12 / 46
新天地
翌日、ラクロワ国の新居に無事到着した。
オムロにも、契約の延長の話を持ちかけたが仕事が入っているとかでアランだけが残ってくれることになったのだ。オムロとはここでお別れになるが、命がけで自分を守ってくれたオムロとも別れがたかった。
「オムロさん、本当にありがとうございました。少し中で休憩されませんか?」
ノエルは声をかけた。
「うれしいお誘いですね」
「ここまでずっと一人で頑張ってくださったし、お疲れでしょう」
「エルさんは優しいですね。やっぱり僕もこのままこの国にとどまろうかなあ」
オムロがそう言って笑うと、ノエルの横に立っているアランの目がつり上がる。
「やだなあ、冗談ですよ。エルさん、僕はこれからこの国のギルドに顔を出してきます。メローランド国への荷運びとかあれば、無駄になりませんからね」
「そうですか、とっても残念ですが。この国に来るときは必ず会いに来てくださいね」
「ええ、ありがとうございます。ではエルさんの新しい人生を応援しています」
オムロは笑顔を残して去っていった。
「ああ、行っちゃった。なんか、戦友というか仲間意識があったから寂しい」
「そうだな、でもまた会えるさ。エルがここで安心して暮らせるように俺がきちんとサポートするから安心してくれ」
「うん、これからお願いします」
ノエルとアランはこれから暮らすことになる家を見上げた。
新居はこれまで暮らしていた子爵家の屋敷とは雲泥の差で、少し裕福な平民が暮らす位の家だが一人で暮らすには十分な広さの家だった。
二階の窓はおしゃれな格子が入っており、屋根はさわやかな明るい青い色。庭の雑草はきれいに刈り取られ、花壇もすでにきれいに整えられているのをみてノエルはようやく気持ちが上向いてきた。
これからは自分が家の主となる。平民エルとして新しい人生を歩むことになるのだ。
期待よりも不安の方が大きくなっていたが、アランがいてくれることになり再び明るくなった気持ちで新居の扉を開けたのだった。
「それで依頼延長の事なんだけど、契約をちゃんとして報酬も決めないといけないよね。あちらのギルドに手紙で知らせればいい?」
「そうなるな。だが、ちょっと待って欲しい。ギルドを辞めようと思っているんだ」
「ええ⁉ じゃあ……もうアランに依頼できないの⁉」
ノエルはひどくショックを受けた。
せっかくアランという信用できる人に出会えたのに残念だったが、もともと依頼人と護衛の関係。仕事が終われば関係がなくなるのはわかり切っていた事だった。
「……そっか。僕の依頼はいつまで受けてくれるの?」
アランはそれには答えずに、話を始めた。
「俺がラクロワに詳しいとギルド長が言ってだろう?」
「うん」
「俺はここの出身なんだ。それでここまで来て里心がついてしまったからこちらに戻って来ようかと思っている」
それを聞いたノエルの顔が輝いた。
「じゃあ! アランずっとラクロワにいるの⁉」
「ああ、そうしようかと考えている」
「うわあ、嬉しい!」
ノエルは満面の笑みでアランを見た。
「それで、家を借りるまで空き部屋があれば居候をさせて欲しいのだが。もちろん家賃は払うから」
「もとより僕がお願いしてたことだし、逆にありがたい」
ノエルはすべての不安が消えてしまったような明るい気持ちになった。
「アランが帰った後はどうしようって不安だったんだ……良かった」
「そういってくれてこちらも助かるよ、ありがとう」
「部屋は空いているんだし、ずっとここで暮らしてくれたらうれしいよ」
「それは願ってもないことだけど、いいのか?」
「僕、一人で生活をするという事がこんなに不安だなんて知らなかった。アランがいてくれるだけで僕の力になる」
「ありがとう。じゃあ細かいことはこれから決めるとして、まずはこれからよろしく」
「よろしくお願いします!」
二人はがっちりと握手を交わした。
アランの部屋は客室ではなく、同居人としてノエルの隣に決まった。
「隣との壁に扉があったらよかったのに。開けて寝たら夜も怖くないのになあ」
そうつぶやくノエルの言葉を拾ったアランはさわやかな笑顔を浮かべる。
「よかったら今日も一緒に寝るか?」
「さすがに悪いし。自分の家なんだから慣れるしかないよ」
