非戦闘系ギフト・箱庭で世界を救え?!そんな無茶な! でもいつの間にか救っちゃっていたようです

AnJ

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芽吹の箱庭

2人の村

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 風待月に降る雨を記憶したハイランジアの花弁の結晶ーー雫結晶ーー
 これを土に埋めると、どんなに干からびた大地でも霧雨を降らせるという奇跡の結晶。
 2人はこれを採取する為に、この辺境まで来たそうだがやはり見つからず、諦めて帰るところだったそうだ。
 なぜそんなレアな素材を、冒険者歴は長いとはいえC級のリオとD級になりたてのミナが、危険度の高いこんな場所に採りにきたのか。しかも何だか2人は焦っているように見える。


「私たち、辺鄙な村から来たって話したわよね。」

 確か道中そんな話をしていたな。そこで最初に違和感を覚えた。村とこのハイランジアの花弁の結晶と何か関係があるのか?

「俺たちの村はノーヴ村、別名<霧龍の郷>という、遥か古の時代から霧深き山々の狭間に隠されていて、龍の加護を受けた村なんだ。その霧の中で育った薬草は魔力が桁違いに多く、高値で取引される。村の主な収入源だ。自然と調和しながら癒しと再生の力を受け継いでいるここの村人にしか、その薬草と取り扱うことができないから、俺たちは<霧龍の契約者>と呼ばれているんだ。」

「だけど、10年程前から急に気候が変動しだして霧が一気に晴れてしまったの。日照りが続いて、畑も干上がってしまって……。龍神様の怒りを買って加護がなくなったのかと、それはもう大変な騒ぎになったわ。」

「だが、先祖代々龍神様を敬っているノーヴ村では、そんな自殺行為、村を滅ぼすような愚かな事をするようなバカはいない。何か原因があるはずだと、村人総出でさぐったが結局今も分からないままだ。」

「今までの備蓄分と、かろうじて採れた野草なんかで凌いでいたんだけど。。そろそろ限界かもしれない。このままじゃ、村のみんなが飢えてしまう。。
 だから、、冒険者になってハイランジアの花弁の結晶を採取して、村に持ち帰ろうって……無謀かもしれないけど……何もしないよりはいいと思って。」

 平常を装っていたミナだが、途中からは我慢できず涙ぐんでいた。

「冒険者には6歳から登録できるからな。丁度世話になってる行商のおやっさんが馬車に乗せてくれるって事で俺が先に街に出て、後からミナも追いかけてきて2人でコツコツと金を貯めては物資に変えて村に持ち帰っていたんだ。 だが、それも限界がある。村には外に出て稼げるやつが俺たち以外にいない。
 小さいか年老いているか、それ以外は村にいる皆んなを守る為に残っている。何とか乾いた土地でも作れる物がないか試行錯誤しているが、、」

 リオは毅然としているが、焦りと諦めの雰囲気が滲んでいる。
 確かにそんな状態なら眉唾物の伝説級の素材に頼りたくなるのも分かる。天候は人力ではどうにもならないものだ。
 それだけ切羽詰まった状況なのだろう。


「まだ先ほどの恩を返せていないうちに頼むのは心苦しいのだが。。
 タクミ、、この切花をどうか俺たちに売ってくれないか。頼む!」

「私からもお願い! 私たちの手持ちと、村の財産で支払うことは長老も賛成してくれるはず。足りない分は一生かけて支払っていくわ! どうか、、どうか……」

 静寂が、彼らの声を吸い込むように広がっていく。開け放した窓からの風が頬を撫でる。切花は、テーブルの真ん中でそっと揺れていた。
 その花に宿る力を、その力がなせる業を彼らは知っている。だからこそ、命を削る覚悟で願っている。
 僕は黙って二人を見つめていた。

 テーブルに頭をこすりつけてそう真剣に懇願する二人に僕は

 「切花でいいのか? 結晶もあるけど。」

 と、生成したハイランジアの雫結晶をバラバラッと二人の前に出した。

「「?!」」

「そんな大変な状況になっているのに、渡さないわけがないじゃないか。あいにく僕はこの結晶の価値を知らないし、使う予定もない。じゃあ必要としている人たちに使ってもらうのが、せっかくできたこの結晶のためにもなると思うんだ。誰かが困っている時はお互い様だ。」

「タクミ、、いやしかしこの雫結晶は市場に出したら一生どころか次の次の代まで暮らせる程の価値があるんだぞ。それを惜しげもなく俺たちに。。」

「そうよ! あなたはこの結晶の価値が分かっていなさすぎるわ! こんな簡単に見せてはだめよ!」

 なぜかまた叱られた。

「二人がこれを悪いように使うとは思えないからね。自分たちの村を本当に大事にしていて、皆を救いたいという気持ちが伝わってきたよ。僕にも村の復興を手伝わせてくれないか? そうだな、これから冒険者ギルドに行って、ノーヴ村へ観光に行く僕の護衛代ってことでどうだい?」

 にかっと笑って二人にそう告げると、二人は顔を見合わせた後、本日何度目かのまん丸になった目から大粒の涙がこぼれ落ちてきた。

「ありがとう!タクミ!」
「本当にあなたは! ありがとう!」
 
 二人は抱き合って喜んでくれた。
 
 窓から差し込む夕陽が、柔らかな橙色の光となって、木製のテーブルの上をゆっくりと染めていく。
 そこには、花弁の縁をきらめかせている一輪の切花と、内側に小さな虹を宿している淡く輝く結晶が並んでいた。






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