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未来への不安
ノエルは落ち着くと、ようやく周囲に気を配る余裕が出来た。
窓の外を見ると、もう暗くなっていた。
「もうこんなに暗くなっちゃって……ここは予定していた宿? もしかして遅れてる?」
「少しね。でも今は急ぐよりゆっくりと進む方がいい。それより、何か食べられそうか?」
ノエルは首を横に振る。
「アランはオムロさんと食事に行って来て。オムロさんも大丈夫だった?」
「ああ。オムロもやり手だからな。強かっただろ?」
「うん。驚いた。御者さんなのに」
「サーシャが無理だと分かった時に、ギルド長が万が一の時に戦える御者を用意したんだよ」
「そうだったんだ。ギルド長にお礼を言わないと」
「そもそもこちらが契約を守れなかったんだから。こちらがお詫びをしないといけないんだから気にしないで欲しい。この後はもう危険な道はないはずだ。二人で守るから安心してほしい」
「うん。お願いします」
結局全く食欲のないノエルのためにアランはスープを運んできてくれた。
三人で一緒にと思ったが、オムロはノエルに気を遣わずゆっくりしてほしいと自室に戻ったらしい。
その反対にアランは不安だろうからとそのままそばにいてくれることになり、ノエルは会ってまだ間もないのに二人のそれぞれの心遣いがうれしかった。
ノエルはスープを飲みながら明日の行動予定やラクロワ国の話をアランに聞いた。
アランの方もノエルの気が事件から少しでも逸れるようにとラクロワ国の名物や観光名所など明るい話題を出すなど気を遣ってくれていた。
しかし、メローランド国出立の時に胸に抱いていた希望とわくわくした気持ちはもうすっかりしぼんでしまっていた。
一歩、世界に踏み出すと世の中にはどれほど危険なことがあふれているのか思い知り、ノエルは自分の甘さと情けなさを痛感していた。
これまで仕事で成果を上げ少々自信もあったが、自分は社会のことを何も知らない井の中の蛙だった。
ラクロワ国に来れば、すぐに現地で人を雇い、生活の基盤を整えよう思っていた。
しかし、盗賊に襲われたせいですべてが怖くなってしまったのだ。
使用人にしても事業スタッフにしても見ず知らずの人物を雇うこととなる。
この国にはつてもなく、知り合いもいない。
雇う人物がどんな人間かわからず、万が一悪意を持った人間が来てしまったら防ぎようもない。
疎ましく思っていた実家だったが、それでも見知った者達に囲まれての生活がどれほど安心と安全を与えてくれていたのか思い知った。
事業の成功でさえ、母が懇意にしてきた貴族や商人がいてくれたおかげだ。もともと既知の相手で、その人と為りを知った上での付き合いであり、彼らから紹介された人物たちとお膳立てされた安全な取引をしていただけなのだ。
これから異国の誰も知らない土地で、また一から事業を立ち上げようとも考えていた。
しかしノエルは事業者として少しは有名となっていたが、そんなものはすでにあった恩恵を受けて成功しただけで自分一人では何一つなしえない青二才なのだと、すっかり自信を失ってしまった。
実際にはノエルの人柄と取り組む姿勢が人を引き寄せアイデアや手腕もあるのだが、今回のことですっかり臆病になり、自分を否定しどんどん後ろ向きになっていった。
それでも元の生活に戻る気はない。これからはこの国で生活していくのだ。
仕事の方はもう少しこの国に慣れ、この国のことがわかるまでゆっくりすればいいかと考える。しかし生活は待ったなしなのである。
一人で暮らすことも怖い。でも見知らぬ使用人を雇うのも怖い。
今頼りになるのは……
「アラン、この仕事の次の仕事入ってるの?」
「いや、決まっていない」
「もしよかったら、引き続き依頼を受けてもらえない? メイドや使用人までは手配してもらってなくて、明日から新居で一人なんだ。ちょっと怖くて……信頼できる人を雇用するまでお願いできないかな」
