君に、炎を捧ぐⅢ〜偽りの剣と、真実の愛〜

みらい

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四十七話、冠を被った蛇

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*ヴァルセリアス視点

「ああ……やっと、静かになった」
「君には、聞こえないか。加護が、世界の規範を喰らう音が」
「僕の夢を――君たちの正義で終わらせられるとでも?」

 砂を蹴る。
 三本になってから、随分喋るようになった。
 それに、意識もしっかりしている。

 ――めんどうになってきたな。

 地面に残る雷痕が、黒く煙を上げていた。

「蛇め」
「蛇? 違うな。僕は冠を被った存在になったんだよ。ようやく、ね」
「それが世界を焼く冠か」

 返答を待たず、殿下が雷槍を掲げた。

 三首が地を滑るように移動する。
 放たれる雷――それを一つの首が身を挺して受け止めた。

「無駄だよ。僕は、分かれていても、今は一つの意志で動いている」
「ならば、一つ残らず消せばいいだけだ」

 雷鳴が轟く。
 胴体でも狙おうか。
 そう思い、雷光を巡らす。
 ――が、首がかみ砕くように退ける。

「残念。狙いは良い」

 褒められるのも不快だ。

 しかし――
 この者だけを相手取るわけにはいかなくなった。
 実験体たちがこちらにも攻めて来ていた。
 我の中の加護が目当て……そんな本能だけで突進してきている。

 向こうはどうだろうか?
 ノルの能力の黒い蝶もいつの間にか見なくなった。
 操る隙がなくなった……それだけならいいが。

 二つの首がうねる。
 もう一つの首は、ブレス攻撃をしてくるようだ。
 阻止しようにも、その二つの首がこちらをその場に留めさせようとしてくる。
 そのうえ実験体の処理にも追われる。
 雷光のように移動しても、すぐに追いかけてくる。


「夢が私を変えた」
「夢が現実になった」

 未だ妄言を吐く二頭。

 ――間に合わない。

 一歩、遅れた。
 実験体が、足に絡みついたのだ。
 噛んでくる感触に、以前夢で見た竜の記憶が蘇る。
 ――生きたまま、己の血肉を食らう獣たち。

 いや、まだだ。
 雷を落とし、どうにかその拘束から遁れた――が、来る。
 あの三首のうちの一本が、口を開いた。
 空気が歪むほどの熱量。風が逆流する。

 このままでは――

 雷光すら追いつけぬ、溜めの一撃。
 反応しきれず、ブレスを真正面から受ける。

 爆風が吹き上がり、地が裂け、煙が視界を奪った。

「……ぐ、ぅ」

 それでも、崩れながらも立つ。
 容易には膝をつくものか。
 
 
「――発射、第一砲!」

 遠方から響く、雷にも似た咆哮。
 空が震え、何かが吹き飛んだ。

「……ふ。人間側も一筋縄ではいかぬな」

 あの旗。
 恐らく帝国軍。
 報せは行っていないはずだが……。
 ノルが口添えでもしてきたのだろうか。

 我でもここまでかと思ったが、助かった。

 ――まだ、戦いは終わっていない。

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