パラサイト・チェンジ ~弟を押し付けた僕が、家族を失うまで~

かおるこ

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パラサイト・チェンジ ~弟を押し付けた僕が、家族を失うまで~

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パラサイト・チェンジ

~弟を押し付けた僕が、家族を失うまで~

---

僕はただ
「良い兄」でいたかっただけだ

泣きつく母に
うなずくだけの
簡単な優しさ

「しばらく預かるだけ」

そう言えば
誰も僕を責めないと思った

---

玄関のドアが開いた夜
妻の目は
静かな冬の海だった

「相談もなし?」

僕は笑って
責任という言葉を
軽く掲げた

旗みたいに

---

弟は
部屋に沈む影だった

食事を運び
皿を下げ
洗濯をして

階段の途中で
ため息を落とす

そのうち僕は
皿も運ばなくなった

言い訳は
残業と酒と
少しの疲れ

---

僕がいない夜

家の中で
小さな音が生まれていた

子どものノック

小さな声

「れんおじさん」

閉じた扉が
少しだけ
開いたらしい

---

ある夜
誰も迎えに行けない保育園

弟は
靴を履いた

何年ぶりかの
外の空気

震える手で
子どもの手を握る

それが
この家の最初の変化だった

---

僕が帰らない夜

掃除の音
鍋の音
笑い声

静かに
誰かが
家の役割を拾っていった

僕が
落としてきたものを

---

三ヶ月後

珍しく
早く帰った夜

リビングの灯りは
柔らかく

食卓には
三つの笑顔


息子


湯気の立つ味噌汁

箸の音

僕は
ドアのところで
立ち尽くした

そこに

僕の席は
なかった

---

怒鳴った

疑った

掴みかかった

だけど

一番静かな声は
妻だった

「あなたの代わりに」

「家を支えてくれる人を選んだだけ」

---

紙一枚

離婚届

それは
裁判じゃない

ただの

結果

---

ドアが閉まる

三つの足音が
遠ざかる

残ったのは

静かな家と
住宅ローン

そして

電話の向こうの母の声

「蓮、頑張ってるって聞いたわ」

---

僕は

何をしていたんだろう

---

家はまだある

けれど

家族は

もう

いない

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