君に、炎を捧ぐⅢ〜偽りの剣と、真実の愛〜

みらい

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三十二話、ごめん、セレスタ

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 扉の先にあったのは、闇。

 けれど、何も見えないわけではない。
 薄明かりに、誰かの影が立っている。

 シアーネ。
 セレスタの生みの親……だったか。

 そして――
 その背後、黒く蠢く影。
 天井を突き破るほどの巨大な何か。
 その中に、複数の“目”が揺れていた。

「ようこそ、ヴェラノラ。あの炎は熱かった」

 折り重なった声。
 けれど、わかる。
 フォルシュトナーか。
 まだ生きていたか。

 複数の目の中。
 ぬっと灯りの元に現れたソレ。
 竜……?

 まさか。
 こいつもなれるのか……?
 いや、なれるというよりも、どうにかしてなった……という方が正しいのかもしれない。

「彼からある程度説明があった思いますが……どうですか?」
「世界を変えたい、と」
「夢をもっと叶えたい」
「魔法はイグニスだけのものじゃないと」
「人間一掃」

 竜の後ろから口々にそう語る声が聞こえた。

 言葉は、静かだった。
 まるで善意の提案のよう。
 だが――

「……聞くに値しないな」

 この闇を灯すような炎を燃やす。
 まだ、私にもあるようだ。
 いつもの真っ赤な焔ではない。

 ――黄金。
 それに。
 弱弱しいものだ。
 それでも、これは私の意思だ。

「誰かの“希望”だった。愛だった。“消し去る”ことでしか語れない夢など――私は拒絶する」
「そうですか」

 目の端でゼロが目を丸くするのが見えた。
 どこかで私が賛同するとでも思っていたのだろう。


 瞬間――
 炎を一閃した。
 手を出すつもりのなさそうなシアーネとゼロも巻き添えにするように。

「待て、ヴェラノラ!」

 ゼロがまだ説得してくれる。
 焔を浴びたはずなのに、無傷だ。
 咄嗟に私の腕を掴んだ。

 夢を見る竜もまた、大事なさそうだ。
 やはり、無謀か?
 それでも……。

 ――フォルシュトナー。
 目の前の竜は逆に残念そうに首を振っていた。
 そうして、ブレス攻撃を仕掛け始めた。
 アレは溜めが必要。

 その前に――

「邪魔だ、ゼロ」

 その声に、躊躇はなかった。
 ゼロの手を振り払い、炎を放つ。
 黄金の光線が、竜の一本の首を裂いた。

「――ぐぅ……。協力していただきたい」
「あなたが必要なんだ。君こそが“世界”の鍵なんだよ」

 ラザリの声が、直接、脳に響く。
 次の瞬間、じーーーーっという音が世界を塗り潰した。
 これか……。
 

 頭が痛い。
 視界が反転する。
 足元が崩れる。
 何もわからない。

 ――ごめん、セレスタ……。
 私、また……。

「すまないな。やはり、俺は……」

 レイに似たゼロが何かを呟きかけ、やめた。
 そして、顔に何かを被せた。

 夢へと――
 落ちて。
 堕ちていった。

 きっとまた、手を繋いでくれると信じて。

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