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三話、残る熱
しおりを挟む先手を打つように、ふっと、ノルが黒い炎を息吹く。
「閣下、アレ切ってみてください」
「わかった」
アレに物理が果たして効くだろうか。
そういう魔物もわんさかいる。
“落とし子”がどういう位置づけかはわからないが、やらないよりは、か。
飛び掛かることはないだろうが、警戒しながら這うソレに近づく。
そして、背中と思わしきそこをに剣を突き立てた。
「――ぎぃ、あ、わた、あ」
この状態で……声も発せるのか。
少々慄く。
風の加護を使用して、そのまま下に切りつける。
「ぎぃゃああああ!! ヴェ、ら」
加護であれば、効くようだ。
――が、徐々に切り離された部分が蘇っている。
(……む? 今の一撃、いつもより切れ味が――いや、加護の風が鈍い……?)
小さく首を傾げる。まさか歳のせいだろうか、と少しだけ苦笑した。
それともこの予期せぬ来訪者の特性か……。
だが、その違和感は確かにあった。
「……うう、俺、攻撃系ないので、……閣下なにかないですか?」
気分の悪そうに私の背から覗く。
「ノル……」
気持ち悪いからと、わざと私に攻撃させたな。
額に皺を寄せ、葡萄酒を一口。
口直しにもなっていなさそうだ。
ため息を吐く。
確かに彼にそういう攻撃手段はない。精神系の攻撃だ。
現に、先に与えた黒い炎の効果が効いていないことも相まって引いているのだろう。
「うむ……」
緊張感がないのはこの侵入者にそこまで戦闘能力がないと見たからだ。
風の加護も衰えているし……。
仕方ないと、魔石を使ってどうにかしようと試みる。
机に置いていた見本の資材――炎の力のこもった魔石。
それと共に己の風の加護を付与した剣で切り付ける。
陛下ほどではないが、渦巻く炎となった。
ソレは炎の中で、黒ずみとなって、やがては消滅していった。
「さすが閣下」
大した力も出していない。
が、しっかり持ち上げてくる。
「それはいい。しかし、まだ残党があるとはな」
「帝国に相談しますか? 向こうも調査と処理くらいはしっかりしたいでしょうし」
「うむ……」
確かに、魔物と言えば、それでいい。あとはギルドに殲滅の依頼でもお願いしたら、被害も費用も安く済むだろう。
帝国としても、過去の遺物は排斥したいはず。
「そうだな。頼めるか」
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