アランは少し驚いた顔をしたがすぐに快諾をしてくれた。
「もちろん。君が安心して生活できるようになるまで力になるよ。ラクロワには少々つてもあるし」
「ありがとう!」
ノエルはほっとし、胸の中にうずまく不安が少し軽くなる気がした。
「今日は本当にありがとう、明日に備えてゆっくり寝てね」
「そうだな」
アランは食べたものを簡単に片付けるとまたソファーに座った。
「今日はここで寝ていいか」
「え?」
「ここのソファーを貸してくれればいいから。少しは安心できるだろ?」
「でもアランだって今日は大変だったんだから、自分のベッドでゆっくりと寝てきてよ。僕大丈夫だから」
「君を一人に出来ないよ。こんな時ぐらい、気にせず人に頼ったり、人の好意に甘えていいんだよ」
アランはノエルが無意識に盗賊に掴まれてできた痣を振るえる手でさすっているのを見ていたのだ。
「甘える……」
ノエルはこれまで甘えたことがなかった、甘えかたがわからなかった。
それが婚約者にも可愛げがないと思われていたのだろうけど。
「甘えたことがないから……よくわからない。アランに迷惑かけるのが悪いよ」
「依頼人に安心を提供するのも俺の仕事のうちだから。そう思えば気が楽だろう?」
「うん……ありがとう」
これまで家族のだれ一人として、婚約者でさえ気遣ってくれることがなかった。
アランの言葉はノエルの心に深く染みいった。
「じゃあ、お願いします。でもソファーは駄目だよ、明日も移動なんだから。このベッドなら二人でも大丈夫なんじゃない?」
「それはありがたいが、遠慮しておこう。君こそ今日は気を遣わずゆっくり眠ったほうがいい」
「辛くない?」
「ときには馬車の中で寝たり野宿だってする。ソファーなんて上等な部類だよ。それに今日は遅くまで起きていると思うから気にしないでくれ」
ノエルははっとしたように顔を一瞬だけゆがめたがすぐに笑顔を見せた。
「わかった。ありがとう。僕明かりがついていても気にならないから気にしないでランプ付けていていいからね」
いくら平気だと言っても、実際人を切った後に心穏やかに眠ることなんてできないはず。
ノエルはそれに思い至りアランの好きにしてもらった。
ノエルはベッドに入り、目を閉じたがやはりすぐに眠ることはできなかった。
それでも今日一日疲れ切っていたこともあり、アランが同じ部屋にいてくれる気配とアランが淹れた紅茶の香りを感じているうちに眠りに落ちた。
が。
怖い夢を見てすぐに飛び起きてしまい、思わず手首と首を押さえる。
「大丈夫か?」
すぐにアランが駆け寄ってくれる。
「うん。ちょっと夢見ただけ。驚かせてごめん」
また呼吸が乱れるノエルの背中をゆっくりとさすってくれる。
「よかったら少し飲むかい?」
いつの間にか、アランは酒を持ち込んでいた。
「飲んだことない」
「こいつは辛い気持ちを少し和らげてくれるよ。ちょっとだけ試してみたら?」
「うん」
ノエルは恐る恐るグラスに口をつけた。
一口口に含むとクワッとした熱さと独特の香りが広がる。
「うっ。ちょっときついかも」
「なめるくらいでいいんだよ」
そう言いながらアランはこくんと飲んでいる。
「すごいね」
「旅のお供だ。エルはもうやめた方がいいかもしれない、一口で真っ赤だよ」
「うん、そうする」
体が熱くなり、頭がふわっとした感じがしてくる。先ほどまでの怖さが霧散していく。
「眠れそう?」
「うん、大丈夫みたい。ありがとう」
「そうだ、このソファー思ったより小さくてきついんだ。ベッドに入らせてもらっていいだろうか」
先ほど固辞したアランが、申し訳なさそうに言う。
「え? もちろんだよ」
アランがベッドに入ると、それほど大きくないベッドでは体が触れ合う。
ノエルは昼間の恐ろしい光景が浮かびそうになるたび、自分の体に伝わるアランの温かさが不安と恐怖を押し流してくれるのを感じた。
もしかして、僕のために一緒に寝てくれたのかな……そう思うと心が温まる。
おかげですぐに眠気を感じ、朝まで怖い夢にうなされずに済んだのだった。
