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八十話、幻花散る時
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――キュイイイイッ。
セレスタの咆哮――青のブレスが空を裂き、私はその音で現実に引き戻された。
すぐさま、炎の柱を編み、黒き半竜へ向けて全力で撃ち放つ。
精神は削られていたはずなのに、不思議と炎はまだ、燃えてくれる。
私の攻撃は、バリストンが空中で受け止めた。
だが次の瞬間、セレスタの一撃が黒焱の剣を吹き飛ばしていた。
「……ふふ、優しいな。俺は……焼かれないのか」
余裕ぶって笑っているが――その声には、覇気がない。
どこか、壊れかけた硝子のように、ひび割れていた。
バリストンがふわりと地上に降り立つ。
その直後、セレスタが私の隣へと舞い降りた。
彼の手には、黒焱に代わって溶岩の剣。
けれど、その柄を握る指先は、微かに震えている。
――怯えている……?
ドラゴンを制御できなかったことへの、焦燥か。
それとも……セレスタの意思が、彼の心を削ったのか。
「――レイ、なんで……俺の言うこと、聞かないんだよ……
“従え”って言っただろ……俺の……命なんだろ、レイは……!」
「戯言を。縛っていたのは、おまえ自身だ」
「……っ」
返された言葉に、バリストンが肩を揺らす。
深く、荒い呼吸。
いつもの不敵な笑みはもうない。
私が足止めされていた間、セレスタは戦っていた。
……本当に、強い子だ。
苦し紛れに、バリストンは黒い蝶を散らす。
幻影の魔物たちが舞い上がる。
――けれど、それも。
セレスタの軽やかな一撃で、すべて掻き消された。
再び、彼女がブレスを放つ。
私も、残された力を振り絞り、炎を解き放つ。
桔梗色の輝きが空に走り、私たちの炎が共鳴する。
その光が、黒の影を焼き払い、夜を切り裂いていく。
バリストンは、まだ剣を構えていた。
だが――その腕は震えていた。
構えは、もはや攻撃のそれではない。
片膝が崩れかけている。
そして、顔を上げることすらしなかった。
ただ、俯いて。
その唇が、何かを紡ごうとしていた。
音には、ならなかった。
けれど――その震える口許が、「セレスタ」と呼んだように見えた。
罰を、正面から受けるために。
ただ、それだけの意志で。
そして――閃光が、彼を貫いた。
セレスタの月灯の瞳が見開かれる。
バリストンの右目に咲いた、幻の薔薇――
その花弁が、一枚、静かに散る。
それは、贖罪を乞うような祈り。
それとも、もう逃げられないと悟った者の、最後の赦し。
崩れかけていた暗示が、音を立てて砕ける。
そのまま彼の身体ごと、溶岩の穴へと――落ちて、堕ちていった。
セレスタの咆哮――青のブレスが空を裂き、私はその音で現実に引き戻された。
すぐさま、炎の柱を編み、黒き半竜へ向けて全力で撃ち放つ。
精神は削られていたはずなのに、不思議と炎はまだ、燃えてくれる。
私の攻撃は、バリストンが空中で受け止めた。
だが次の瞬間、セレスタの一撃が黒焱の剣を吹き飛ばしていた。
「……ふふ、優しいな。俺は……焼かれないのか」
余裕ぶって笑っているが――その声には、覇気がない。
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けれど、その柄を握る指先は、微かに震えている。
――怯えている……?
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それとも……セレスタの意思が、彼の心を削ったのか。
「――レイ、なんで……俺の言うこと、聞かないんだよ……
“従え”って言っただろ……俺の……命なんだろ、レイは……!」
「戯言を。縛っていたのは、おまえ自身だ」
「……っ」
返された言葉に、バリストンが肩を揺らす。
深く、荒い呼吸。
いつもの不敵な笑みはもうない。
私が足止めされていた間、セレスタは戦っていた。
……本当に、強い子だ。
苦し紛れに、バリストンは黒い蝶を散らす。
幻影の魔物たちが舞い上がる。
――けれど、それも。
セレスタの軽やかな一撃で、すべて掻き消された。
再び、彼女がブレスを放つ。
私も、残された力を振り絞り、炎を解き放つ。
桔梗色の輝きが空に走り、私たちの炎が共鳴する。
その光が、黒の影を焼き払い、夜を切り裂いていく。
バリストンは、まだ剣を構えていた。
だが――その腕は震えていた。
構えは、もはや攻撃のそれではない。
片膝が崩れかけている。
そして、顔を上げることすらしなかった。
ただ、俯いて。
その唇が、何かを紡ごうとしていた。
音には、ならなかった。
けれど――その震える口許が、「セレスタ」と呼んだように見えた。
罰を、正面から受けるために。
ただ、それだけの意志で。
そして――閃光が、彼を貫いた。
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その花弁が、一枚、静かに散る。
それは、贖罪を乞うような祈り。
それとも、もう逃げられないと悟った者の、最後の赦し。
崩れかけていた暗示が、音を立てて砕ける。
そのまま彼の身体ごと、溶岩の穴へと――落ちて、堕ちていった。
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