ボクのツガイは獅子獣人の王様

カムクラ

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10話

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 栄えた街の中心部、王族の宮殿の裏口に迎えの馬車がやってくる。
 
 
「それじゃあ…お世話になりました。」
 
 
 馬車の前で、迎えに来た緑鱗の竜人や国王、妃、双方の護衛に見守られながら、薄灰色の獅子の幼子を抱いたロワに深々とお辞儀をするニクス。来た時と同じ、白い清潔なローブを1枚羽織っていた。
 
 
「毎日楽しかったです。お相手になれて本当に良かった。」
 
 
 ロワを心配させまいと笑っていたが目頭は熱くなって、油断したら泣いてしまいそうだった。ニクスの長くてふわふわな尻尾は垂れて地面に引きずられていた。
 
 
「…俺もだよ。あっという間だったな。」
 
 
 男娼としてのニクスに戻り、迎えの馬車が目の前にいるというのにロワにはまだ実感が湧かなかった。荷物や部屋の整理をしている時に少し切なく思うことはあったが、日常に溶け込んでいたニクスがいなくなるというのは中々想像できなかった。
 
 
「これ、馬車に乗せてくれ。」
 
 
 ロワは側にいた使用人に大きな皮袋を運ばせた。
 
 
「気に入った子には貢がないとな。まぁ大したものじゃないが。」
 
 
 ニクスが礼を言うと、ロワは我が子と一緒に彼を抱きしめる。
 
 薄灰色の獅子の赤子は昨晩の夜泣きが夢だったようにスヤスヤと眠っていた。
 
 
「本当にありがとうニクス。」
 
 
「…ロワ様を幸せにできましたか?」
 
 
「あぁ。」
 
 
 相変わらずふわふわな彼の耳や頭を撫でる。お互いがその温もりを噛み締めて、匂いを脳裏に焼き付ける。
 
 
「いつでも会いに来い。お前の子なんだから。」
 
 
「…はい。」
 
 
 子供を少し撫でて、そして抱擁を解いた。
 
 
「またな。」
 
 
「はい、お元気で。」
 
 
 そしてニクスは竜人に連れられ馬車に乗った。ロワとダヴィドはあっという間に見えなくなり、宮殿は、街は遠くなっていき、喪失感にとらわれてため息をついた。
 
 でもこれからも繋がっていると思うと、悲しい涙は出てこなかった。
 
 
「それはなんだ?」
 
 
 隣に座っていた弟の方の竜人に促されて、大きな荷物を開ける。中にはニクスが教科書として使わせてもらっていた本とノートや毛布、買ってもらった数着の衣服と見覚えのない長方形の上質な木の箱。箱の中身は真新しい羽根ペンだった。
 
 
「こりゃすごいな…さすが王族…。インクとノートは買ってやるからなくなったら言えよ。そんなに良い物貰ったんなら、使い古すのが礼儀だろ。」
 
 
 頷いて羽根ペンをしまうと、彼は僕の頭をポンポンとたたいた。
 
 
「…てっきり本能が目覚めただけかと思ってたよ。」
   
 
「え?」
 
 
「して欲しいことがあったら言ってくれよ。それとも、もう産みたくないか?」
 
 
 ニクスは少し黙って、なんとなくお腹を撫でる。
 
 
「そう思ったこともありました。でもロワ様が側にいさせてくれて、それでロワ様がすごく喜んでくれるところとか、あの子を可愛がってくれているのところを見て、僕も嬉しかった。」
 
 
 ニクスは竜人を見た。
 
 
「お二人があの子のおかげで幸せになったって聞いて、僕の将来のことも考えてて、嬉しかった。僕のおかしな身体で誰かが幸せになれるなら、これからも使ってください。」
 
 
 彼は少し微笑んで、そしてニクスの肩を抱き寄せる。ロワが抱くような優しい感触だった。
 
 
「…お前は良い子だな。そんなお前が産んだんだ。きっとあの子もいい子になる。…本当に、感謝してるよ。それと、すまなかった。子育てもだいぶ慣れたし、これからはお前のこともちゃんと面倒見るから。」
 
 
「そんなこと…」
 
 
「お前の嫁探しも急ぐとしようか。好きなタイプとかないのか?」
 
 
「えっ、」
 
 
「ほら、同じヒョウ族が良いとか、ヒト族が良いとか、髪の色とか毛色とか色々。」
 
 
「か、考えたことなかったです…」
 
 
 帰り道は思っていたよりも賑やかだった。
 
 
 