窓の外を見ると、もう暗くなっていた。
「もうこんなに暗くなっちゃって……ここは予定していた宿? もしかして遅れてる?」
「少しね。でも今は急ぐよりゆっくりと進む方がいい。それより、何か食べられそうか?」
ノエルは首を横に振る。
「アランはオムロさんと食事に行って来て。オムロさんも大丈夫だった?」
「ああ。オムロもやり手だからな。強かっただろ?」
「うん。驚いた。御者さんなのに」
「サーシャが無理だと分かった時に、ギルド長が万が一の時に戦える御者を用意したんだよ」
「そうだったんだ。ギルド長にお礼を言わないと」
「そもそもこちらが契約を守れなかったんだから。こちらがお詫びをしないといけないんだから気にしないで欲しい。この後はもう危険な道はないはずだ。二人で守るから安心してほしい」
「うん。お願いします」
結局全く食欲のないノエルのためにアランはスープを運んできてくれた。
三人で一緒にと思ったが、オムロはノエルに気を遣わずゆっくりしてほしいと自室に戻ったらしい。
その反対にアランは不安だろうからとそのままそばにいてくれることになり、ノエルは会ってまだ間もないのに二人のそれぞれの心遣いがうれしかった。
ノエルはスープを飲みながら明日の行動予定やラクロワ国の話をアランに聞いた。
アランの方もノエルの気が事件から少しでも逸れるようにとラクロワ国の名物や観光名所など明るい話題を出すなど気を遣ってくれていた。
しかし、メローランド国出立の時に胸に抱いていた希望とわくわくした気持ちはもうすっかりしぼんでしまっていた。
一歩、世界に踏み出すと世の中にはどれほど危険なことがあふれているのか思い知り、ノエルは自分の甘さと情けなさを痛感していた。
これまで仕事で成果を上げ少々自信もあったが、自分は社会のことを何も知らない井の中の蛙だった。
ラクロワ国に来れば、すぐに現地で人を雇い、生活の基盤を整えよう思っていた。
しかし、盗賊に襲われたせいですべてが怖くなってしまったのだ。
使用人にしても事業スタッフにしても見ず知らずの人物を雇うこととなる。
この国にはつてもなく、知り合いもいない。
雇う人物がどんな人間かわからず、万が一悪意を持った人間が来てしまったら防ぎようもない。
疎ましく思っていた実家だったが、それでも見知った者達に囲まれての生活がどれほど安心と安全を与えてくれていたのか思い知った。
事業の成功でさえ、母が懇意にしてきた貴族や商人がいてくれたおかげだ。もともと既知の相手で、その人と為りを知った上での付き合いであり、彼らから紹介された人物たちとお膳立てされた安全な取引をしていただけなのだ。
これから異国の誰も知らない土地で、また一から事業を立ち上げようとも考えていた。
しかしノエルは事業者として少しは有名となっていたが、そんなものはすでにあった恩恵を受けて成功しただけで自分一人では何一つなしえない青二才なのだと、すっかり自信を失ってしまった。
実際にはノエルの人柄と取り組む姿勢が人を引き寄せアイデアや手腕もあるのだが、今回のことですっかり臆病になり、自分を否定しどんどん後ろ向きになっていった。
それでも元の生活に戻る気はない。これからはこの国で生活していくのだ。
仕事の方はもう少しこの国に慣れ、この国のことがわかるまでゆっくりすればいいかと考える。しかし生活は待ったなしなのである。
一人で暮らすことも怖い。でも見知らぬ使用人を雇うのも怖い。
今頼りになるのは……
「アラン、この仕事の次の仕事入ってるの?」
「いや、決まっていない」
「もしよかったら、引き続き依頼を受けてもらえない? メイドや使用人までは手配してもらってなくて、明日から新居で一人なんだ。ちょっと怖くて……信頼できる人を雇用するまでお願いできないかな」
アランは少し驚いた顔をしたがすぐに快諾をしてくれた。
「もちろん。君が安心して生活できるようになるまで力になるよ。ラクロワには少々つてもあるし」
「ありがとう!」