正直言うと、間取りさえしっかり把握できていない新居はまだ少し怖かった。まだ自分の安心できるテリトリーになっていないのだ。そんな中一人で寝るとまた事件のことを思い出してしまいそうでめちゃくちゃ怖い。
身震いするとい無意識に自分の右腕をさする。
「もちろんエルが窮屈なのが嫌ならやめておこう」
「全然嫌じゃないよ。むしろ安心して眠れそうだけど……いい年して恥ずかしすぎる」
「年なんて関係ないさ。ここだけの話、あのギルド長は怖がりで宿泊の時は絶対二人部屋をとるんだ」
「ええ? 本当」
ノエルは少し笑ってしまった。
あのがっちりとした筋骨隆々のギルド長が怖がりだなんて。
「ああ。強面とビビりは関係ないってこと。年齢もね。そもそもあんな目に遭って怖くないはずがないんだ。恥ずかしい事じゃないよ」
「そうなんだ」
それでも、昨日のように一緒に寝たいとは言いにくかった。
ノエルは人一倍気を回してしまう。
昨日、護衛としてあれだけ精神に負担がかかる仕事を成し遂げた上に狭いベッドで一緒に寝てくれたアラン。今日は気を遣わずゆっくりと休んでほしかった。
「そうさ。実は昨日だって俺も一人になりたくなかったからエルの部屋で寝かせてもらったんだ。今日も一緒に寝てくれたら俺も助かるんだが」
「アラン……」
アランがエルのためにわざとそう言ってくれたのだと分かるだけにアランの優しさが身に沁みた。
家を出る決心をしてよかった。ノエルは心からそう思ったのだった。
オムロにも、契約の延長の話を持ちかけたが仕事が入っているとかでアランだけが残ってくれることになったのだ。オムロとはここでお別れになるが、命がけで自分を守ってくれたオムロとも別れがたかった。
「オムロさん、本当にありがとうございました。少し中で休憩されませんか?」
ノエルは声をかけた。
「うれしいお誘いですね」
「ここまでずっと一人で頑張ってくださったし、お疲れでしょう」
「エルさんは優しいですね。やっぱり僕もこのままこの国にとどまろうかなあ」
オムロがそう言って笑うと、ノエルの横に立っているアランの目がつり上がる。
「やだなあ、冗談ですよ。エルさん、僕はこれからこの国のギルドに顔を出してきます。メローランド国への荷運びとかあれば、無駄になりませんからね」
「そうですか、とっても残念ですが。この国に来るときは必ず会いに来てくださいね」
「ええ、ありがとうございます。ではエルさんの新しい人生を応援しています」
オムロは笑顔を残して去っていった。
「ああ、行っちゃった。なんか、戦友というか仲間意識があったから寂しい」
「そうだな、でもまた会えるさ。エルがここで安心して暮らせるように俺がきちんとサポートするから安心してくれ」
「うん、これからお願いします」
ノエルとアランはこれから暮らすことになる家を見上げた。
新居はこれまで暮らしていた子爵家の屋敷とは雲泥の差で、少し裕福な平民が暮らす位の家だが一人で暮らすには十分な広さの家だった。
二階の窓はおしゃれな格子が入っており、屋根はさわやかな明るい青い色。庭の雑草はきれいに刈り取られ、花壇もすでにきれいに整えられているのをみてノエルはようやく気持ちが上向いてきた。
これからは自分が家の主となる。平民エルとして新しい人生を歩むことになるのだ。
期待よりも不安の方が大きくなっていたが、アランがいてくれることになり再び明るくなった気持ちで新居の扉を開けたのだった。
「それで依頼延長の事なんだけど、契約をちゃんとして報酬も決めないといけないよね。あちらのギルドに手紙で知らせればいい?」
「そうなるな。だが、ちょっと待って欲しい。ギルドを辞めようと思っているんだ」
「ええ⁉ じゃあ……もうアランに依頼できないの⁉」
ノエルはひどくショックを受けた。
せっかくアランという信用できる人に出会えたのに残念だったが、もともと依頼人と護衛の関係。仕事が終われば関係がなくなるのはわかり切っていた事だった。
「……そっか。僕の依頼はいつまで受けてくれるの?」
アランはそれには答えずに、話を始めた。
「俺がラクロワに詳しいとギルド長が言ってだろう?」
「うん」
「俺はここの出身なんだ。それでここまで来て里心がついてしまったからこちらに戻って来ようかと思っている」
