂理か。本能に従い、僕が野生に帰る日も近そうだ。なんつって。
「おはよう、山田」
「ああ、おはよう」
追い抜きざまに、挨拶をしてきた同級生 (男)に手を上げて軽く返す。華子もニッコリと優しい笑みを浮かべる。男であれば無問題。あ、そう。僕の名前、山田です。
そんなこんなで他愛もない会話をしながら歩いていると、視界の前方、数人の女子高生の姿が見えてくる。
あれは同じクラスの加藤さんと田口さん。そこはかとなく嫌な予感。
「あ、山田くんだ。おーい」
くるっと振り向くと、茶髪のショートカットが春風になびく。柔和な笑みを浮かべて手を振ったのは加藤さん。
「あ、ああ。おはよう加藤さん。でも今はそっとしておいて欲しいかな……」
「随分と仲がいいのね」
「ひっ」
隣から冷酷な声音が流れてきて、一瞬で背筋がひえこむ。
「いつも私とだけ仲良くして欲しいって言ってるのに、これはどういうことなのかしら?」
「いや、彼女はただ朝の挨拶をしてきただけだから」
「私の愛情が足りないのかしら? 毎朝モーニングコールをして夜はお休みの電話をして、学校でもずっとあなたの傍らにいるのにこれ以上何が足りないのかしら?」
「いえ、もう十分足りてますので今のままでOKです」
「そう言えば加藤さんって、料理クラブ所属なんでしたっけ?」
「え? ああ、そうだけど」
「もしかして手料理? 手料理が食べたいの? あなたの両親が不在の時は必ず手料理を振る舞って来たけど、足りないのかしら? 毎日学校で食べるお弁当を作ったらよいのかしら?」
「いやいや。間に合ってるからだいじょ──」
「え、なに?」
「あ、いえ。手料理是非食べたいです。でも、学校は給食があるから弁当はいらないかな~なんて」
「あら、そう。まあいいわ。でもやっぱりムカつくから、実力で排除するわね」
そう言って彼女は左腕を外した。
これは比喩表現などではない。文字通り左腕がぽろっと取れて、そこから銃身が現れる。ああ、ヤバい!
「加藤さん! 逃げて!」
「ガトリングガンYWN(よく・わかんないけど・なんかすごい)、でいいかしら」
華子が不穏な武器名を言い左手を前方に向けると同時に、ガガガガガガガガッ……という激しい銃声が響き弾丸の雨が加藤さんと田口さんを襲う。
だがこれはあくまで威嚇射撃。銃弾は彼女らに命中することなく、二人の足元のアスファルトに吸い込まれた。
田口さん、とばっちり!
加藤さん、無実!
激しい破砕音と共に、舞い散るアスファルトの破片。
一瞬にして騒然とした空気に変わる通学路の光景。
「ふう、すっきりしたわ」
恍惚とした表情を浮かべている華子。
「いや、いくらなんでもこれは……!」
「そうね。確かに、ちょっとやりすぎたわ」
いや、ちょっとかしら、これ。
「まあ、安心して。いつものように『適当ご都合主義ビーム』で修復しておくわね」
華子がきっと睨むと目から青白いビームが照射されて、破損したアスファルトに降り注ぐ。恐怖で尻もちをついている加藤さんと田口さんを尻目に、まるで逆再生の映像でも観せられているかのように、アスファルトは瞬く間に元の形に戻った。
解説しよう。
適当ご都合主義ビームとはこの適当な名称の通り、全ての物を元ある姿に復元し、ついでに都合のよくない記憶を目撃者から任意に消去するという、作者にとって都合のよい効果を持つのだ。
それなのに、僕の記憶だけは消してくれないから、彼女に対する畏怖の念だけは積み上がっていくんだけどね!
「これで良しっと。清々したわ」
そりゃ、君はそうでしょうね。
「こんな私だけど、好きなままでいてくれる? や・ま・だ?」
いやそこは、下の名前で呼ぶところじゃないの? まあ、どうでもいいけどね……と思いつつ、「ああ、君のことが好きだ」と歯が浮くような台詞で答える。
よけいなことを口走ったら、どんな仕打ちを受けるかわからんしね。流石に自分の命は惜しい。
「あれ? 俺なにしてたんだっけ?」
と、スマホ片手に通報しようとしていたおっちゃんが記憶を消去され呆けるなか、何事も無かったかのように時が流れ始める。僕たちも歩き始める。
というか、加藤さんがめっちゃ怯えた顔でこっち見てるけど! お前加藤さんの記憶だけ消さなかったでしょ!?
自分に対する恐怖心だけ植え付けるなんて鬼畜すぎる!
もはや色々正体を隠し切れない彼女の本名は、ヤンデール・華子。
未来からやって来た、半分サイボーグ。(自称)
スーパー美少女。(本人談。一応事実)
整形は、一切していません。(本人談)いや、ほんとかよ?