ノエルはほっとし、胸の中にうずまく不安が少し軽くなる気がした。
「今日は本当にありがとう、明日に備えてゆっくり寝てね」
「そうだな」
アランは食べたものを簡単に片付けるとまたソファーに座った。
「今日はここで寝ていいか」
「え?」
「ここのソファーを貸してくれればいいから。少しは安心できるだろ?」
「でもアランだって今日は大変だったんだから、自分のベッドでゆっくりと寝てきてよ。僕大丈夫だから」
「君を一人に出来ないよ。こんな時ぐらい、気にせず人に頼ったり、人の好意に甘えていいんだよ」
アランはノエルが無意識に盗賊に掴まれてできた痣を振るえる手でさすっているのを見ていたのだ。
「甘える……」
ノエルはこれまで甘えたことがなかった、甘えかたがわからなかった。
それが婚約者にも可愛げがないと思われていたのだろうけど。
「甘えたことがないから……よくわからない。アランに迷惑かけるのが悪いよ」
「依頼人に安心を提供するのも俺の仕事のうちだから。そう思えば気が楽だろう?」
「うん……ありがとう」
これまで家族のだれ一人として、婚約者でさえ気遣ってくれることがなかった。
アランの言葉はノエルの心に深く染みいった。
「じゃあ、お願いします。でもソファーは駄目だよ、明日も移動なんだから。このベッドなら二人でも大丈夫なんじゃない?」
「それはありがたいが、遠慮しておこう。君こそ今日は気を遣わずゆっくり眠ったほうがいい」
「辛くない?」
「ときには馬車の中で寝たり野宿だってする。ソファーなんて上等な部類だよ。それに今日は遅くまで起きていると思うから気にしないでくれ」
ノエルははっとしたように顔を一瞬だけゆがめたがすぐに笑顔を見せた。
「わかった。ありがとう。僕明かりがついていても気にならないから気にしないでランプ付けていていいからね」
いくら平気だと言っても、実際人を切った後に心穏やかに眠ることなんてできないはず。
ノエルはそれに思い至りアランの好きにしてもらった。
ノエルはベッドに入り、目を閉じたがやはりすぐに眠ることはできなかった。
それでも今日一日疲れ切っていたこともあり、アランが同じ部屋にいてくれる気配とアランが淹れた紅茶の香りを感じているうちに眠りに落ちた。
が。
怖い夢を見てすぐに飛び起きてしまい、思わず手首と首を押さえる。
「大丈夫か?」
すぐにアランが駆け寄ってくれる。
「うん。ちょっと夢見ただけ。驚かせてごめん」
また呼吸が乱れるノエルの背中をゆっくりとさすってくれる。
「よかったら少し飲むかい?」
いつの間にか、アランは酒を持ち込んでいた。
「飲んだことない」
「こいつは辛い気持ちを少し和らげてくれるよ。ちょっとだけ試してみたら?」
「うん」
ノエルは恐る恐るグラスに口をつけた。
一口口に含むとクワッとした熱さと独特の香りが広がる。
「うっ。ちょっときついかも」
「なめるくらいでいいんだよ」
そう言いながらアランはこくんと飲んでいる。
「すごいね」
「旅のお供だ。エルはもうやめた方がいいかもしれない、一口で真っ赤だよ」
「うん、そうする」
体が熱くなり、頭がふわっとした感じがしてくる。先ほどまでの怖さが霧散していく。
「眠れそう?」
「うん、大丈夫みたい。ありがとう」
「そうだ、このソファー思ったより小さくてきついんだ。ベッドに入らせてもらっていいだろうか」
先ほど固辞したアランが、申し訳なさそうに言う。
「え? もちろんだよ」
アランがベッドに入ると、それほど大きくないベッドでは体が触れ合う。
ノエルは昼間の恐ろしい光景が浮かびそうになるたび、自分の体に伝わるアランの温かさが不安と恐怖を押し流してくれるのを感じた。
もしかして、僕のために一緒に寝てくれたのかな……そう思うと心が温まる。
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◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。