 数日かけて屋敷に戻ってもニクスは首枷をつけられることはなく、代わりに部屋の扉の内側から鍵をかけられるようになっていた。
 
 そして戻った翌日、本を読んでいると扉がノックされる。
 
 
「…よう。」
 
 
 扉を開けると竜人の兄の方が、薄い緑と白の、彼らと違ってふわふわな竜人の幼子を抱えて立っていた。
 
 
「その子は…」
 
 
「…ちょっとばかし出かけてくるから、預かっててくれないか。庭に出てもいい。ボール遊びが好きなんだ。活発な男の子だ。」
 
 
 受け取ると、幼子は不思議そうな目でニクスを見上げた。
 
 
「お前が子供を産むことに抵抗感があることくらい俺たちにもわかっていたし、半ば強引に産ませてしまったってことも自覚してる。だから…お前は産んだ子供に愛着を持たないと思い込んでいたんだ。許嫁のこともあるし、会わせない方が良いと。……これからはお前もこの子を構ってやってくれ。」
 
 そう言って彼は部屋を去った。
 
 ロワが言ったことは弟の方から彼にも伝わっていたのだろう。その日からニクスは彼らと一緒に食事を取り、最低1日に1回は最初の子を抱き、しばしば部屋に預かった。庭や街を散歩することもあったし、チェスやトランプで遊ぶこともあった。
 
 
「ニクス、主人達が呼んでいます。」
 
 
 ある日の晩、風呂上がりに部屋でゆっくりしていると彼らの使用人に呼ばれて、竜人兄弟の部屋へ。
 
 
「おっ、来たな。」
 
 
「あの…これは…?」
 
 
 部屋にいた兄弟は一糸纏わぬ姿で、股間のスリットからは先端が尖り滑らかなカーブを描く竜人独特の肉棒がそそり立っている。情事の最中だったらしい。
 
 
「でも他に予約があるって…」
 
 
「あぁ。」
 
 
 兄の方の竜人がニクスに歩み寄る。
 
 
「俺たちの我儘だ。断ってくれてもいい。ただなんと言うか、前のあれのままで終わらせたくないのさ。だから一晩だけ付き合ってくれないか。」
 
 
「いえ嫌というわけじゃないんですけど…」
 
 
 ニクスが裸体になると、ニクスは2人に愛撫された。腹側は体毛のないすべすべした肌に抱かれ撫でられる感触はロワとは全然違うもの。しかしそれはどこか懐かしい感触で、ニクスの身体の準備もできる。
 
 
「じゃあ最初は俺ね。」
 
 
 弟の方が仰向けになってニクスを手招きする。ニクスが彼にまたがって、お腹に肉棒を根元まで飲み込んで一息ついていると兄の方に後ろから抱かれる。
 
 どうやら兄の方は弟の方と繋がったらしい。すると兄の方がニクスにわざとらしく耳打ちした。
   
 
「ニクス、こいつはな、首が弱いぞ。」
 
 
「ちょっ兄さん……あっ、ニクス駄目だって!ニクスの舌はザラザラしてるからっ……っ!」
 
 
 意図を察したニクスは口角を吊り上げて鎖骨から頭の付け根までをじっとり舐め上げた。彼は悶え、お腹の中にある肉棒がびくりと震える。
 
 
「おいおいそんなんじゃあニクスを満足させられないぞ。仕方ない、まずはお前を骨抜きししてからニクスを愉しませることにしようか。」
 
 
 兄の方は腰を動かし、同時にニクスの肉棒もしごく。兄弟が熱い接吻を交わす。終えると、弟の方が喘ぎながらニクスの頭を抱き寄せ撫でた。
 
 
「ニクス…もしこれで出来たら…次は一番最初にお前に抱かせるから…」
 
 
 その晩、ニクスはお腹の方も雄の方も何度も達した。最初に子種を仕込まれるときのような、ただ入れて出すという作業とは正反対の、快楽を第一目的とした熱い夜だった。もっと言えば、ニクスを愉しませることを第一目的としていた。
 
 
「こういうのも良いな。いっそのこと孕んじゃえば良いのに…」
 
 
「流石にまだ早いだろ。」
 
 
 3人とも枯れて、川の字に寝っ転がる。そのベッドの隣にはニクスの最初の子供が寝ている。なんとも奇妙な絵面だが、ニクスは快楽と共に実家のような安心感を抱いていた。もっとも、お腹には2人の精液が詰まっているのだが。
 
 
「…子供を産むとき、痛すぎてほとんど覚えてないんですが…お二人、ずっと僕の側にいてくれましたよね。」
 
 
 どこか懐かしい感覚になったのはそのせいだろう。
 
 
「そりゃあんな声を上げられたらな…」
 
 
「手の骨を鱗ごと握り潰されるかと思った。」
 
 
 兄の方がニクスの方を向く。
 
 
「同性愛ってだけで半分からは距離を置かれる。兄弟となれば尚更だ。だがあの子といると全てがどうでも良くなるんだ。なぁ。」
 
 
 弟も相槌を打った。
 
 
「あの時は夢中で、あまり言えなかった。ありがとうニクス。本当に感謝してる。」
 
 
「僕も…2人に拾われなかったら…きっとまだ家に閉じ込められている…それこそおかしくなっちゃってたかもしれない。僕も感謝してます。」
 
 
「やばい、惚れそう。」
 
 
「おいやめろ、ニクスには良い女性を見つけるんだ。」
 
 
 
 
 つづく
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