なんでも僕は、彼女が住んでいる二〇××年の未来において、なんちゃら化学賞とやらを取って一躍有名になるんだとか。いや、ほんとかよ? 僕の成績、オール三だぞ?
で、態々タイムマシンを使って過去にやって来た華子の目的はというと、変な女が手をつける前に僕と関係を持って優秀な遺伝子が欲しかったんだとか。(生々しい!)
来訪初日から色仕掛けで迫られた僕は、「こ、こういうのは段階を踏んでから」としどろもどろに抵抗し、結局、渋々華子が折れるかたちで交際をすることになり今に至る。しかも最近、コイツ自身今の状況を楽しんでいる感もあり、このまま未来に帰らないんじゃね? なんて思ってる。それとなく訊いてみたら語尾濁したし。
「なあ、〇ックスしようよ。山田」
つまり彼女はこのように、種を残す目的から唐突に発情する。
「通学中だから。ご覧のように人が一杯居ますから。やめて下さい」
「えーケチ」
「ケチじゃない! 当たり前だ」
この状況下。普通は断ります。それに、君と関係を持った瞬間に殺されそうで怖いんだけど。
「ところでさ」
「うん」
「なんでいつも眼帯してんの?」
そう、どういうわけか知らないが、華子は四六時中、右目を眼帯で覆い隠している。眼帯の下になにか秘密でもあるんだろうか?
「気になる?」
「い、一応」
「私がこの眼帯を外したとき、私の秘められた力が解き放たれるのよ。だからおいそれと、外すわけにはいかないわ」
「風呂に入る時は?」
「外してます」
おいそれと外してるじゃないですか。
くくく……と彼女は右目を覆う眼帯に手を触れ怪しげに笑う。しまった、少々調子に乗らせたか。
第一、君の力、まったく秘められてないと思うんですが。なんならさっき、ダダ漏れでしたが。
「ねえ、山田?」
「ん?」
「今日の放課後なんだけど、君の家に行ってもいいかな?」
なんて上目遣いで訊いてくるから、「いや、別に構わんけど」と平静を装うも、頬が緩んでしまう。
「えへへ」
まあ、可愛いのだけはガチだから困る。ヤンデレが過ぎるし、行動は唐突だけどなんとなく許してしまう。
右手も左手も取れるけど。取れると武器、仕込まれてるけど。おまけに胸部、金属だけど。せめてここは生身にして欲しかった。マジ設計者無能。
しかしこのままじゃあ、未来が変わってしまうんじゃね? 世界線、大丈夫なの? というのも僕の悩みだったりする訳で。コイツに邪魔されなかったとしたら、僕が結婚する相手っていったい誰なんだろう……?
なんて考えているうちに学校の門が見えてくる。正面から、小柄でショーボブの可憐な女の子がやって来るのが見えた。
彼女は同じクラスの河合さん。
控えめで優しくて、地味系大人しい女子だけど、わりと男子の間では人気がある。特に僕に。
「おはよう河合さん」
「あ、おはよう山田君」
暖かい陽気のせいかな。河合さんの頬がほんのりと桜色に染まる。
その時、隣の空気が冷え込み一瞬で絶対零度に到達した。
「私以外の女に挨拶するなんて許せない。その人、誰?」
「誰って、同じクラスの」
ちゅどーん。
再び華子の暴力が炸裂する。同時に僕は、なんか色々と察した。
この後、再びご都合主義光線が炸裂したのは、もはや言うまでもない。
~END~ 絶対続きません。
なんていうか、すいません。
* * *
カーテンの隙間から入り込むやわらかい朝日。
春めいた暖かな陽気の中、僕はゆっくりと目覚める。
同時に、ジリリリリリリ──とけたたましい音を奏で始める、枕元のスマートフォンと目覚まし時計。いや、昨日から五分早く目覚ましセットしたのに、なんで電話も一緒に鳴ってるの? 僕の行動読まれてるとか、もしかしてエスパーなの?
