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四十話、それでも行けない
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*ゼロ視点
ヴェラノラ。
――ヴェラノラ。
「くそっ」
どうしても向こうに行けない。
操られた兄弟のせいで。
初めて見たが、精神干渉の加護は強力すぎる。
確か、リリエルも苦戦していた気がする。
あの時は興が乗らなかった。
リリエルが横取りしたから。
尚且つヴェラノラを見て、傍らにいる者に嫉妬して……。
今は違う。
しかし、――近くて遠い。
目の前の男に阻止される。
それでも、どこか隙があるはず。
ゆっくり近づく黒い影。
幻だとしても手ごたえがある。
無駄に疲労している場合ではないのに。
しかし……。
――あるのか?
弱点が。
ごくりと生唾を飲む。
「君は向こうでセレスタちゃんと戦ってヴェラノラでも奪って来なよ」
父は案外悠長で。
イライラする。
「そのつもりだ」
兄弟たちには申し訳ないが、殴り、魔導銃を放つ。
道が開けた――。
そう思った矢先。
奴が現れた。
バリストンだったか。
急に、だ。
即銃をお見舞いしてやる。
――が、すぐに溶けて消えた。
幻……?
厄介すぎる相手だ。
最初にいたはずの場所を向く。
「こっちだ」
髪がふわりと見えた。
あの黒い剣は触れてはいけない。
これはただの直感――
それでも合っているはず。
ただの剣じゃない。
「――っ!!」
どうにか躱し、引き金を引く。
しかし、剣に阻まれた。
「ふっ……その顔だと、調子が狂うが――懐かしいな。よく手合わせしていたよ」
「だまれ」
比べられたくはない。
幸せだったやつと。
――また、来る。
俺と黒衣の男の間に土壁が盛り上がった。
父だ。
「まだ向こう行ってなかったの? 僕はノルとやりたいんだから……」
「じゃあ、奴を止めてくれ」
「いやあ、それも無理そうなんだよね」
確かに、手強い。
この人は一度やられている。
こうは言っても、実のところいて欲しいのだろう。
……と言っても、楽しそうではあるのだが。
「弱点でも、あればいいのだがな」
「あるよ多分」
シアーネが笑う。言い切らない。
まるで“知っている”者の余裕で。
――何だよ、それ。
わかってるくせに、言わない。
わかっているとでも思っているのか。
自分で探せと。
こういうところも不快だ。
それに己の存在意義を俺が生まれたことで埋めるのも。
しまいには、「ずっと君とこのままダンスに勤しむのもアリだね」と敵に向かって伝える始末。
こいつがこうなら、と再びヴェラノラの元へと行こうとする。
しかし、父の銃弾を退けてから、こちらに炎を向けられる。
近づけない。
いや、近づこうとすればするほど、彼の剣先が俺の視線を遮るように伸びてくる。
まるで、『お前が誰に手を伸ばそうとしているのか分かっている』とでも言うように。
「……ああ、くそ……」
何となく、分かっている。
――そして、俺は気づいてしまった。
あの男の剣は、自分を守るためではなく、“あいつ”を守るためにあるということに。
……気付いてはいる。
弱点を突くにしても、彼女達の戦いに割り込まなければならない。が、行くとしても、阻まれる。
困るな、めんどうな相手だ。
人知れずため息を吐いて、彼女を視界に入れた。
ヴェラノラ。
――ヴェラノラ。
「くそっ」
どうしても向こうに行けない。
操られた兄弟のせいで。
初めて見たが、精神干渉の加護は強力すぎる。
確か、リリエルも苦戦していた気がする。
あの時は興が乗らなかった。
リリエルが横取りしたから。
尚且つヴェラノラを見て、傍らにいる者に嫉妬して……。
今は違う。
しかし、――近くて遠い。
目の前の男に阻止される。
それでも、どこか隙があるはず。
ゆっくり近づく黒い影。
幻だとしても手ごたえがある。
無駄に疲労している場合ではないのに。
しかし……。
――あるのか?
弱点が。
ごくりと生唾を飲む。
「君は向こうでセレスタちゃんと戦ってヴェラノラでも奪って来なよ」
父は案外悠長で。
イライラする。
「そのつもりだ」
兄弟たちには申し訳ないが、殴り、魔導銃を放つ。
道が開けた――。
そう思った矢先。
奴が現れた。
バリストンだったか。
急に、だ。
即銃をお見舞いしてやる。
――が、すぐに溶けて消えた。
幻……?
厄介すぎる相手だ。
最初にいたはずの場所を向く。
「こっちだ」
髪がふわりと見えた。
あの黒い剣は触れてはいけない。
これはただの直感――
それでも合っているはず。
ただの剣じゃない。
「――っ!!」
どうにか躱し、引き金を引く。
しかし、剣に阻まれた。
「ふっ……その顔だと、調子が狂うが――懐かしいな。よく手合わせしていたよ」
「だまれ」
比べられたくはない。
幸せだったやつと。
――また、来る。
俺と黒衣の男の間に土壁が盛り上がった。
父だ。
「まだ向こう行ってなかったの? 僕はノルとやりたいんだから……」
「じゃあ、奴を止めてくれ」
「いやあ、それも無理そうなんだよね」
確かに、手強い。
この人は一度やられている。
こうは言っても、実のところいて欲しいのだろう。
……と言っても、楽しそうではあるのだが。
「弱点でも、あればいいのだがな」
「あるよ多分」
シアーネが笑う。言い切らない。
まるで“知っている”者の余裕で。
――何だよ、それ。
わかってるくせに、言わない。
わかっているとでも思っているのか。
自分で探せと。
こういうところも不快だ。
それに己の存在意義を俺が生まれたことで埋めるのも。
しまいには、「ずっと君とこのままダンスに勤しむのもアリだね」と敵に向かって伝える始末。
こいつがこうなら、と再びヴェラノラの元へと行こうとする。
しかし、父の銃弾を退けてから、こちらに炎を向けられる。
近づけない。
いや、近づこうとすればするほど、彼の剣先が俺の視線を遮るように伸びてくる。
まるで、『お前が誰に手を伸ばそうとしているのか分かっている』とでも言うように。
「……ああ、くそ……」
何となく、分かっている。
――そして、俺は気づいてしまった。
あの男の剣は、自分を守るためではなく、“あいつ”を守るためにあるということに。
……気付いてはいる。
弱点を突くにしても、彼女達の戦いに割り込まなければならない。が、行くとしても、阻まれる。
困るな、めんどうな相手だ。
人知れずため息を吐いて、彼女を視界に入れた。
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