君に、炎を捧ぐⅢ〜偽りの剣と、真実の愛〜

みらい

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四十六話、壊して撫でて

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*シアーネ視点

「ノル?」

 膝から崩れ落ちた彼を呼ぶ。
 それでも反応はない。

 口角が上がる。
 これは僕のモノだ。

 簡単だった。
 最初から、大切なものを壊せばよかったんだ。

 顎をあげる。
 光がないのに、綺麗な月色の瞳が潤んでとても綺麗だった。
 でも、どこかで見た気がする。
 幼い時にまぐわった時だっただろうか?

 まあ、いいや。
 また、同じ顔をして、壊れてくれる。

「あはは……ノル、ちゃんと見ておこう?」

 頭を垂れた彼を連れていく。  
 素直に引きずられる彼が可愛い。  
 ずっとこのままでいいのに。

 それでも応答が欲しい。
 いつもみたいに皮肉でも行ってほしいのだけれど……。

「目、閉じててもいいよ。  
 僕がちゃんと、見てあげるから」

 返答はない。

 だから――
 バキッ、と頬を殴った。  

 口から血が流れていたから、頬に伸ばして撫でる。
 君には、赤が映える。
 それをわかっているから。
 それでも――。

「ああ……つまんない」

 それでもいい。  
 このまま、夢の中で壊れていけばいい。  
 だって、君は現実を壊す側じゃない。  
 壊される側なんだ。

 ……そういえば、昔もこうして君の髪を撫でたね。
 あのときは震えて、泣いて、でも目は――生きていた。
 今は、何もないね。
 やっぱり、綺麗だよ。

「愛が重いと、脆いのか。  君、守って壊すのは上手だったね」

 セレスタちゃんの前に行こうとしたら、抵抗があった。

「……おかしいな。まだ意識あるんでしょ? 行こう、って言っているのに」

 もう一度殴ってあげて、長くて綺麗な髪を撫でてそのまま掴む。
 そのまま引き摺っていった。

「ほら、おいでよ。着いたよ。どう?」

 それでも反応はない。
 だから、手を合わせてあげた。
 でも、掴んでいるようで、――掴んでいなかった。
 人形遊びをしているみたい。

「……本当は僕も、壊されてたのかな。君に出会った時から、ずっと」

 ひらりと意味もなく、蝶が飛んでいった。
 ノル自身がなにできないから、ただ舞うだけ。ほうっておこう。

 それよりも――  

「また愛してあげよう。僕が」



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