「はい! おはようございます華子様。もうとっくに起きておりました!」
先ずは急いで電話にでる。半分だけ嘘をついているけど、嘘をつかねばならぬ理由がそこにある。
『そう。なら、いいんだけど。今日の待ち合わせは、いつもの場所に七時五分だから』
「了解、急いで向かうよ。と言いたいんだけど、どうして待ち合わせの時間まで五分早くなっているんですかね──」
『いいのよ、細かいことは。じゃあ、宜しく』
僕の苦情は、最後まで聞かれることなくぶつ切りされた。
電話をかけてきたのは僕の彼女である華子。やや性格がキツめの女の子で、怒らせるとちょっと──いや、だいぶ怖い。
僕は急いでパジャマを脱ぎ捨てると、素早く高校の制服に着替え朝食のパンを咥えたまま、大急ぎで家を出た。
パンをかじりながらひたすらに走る。
やがて待ち合わせ場所である交差点の信号が見えてくると、歩道の端に華子が立っていた。
「おはようございます」
「五秒遅刻」
「こ、こまけえ」
「何か言った? 大丈夫よ。まだセーフティーゾーンだから」
「アウトゾーンになったらどうなるの?」
「企業秘密」
「そ、そうですか」
「じゃあ、行きましょうか」
爽やかな風が吹き、柔らかな朝陽が降り注ぐ中、彼女と二人、肩を並べて学校を目指し歩き始める。
隣を歩く、彼女の横顔に目を向ける。整った輪郭線に収まるつぶらな瞳はまるで黒曜石のよう。艶のある黒髪は肩の下までしなやかに伸び、誰の目から見ても明らかであろう美少女。
周りの人たちの目には、仲の良い、理想のカップルにでも見えるんだろうか。
「うふふ」と彼女が意味あり気な笑みを浮かべたので。
「あはは」と僕は取り繕った笑いで返す。彼女が怪訝な目を向けてきたので、無理やり口角を上げてみると、満足げな顔に変わった。
危ない、危ない。今日も自己防衛本能が上手く働いてくれてよかった。まさに自然の摂理か。本能に従い、僕が野生に帰る日も近そうだ。なんつって。
「おはよう、山田」
「ああ、おはよう」
追い抜きざまに、挨拶をしてきた同級生 (男)に手を上げて軽く返す。華子もニッコリと優しい笑みを浮かべる。男であれば無問題。あ、そう。僕の名前、山田です。
そんなこんなで他愛もない会話をしながら歩いていると、視界の前方、数人の女子高生の姿が見えてくる。
あれは同じクラスの加藤さんと田口さん。そこはかとなく嫌な予感。
「あ、山田くんだ。おーい」
くるっと振り向くと、茶髪のショートカットが春風になびく。柔和な笑みを浮かべて手を振ったのは加藤さん。
「あ、ああ。おはよう加藤さん。でも今はそっとしておいて欲しいかな……」
「随分と仲がいいのね」
「ひっ」
隣から冷酷な声音が流れてきて、一瞬で背筋がひえこむ。
「いつも私とだけ仲良くして欲しいって言ってるのに、これはどういうことなのかしら?」
「いや、彼女はただ朝の挨拶をしてきただけだから」
「私の愛情が足りないのかしら? 毎朝モーニングコールをして夜はお休みの電話をして、学校でもずっとあなたの傍らにいるのにこれ以上何が足りないのかしら?」
「いえ、もう十分足りてますので今のままでOKです」
「そう言えば加藤さんって、料理クラブ所属なんでしたっけ?」
「え? ああ、そうだけど」
「もしかして手料理? 手料理が食べたいの? あなたの両親が不在の時は必ず手料理を振る舞って来たけど、足りないのかしら? 毎日学校で食べるお弁当を作ったらよいのかしら?」
「いやいや。間に合ってるからだいじょ──」
「え、なに?」
「あ、いえ。手料理是非食べたいです。でも、学校は給食があるから弁当はいらないかな~なんて」
「あら、そう。まあいいわ。でもやっぱりムカつくから、実力で排除するわね」
そう言って彼女は左腕を外した。
これは比喩表現などではない。文字通り左腕がぽろっと取れて、そこから銃身が現れる。ああ、ヤバい!
「加藤さん! 逃げて!」
「ガトリングガンYWN(よく・わかんないけど・なんかすごい)、でいいかしら」
華子が不穏な武器名を言い左手を前方に向けると同時に、ガガガガガガガガッ……という激しい銃声が響き弾丸の雨が加藤さんと田口さんを襲う。
だがこれはあくまで威嚇射撃。銃弾は彼女らに命中することなく、二人の足元のアスファルトに吸い込まれた。
田口さん、とばっちり!
加藤さん、無実!
激しい破砕音と共に、舞い散るアスファルトの破片。
一瞬にして騒然とした空気に変わる通学路の光景。
「ふう、すっきりしたわ」
恍惚とした表情を浮かべている華子。
「いや、いくらなんでもこれは……!」
「そうね。確かに、ちょっとやりすぎたわ」
いや、ちょっとかしら、これ。
「まあ、安心して。いつものように『適当ご都合主義ビーム』で修復しておくわね」
華子がきっと睨むと目から青白いビームが照射されて、破損したアスファルトに降り注ぐ。恐怖で尻もちをついている加藤さんと田口さんを尻目に、まるで逆再生の映像でも観せられているかのように、アスファルトは瞬く間に元の形に戻った。
解説しよう。
適当ご都合主義ビームとはこの適当な名称の通り、全ての物を元ある姿に復元し、ついでに都合のよくない記憶を目撃者から任意に消去するという、作者にとって都合のよい効果を持つのだ。
それなのに、僕の記憶だけは消してくれないから、彼女に対する畏怖の念だけは積み上がっていくんだけどね!