それを聞いたノエルの顔が輝いた。
「じゃあ! アランずっとラクロワにいるの⁉」
「ああ、そうしようかと考えている」
「うわあ、嬉しい!」
ノエルは満面の笑みでアランを見た。
「それで、家を借りるまで空き部屋があれば居候をさせて欲しいのだが。もちろん家賃は払うから」
「もとより僕がお願いしてたことだし、逆にありがたい」
ノエルはすべての不安が消えてしまったような明るい気持ちになった。
「アランが帰った後はどうしようって不安だったんだ……良かった」
「そういってくれてこちらも助かるよ、ありがとう」
「部屋は空いているんだし、ずっとここで暮らしてくれたらうれしいよ」
「それは願ってもないことだけど、いいのか?」
「僕、一人で生活をするという事がこんなに不安だなんて知らなかった。アランがいてくれるだけで僕の力になる」
「ありがとう。じゃあ細かいことはこれから決めるとして、まずはこれからよろしく」
「よろしくお願いします!」
二人はがっちりと握手を交わした。
アランの部屋は客室ではなく、同居人としてノエルの隣に決まった。
「隣との壁に扉があったらよかったのに。開けて寝たら夜も怖くないのになあ」
そうつぶやくノエルの言葉を拾ったアランはさわやかな笑顔を浮かべる。
「よかったら今日も一緒に寝るか?」
「さすがに悪いし。自分の家なんだから慣れるしかないよ」
正直言うと、間取りさえしっかり把握できていない新居はまだ少し怖かった。まだ自分の安心できるテリトリーになっていないのだ。そんな中一人で寝るとまた事件のことを思い出してしまいそうでめちゃくちゃ怖い。
身震いするとい無意識に自分の右腕をさする。
「もちろんエルが窮屈なのが嫌ならやめておこう」
「全然嫌じゃないよ。むしろ安心して眠れそうだけど……いい年して恥ずかしすぎる」
「年なんて関係ないさ。ここだけの話、あのギルド長は怖がりで宿泊の時は絶対二人部屋をとるんだ」
「ええ? 本当」
ノエルは少し笑ってしまった。
あのがっちりとした筋骨隆々のギルド長が怖がりだなんて。
「ああ。強面とビビりは関係ないってこと。年齢もね。そもそもあんな目に遭って怖くないはずがないんだ。恥ずかしい事じゃないよ」
「そうなんだ」
それでも、昨日のように一緒に寝たいとは言いにくかった。
ノエルは人一倍気を回してしまう。
昨日、護衛としてあれだけ精神に負担がかかる仕事を成し遂げた上に狭いベッドで一緒に寝てくれたアラン。今日は気を遣わずゆっくりと休んでほしかった。
「そうさ。実は昨日だって俺も一人になりたくなかったからエルの部屋で寝かせてもらったんだ。今日も一緒に寝てくれたら俺も助かるんだが」
「アラン……」
アランがエルのためにわざとそう言ってくれたのだと分かるだけにアランの優しさが身に沁みた。
家を出る決心をしてよかった。ノエルは心からそう思ったのだった。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
希望したのは、医療班だった。
それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。
「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。
誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。
……けれど、婚約者に裏切られていた。
軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。
そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――
“雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。
「君の料理が、兵の士気を支えていた」
「君を愛している」
まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?
さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。