先輩とわたし

やわらかうさぎ

文字の大きさ
1 / 1

先輩とわたし

しおりを挟む
高校は女子が多い学校だった。
男子生徒が少ないためか、変に言い寄られることも多かった。
部活と勉強に集中したかったわたしは、クラスメイトを仮の彼女にして、
めんどうなイベントを避けていた。


映画のような恋愛にまったく共感ができず
彼女にキスをしようとすら思えなかった。


高校を卒業し、大学へ進学すると、わたしのほうから別れを告げた。
彼女は泣いていたが、わたしは何も感情が動かなかった。


大学は理系だったためか男の人が多く、彼らの熱気とその匂いにわたしは肩をすくませて小さくなっていた。
キョロキョロしているわたしに
上級生の先輩が話しかけてくれた。

少し日に焼けてて、筋肉質、低めで落ち着いた声が素敵な人だった。
彼が近くによるとレモンのいい香りがして、わたしの緊張は自然と無くなっていた。

先輩はわたしのことを初めてみたときに
「うさぎみたいで可愛い」と思ったらしい。
ここでは彼のことをうさぎ先輩と呼ぶことにする。

うさぎ先輩とはすぐに親密になった。


はじめて会ったのに、わたしたちはお互いを確かめるように何度も何度もキスをした。
そして、気がつくと先輩のにんじんを求めていた。
今まで恋愛というものがわからなかったが、これはすばらしいものだと、心の底から思った。

それからのわたしは変わった。
今まで料理に興味がなかったのに自分で作るようになった。先輩が食べたときに見せる笑顔が好きだった。
ハンバーグが好きなところも子供っぽくて可愛かった。

オシャレにも気を使うようになった。
学校では少し浮いてたけどかわいい服を着て、メイクもバレないようにしていった。先輩と同じ香水も買った。

あと、ネイルも簡単にだけど塗った。わたしは白が好きで、先輩も好きだって言ってくれた。少しの符合がほんとうにうれしかった。

それから、髪も伸ばした。毎朝ていねいにアイロンがけをして整えた。同じ学部の男の子に言い寄られたけど、わたしは先輩以外目に入らなかった。


わたしたちは小さな幸せを積み重ねた。
うさぎ先輩は年上だけど、その差など関係なく対等に接してくれた。それがすごく心地よくて、わたしたちずっと幸せに暮らせるんだろうなって思っていた。




4月になり、わたしが2回生になったころ、
先輩から別れてほしいと告げられた。
他に好きなひとができたらしい。


わたしは頭に血がのぼり、「ソイツをつれて来い」と命令した。
先輩はおどろいていたが、意外にもすなおに従った。

それは新入生で、うさぎのように怯えていた。
黒い服に、ショートカット。かわいくない。
わたしとは正反対のタイプに見えた。

新入生を睨みつけると、足を震わせ今にも逃げ出しそうだった。わたしはどんなに怖い顔をしていたんだろう…。見かねた先輩は彼の肩をやさしく抱いた。

その光景を見て直感した。もう二人は「肌を重ねたんだろうな」と。
わたしはとにかく悲しかった。先輩を寝取られたことじゃない。先輩のこころが既にこちらを向いてないとわかったから。


わたしはその場から逃げるように立ち去った。

当時、一橋大学でショッキングな事件があったことも重なり、


潤っていた
わたしの
アイデンティティは
あっけなく
瓦解した。





泣きながら家に帰ると、
わたしは目についたものを手当たりしだいに捨てた。


携帯傘、テレビのリモコン、ペンケース、
包丁、化粧水、あの香水。


涙も枯れ果てた。


わたしは、はじめて自分で髪を切った。
この一年で手先が器用になっていたから、特に違和感なくきれた。美容院代が浮いた。


服もお金をかけなくていいと気づいた。
ユニクロでそれなりに見えればいい。綺麗な店員にいらだちを隠せなかったので、以降はネットを利用することにした。

ネイルは黒にした。見ていると落ち着くから。


今だから言えるけど、わたしは酒やタバコに溺れる人をバカにしていた。
ドラッグと変わらないそれらに手を出す理由がわからなかった。
でも、そのときにやっと気づいた。バカだから吸うんじゃない。バカになりたいから始めて、そしてそのまま依存することを。






わたしはタバコに手を出した。
味なんて覚えていない。

スマホを取りボイスメモを残した。





「こんな汚い人参をしゃぶるくらいなら、
一人で強く生きていく」




俺は誓った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...