「これで良しっと。清々したわ」
そりゃ、君はそうでしょうね。
「こんな私だけど、好きなままでいてくれる? や・ま・だ?」
いやそこは、下の名前で呼ぶところじゃないの? まあ、どうでもいいけどね……と思いつつ、「ああ、君のことが好きだ」と歯が浮くような台詞で答える。
よけいなことを口走ったら、どんな仕打ちを受けるかわからんしね。流石に自分の命は惜しい。
「あれ? 俺なにしてたんだっけ?」
と、スマホ片手に通報しようとしていたおっちゃんが記憶を消去され呆けるなか、何事も無かったかのように時が流れ始める。僕たちも歩き始める。
というか、加藤さんがめっちゃ怯えた顔でこっち見てるけど! お前加藤さんの記憶だけ消さなかったでしょ!?
自分に対する恐怖心だけ植え付けるなんて鬼畜すぎる!
もはや色々正体を隠し切れない彼女の本名は、ヤンデール・華子。
未来からやって来た、半分サイボーグ。(自称)
スーパー美少女。(本人談。一応事実)
整形は、一切していません。(本人談)いや、ほんとかよ?
なんでも僕は、彼女が住んでいる二〇××年の未来において、なんちゃら化学賞とやらを取って一躍有名になるんだとか。いや、ほんとかよ? 僕の成績、オール三だぞ?
で、態々タイムマシンを使って過去にやって来た華子の目的はというと、変な女が手をつける前に僕と関係を持って優秀な遺伝子が欲しかったんだとか。(生々しい!)
来訪初日から色仕掛けで迫られた僕は、「こ、こういうのは段階を踏んでから」としどろもどろに抵抗し、結局、渋々華子が折れるかたちで交際をすることになり今に至る。しかも最近、コイツ自身今の状況を楽しんでいる感もあり、このまま未来に帰らないんじゃね? なんて思ってる。それとなく訊いてみたら語尾濁したし。
「なあ、〇ックスしようよ。山田」
つまり彼女はこのように、種を残す目的から唐突に発情する。
「通学中だから。ご覧のように人が一杯居ますから。やめて下さい」
「えーケチ」
「ケチじゃない! 当たり前だ」
この状況下。普通は断ります。それに、君と関係を持った瞬間に殺されそうで怖いんだけど。
「ところでさ」
「うん」
「なんでいつも眼帯してんの?」
そう、どういうわけか知らないが、華子は四六時中、右目を眼帯で覆い隠している。眼帯の下になにか秘密でもあるんだろうか?
「気になる?」
「い、一応」
「私がこの眼帯を外したとき、私の秘められた力が解き放たれるのよ。だからおいそれと、外すわけにはいかないわ」
「風呂に入る時は?」
「外してます」
おいそれと外してるじゃないですか。
くくく……と彼女は右目を覆う眼帯に手を触れ怪しげに笑う。しまった、少々調子に乗らせたか。
第一、君の力、まったく秘められてないと思うんですが。なんならさっき、ダダ漏れでしたが。
「ねえ、山田?」
「ん?」
「今日の放課後なんだけど、君の家に行ってもいいかな?」
なんて上目遣いで訊いてくるから、「いや、別に構わんけど」と平静を装うも、頬が緩んでしまう。
「えへへ」
まあ、可愛いのだけはガチだから困る。ヤンデレが過ぎるし、行動は唐突だけどなんとなく許してしまう。
右手も左手も取れるけど。取れると武器、仕込まれてるけど。おまけに胸部、金属だけど。せめてここは生身にして欲しかった。マジ設計者無能。
しかしこのままじゃあ、未来が変わってしまうんじゃね? 世界線、大丈夫なの? というのも僕の悩みだったりする訳で。コイツに邪魔されなかったとしたら、僕が結婚する相手っていったい誰なんだろう……?
なんて考えているうちに学校の門が見えてくる。正面から、小柄でショーボブの可憐な女の子がやって来るのが見えた。
彼女は同じクラスの河合さん。
控えめで優しくて、地味系大人しい女子だけど、わりと男子の間では人気がある。特に僕に。
「おはよう河合さん」
「あ、おはよう山田君」
暖かい陽気のせいかな。河合さんの頬がほんのりと桜色に染まる。
その時、隣の空気が冷え込み一瞬で絶対零度に到達した。
「私以外の女に挨拶するなんて許せない。その人、誰?」
「誰って、同じクラスの」
ちゅどーん。
再び華子の暴力が炸裂する。同時に僕は、なんか色々と察した。
この後、再びご都合主義光線が炸裂したのは、もはや言うまでもない。
~END~ 絶対続きません。
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